片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

「東京スカイツリー」あんな話、こんな話 最終回

2012-04-04 18:52:58 | インポート

鉄道会社が担う「スカイツリー」

ご存じのように、
東京スカイツリーの施主は、東武鉄道です。
私は、2006年3月、“新タワー”の施主が東武鉄道に決まったとき
正直、
「あの東武が、なぜ?」と驚きました。
地味で堅実な経営で知られる東武鉄道が、ある意味ハデな、
世界一のタワーに取り組むというニュースは、意外性があったのです。

ことの経緯は、こうです。
新タワーの発端は、在京放送事業者6社による
「在京6社新タワー推進プロジェクト」です。

地上デジタル放送の電波送信や、
「ワンセグ」のエリア拡大の観点から、
都心部の超高層ビルの影響を受けにくい、600㍍級のタワーが求められました。
複数の自治体が新タワーの誘致に名乗りを上げ、墨田区もその一つでした。


墨田区は、もともとモノづくりが盛んな下町です。
しかし、近年、
危機感を強くしていました。
商店街はシャッター街化し、
地域コミュニティが失われつつあったからです。
新タワーは、
下町復活の救世主になるのではないか、と、
墨田区は、0412月に
東武鉄道に協力を要請しました。

これを受け、
東武鉄道は、翌年2月、
新タワー事業への取り組みを表明します。
そこには、創業者の根津嘉一郎から続く
DNAがあります。
嘉一郎は、企業の利益は社会に還元すべきという、
強い社会貢献意識をもっていました。
東京・南青山の
根津美術館はその一例です。

新タワー事業は、必ずしも収益性の高い事業とはいい切れません。
しかし、考えてみれば、鉄道と同様、
電波もインフラです。
電波インフラを担うという社会的な責任を果たすと同時に、
地元や東武鉄道沿線の活性化を図る意味でも、
新タワーの果たす役割は非常に大きいのです。
そういわれると、地味な東武のハデなタワー建設も納得がいきます。

634mという、
超巨大なタワーと商業施設をつくるというのに、
地元自治会などから、説明会などの席で反対意見が出ることは、
ほとんどなかった
といいます。
東武鉄道は、
100年以上にわたって墨田区に本拠を置き、
“下町の鉄道”として、地元に親しまれてきました。
住民に信頼され、愛されてきた企業だからこそといえるでしょう。
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東京スカイツリーは、
いよいよ、5月22日に開業を迎えます。
お膝元である
墨田区が活性化するのは、間違いないでしょう。
電波を担う
社会インフラとして、さらに、集客の目玉として、
スカイツリーが担う役割、責任は大きいのです。