片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

トヨタが第3の拠点を「東北」に置く理由とは?

2012-04-16 20:18:53 | 自動車関連

トヨタといえば、愛知県ですが、1992年、北九州に拠点を構えました。
そして、
「第3の拠点」として、いま、東北に着々と進出しています。
これには、
歴史的なストーリーがあります。

トヨタの小型ハイブリッド車「アクア」が好調です。
「アクア」の生産拠点である、トヨタ子会社の
関東自動車工業の岩手工場は、フル稼働状態が続いているといいます。
同じく子会社の、
セントラル自動車の宮城工場でも、
「カローラ」の全面改良を控えており、
こちらも
当面、フル生産が続く見通しといいます。

トヨタは、7月に、関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北の
3子会社を合併し、
トヨタ自動車東日本を発足して、
小型車の企画、開発、生産を一貫して手掛ける重要な戦略会社とします。
東北を、中部、九州に次ぐ、
国内の「第3の拠点」と位置付けるのです。
中部は、工場と研究拠点、九州は高級車中心の拠点ですが、
東北は、低価格帯のコンパクト車の拠点になります。

15日の日本経済新聞には、
トヨタが、東北大学と共同で
電気自動車など次世代自動車関連の
研究開発拠点を、東北に設けるとありました。
電気バスや、自動車向け高度情報サービスなど、
先端技術の開発施設を設けるというのです。

関東自動車工業と、東北大の産学連携機関の
「未来科学技術共同研究センター」が研究開発の拠点となります。
もともと、東北には電機産業が集積しており、
次世代自動車関連の研究開発を行うにも、地の利があります。
研究成果の試作には、地元企業が参画予定で、
地元の中小企業育成にも一役買います。

トヨタが、東北での生産や研究開発に注力するのは、
東日本大震災からの復興を後押しするためだけではありません。
トヨタは、
東北には歴史的な縁があるのです。
豊田英二さんは、戦後、トヨタの礎を築いた
“中興の祖”
として知られます。
彼の盟友として、トヨタの復興期を担ったのが、齋藤尚一さんです。
齋藤さんは、東北帝国大学(現東北大学)工学部の出身です。
彼は、1935年に、初の新卒学士、
すなわち
学卒第一号としてトヨタに入社しました。
齋藤さんの存在が、トヨタと東北の縁の源泉といえるでしょう。

トヨタには、地元の名古屋大学出身者も多いですが、
東北大学出身者が少なからずいるのも、無関係ではありません。
トヨタは、
義理堅く、縁を大切にする企業です。
縁のある東北が、東日本大震災で被災したことは、
放っておけず、ここぞとばかりに
投資するキッカケになっているといえます。

東北には、
トヨタを、半分地元企業のように
受け入れる土壌
ができています。
トヨタが、
東北への投資を通じて、国内の雇用維持、
日本の
モノづくり力維持、さらに、
東北復興にも一役買おうとしていることは、
いかにも、
CSR意識の強い、トヨタらしいやり方だといえるでしょう。