片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

ソニー平井さん、試金石は「テレビ事業黒字化」

2012-04-13 17:46:40 | 社会・経済

昨日、ソニーの経営方針説明会にいってきました。
冒頭から、社長兼CEOの
平井一夫さんが、舞台中央に立って
「ソニーを変える。ソニーは変わる。
変えるのはいましかない」
と、拳を振り上げ、力を込めて語りました。
内容については、必ずしも大きなサプライズがあったわけではありません。
平井氏自身がいう通り、
ソニーの変革に「奇策はない」のです。

いま、ソニーの喫緊の課題は、
売上の6割以上を占める
エレクトロニクス事業の立て直し
です。
なかでも、最大の課題は、
11年度で
8
期連続の赤字となったテレビ事業
です。
黒字化する、するといいながら、
ずるずると8年も赤字を垂れ流しています。
確かに、テレビの
急速な価格下落に加え、リーマン・ショック、
東日本大震災、タイの大洪水
など、再建をさまたげる外的要因は、
次々と起こりました。前任のハワード・ストリンガーさんは、
これらの
外的要因がなければ、黒字化できていたと語りましたが、
おそらく、その通りでしょう。
しかし、寅さんのセリフではありませんが、
「それをいっちゃあ、おしまいよ」――ですよ。

今回の発表で、中核と位置付けられたのは、
デジタルカメラや放送機器などの
「デジタルイメージング」
家庭用ゲーム機などの「ゲーム」
スマホやパソコンなどの「モバイル」の3つです。

しかし、「デジタルイメージング」についていえば、
これは
部品が中心で、主力製品とはいえないでしょう。
「ゲーム」についていえば、スマホを使った無料のゲームや、
ソーシャル・ゲームなどが台頭するなか、
どこまで中核としての稼ぎをあげられるのか疑問です。
「モバイル」についていえば、
サムスンとアップルという、
巨大なライバル
が立ちふさがっています。
これらの企業と、どう対抗していくのか、
簡単には道筋は見えてこないでしょう。

メディカル事業は、将来的に1000億円の売上高を目指すといいますが、
成果が出せるまでには、
しばらく時間がかかります。
まだ、ソニーを支える
「柱」となるには遠いのが現状です。
経営についていえば、平井さんは、自身を中心とした
One SONY」「One Managementを掲げています。
この発言は、何を意味するか?
これまで、
船頭が多すぎたということです。

つまり、
ソニーの事業領域は多方面にわたり、
それぞれが
勝手に動いていたのが現実です。
そして、ただでさえ、
自立心の強いソニーの企業風土のなかで、
社内を一つにまとめることは、容易ではなかった。
それを、一つにまとめようというのが、平井さんの狙いです。
これも、
決してやさしい課題ではありません。

では、ソニーは、今後どうすればいいのか。
私は、平井さんに求められるのは、まずは
何にも優先して、
テレビ事業の黒字化
だと思います。
テレビ事業を
CEO直轄として、黒字化に向けて取り組みをはじめていますが、
いまのところ、ライバルの
韓国・サムスンの背中は遠くなるばかりです。
今回の発表では、黒字化に向けて、13年度までに、
固定費6割削減、
テレビの機種数を、12年度に4割削減
などをあげました。
これらを着実に実行し、
ソニーの赤字の象徴ともいえる
テレビ事業を黒字化
できれば、
平井さんは、まずは、
経営者としての手腕を、
内外に評価される
と思います。

現状、テレビ事業は、
「14年3月期の黒字化」、
つまり、今期の黒字化はムリと判断して、来季の黒字化を掲げています。
しかし、どうにか
今期中に、
黒字化のメドを立てられないものか
と、思わずにはいられません。
テレビ事業が、
平井さんの経営者としての
試金石
なのは間違いないと思います。