鹿能リコのおしらせ

BL作家鹿能リコの新刊発売等の情報をお知らせするページです。

伴奏

2011年02月28日 23時56分44秒 | Weblog

お箏の発表会ですが、2曲追加決定で、どっちも伴奏です。

伴奏っていうのは、主旋律がほぼ完璧にわかってて、その上で入れていくものです。私はお教室の中では一番お姉さんなので(年は一番若いけど!)、難易度の高いことをやるわけですね。

ということで、追加2曲の主旋律を練習して体に叩き込み、その後、自分のパートの練習します。伴奏だけ練習してもいいんだけど、それだと勉強になんないので、あえて労の多い選択肢を取るわけです。急がば回れっていうか、こういうやり方した方が、十年単位で考えた場合、上達するもので。

それもこれも、わりとすぐに間違えずに弾けるようになるレベルの曲だからできるんだけど。難しい曲の場合、おとなしく自分のパートだけ全力投球です。

youtubeあさったら動画が出て来た。

 

野村正峰:日本のわらべ歌

 

和服の女性が弾いてる方のパートを弾く予定です。

 

とかなんとか日記を書いて瀬音って曲を練習してたら……!

 

考えるより速く手が動いた! こんなの、生まれて初めて!!!

 

考えるより先に口が動いて失言……っていうのはよくありますが。

いや、マジでビックリした! 手の動きに思考がついていけなくて「あれ? あれれ???」と思いながら弾いた。

CDと同じくらいの速弾き! ブラボー!!

 

才能なくても頑張った甲斐があったよ。この一瞬の喜びで、今までのお箏人生が報われた気がしました。

まあ、才能ある人はいつもこんな状態なのでしょうけど、私は才能ないもんで、ものすごーく時間がかかっちゃった。

しかし、きっとこの先があるんだろうなーという予感もある。もう、その「先」はうすぼんやりと見えているので、そっちに向かって練習ですよ。てへ。

 

…………小説もこれくらい明確に色々わかると楽なんですけどねぇ……。

 

さてさて、ニュースです。

県知事に松田・津市長が出馬表明 “県民党” 強くアピール 中日新聞

ただいまネットで流行ってる言葉。

「ちょっと待て、その無所属は民主かも」「ちょっと待て、その維新の会(減税)は民主かも」です。

つまり、実態は民主党の政治家なのに、無所属とか維新の会とか減税とか、表看板を変えて選挙に挑む人のことですね。別名、野良民主。

その第一号です。統一地方選には、このような野良民主がたくさん立候補するかと思いますので、選挙の際は、ぜひとも経歴をチェックした方がいいと思います。

 

団体交渉権制限の法案可決 米中西部州下院、デモの中 47NEWS

米プロビデンス市が教員約2000人に解雇予告を送付 CNN

アメリカ破綻するかも……とかつて大騒ぎしてましたが(まだ破綻してないですね、すみません)、ここに来て、財政赤字のための歪みがバシバシと。

そういえば、20世紀の大恐慌の時、株価が暴落した日から三年後に不景気はピークに達したそうです。それを考えると、リーマンショックは2008年9月のできごとですので……えーっと、2011年後半あたりからの1年間、不景気はピークに達するのではないでしょうか(歴史は繰り返す。が、全く同じには繰り返さないので、多少はずれると思うけど)。

……今年じゃん!!!

 

この辺でドロンです。

そういえば、リブレさんのHPで、「あなたしか好きになれない」の雑誌掲載時の表紙が3月8日からフラッシュ待ち受けでダウンロードできるようになるそうです。

さっき、電話で聞いたので報告です。


没った暗い小説 その12 ~115/240

2011年02月28日 16時02分52秒 | 小説

「びっくりしたよ。大学の試験が終わって家に帰ったら、当然のように叔父さん一家がいたんだ。その時にピンときた。こいつらが、家の鍵を盗んだんだ……って。その上、しれっとした顔で『一軒家におまえひとりじゃ寂しいだろうから、一緒に住んでやる事にした』……って言うんだよ。信じられる!?」
「……災難だったな」
 叔父一家のあまりのずうずうしさに、三浦も呆れ返る。
「出て行ってほしい、って言ったんだけど、全然聞かないんだ。こっちは試験もあるから、昼間は家を空けなきゃいけない。その間に、あいつらは家の中を好き放題に散らかして、おまけに金目の物を売ったりしてた」
「そりゃ、犯罪だぞ」
「僕もそう言った。だけど、困っているおまえを助けているんだって、逆に居直られて……。こっちはただでさえ消耗していたから、もう、パニックになっちゃって……。そのうちに、借金取りまでうちに来るようになった。どうやら叔父さんは、借金取りから逃げるためにうちに来たみたいだった」
 ……確かに、そんなことになれば家にも帰りたくないだろう。そう三浦が内心でつぶやいた。
「春休みに入ってからは、地獄だった。外出しても外はうるさいし、友達と遊んでいても話を合わせる気力もなくて。家に帰れば借金取りが来て、おまけに叔父さん一家が大騒ぎ。テレビは大音量でつけるし、いとこたちは泣いたり走り回ったり。極めつけは……借金取りに来られるのが嫌だったら、遺産を寄こせってしつこく迫って来た」
「…………」
「遺産と保険金と賠償金で、僕、結構お金持ちなんだ。あぁ……だから、孝生さんに買ってもらった服とか靴とか生活費も、あとでちゃんと返すね」
 気だるそうに言うと裕貴が力なく微笑んだ。こんな時にすら、裕貴は三浦を気遣う。その健気さに、三浦の胸が締めつけられる。
「気にするな。飼い犬の面倒を見るのは、飼い主の責任だ。それにたぶん、俺はおまえ以上の金持ちだ。気にするな」
 三浦の励ましの言葉に、裕貴が軽く眉を寄せる。
「そうなの? でも、やっぱり悪いよ。家事だって孝生さんの方が上手いし。本当に僕は何の役にも立ってないから」
「こっちは十年以上ひとり暮らしをしているんだぞ。家事が上手くて当然だ」
「今日は警官までここに来て、迷惑かけちゃったし……」
「あんなのは迷惑のうちに入らない」
 三浦が力強い言葉に、握ったままの裕貴の手が温かくなっていった。
「ありがとう。孝生さん。僕、孝生さんに迷惑かけっぱなしなのに、こんなに優しくしてくれて。なのに、僕は何も返せない。……ごめんなさい」
「いてくれるだけでいい」
「……」
「俺は自分でもわからなかったが、リクがいなくなって、随分寂しい思いをしていたらしい。だから、おまえがリクのように俺を慕ってくれるだけで十分なんだ」
 ……その他にも、いろんな物を返してもらってるしな、と三浦が心の中でつぶやいた。
 例えば、こうして気遣うという行為や、誰かに喜んでもらうと自分も嬉しくなるとか。
 そんなプリミティブな、人間本来の素朴なありようを再確認できた気分だった。
 こどもの頃は当たり前のように持っていた感情だったが、ひとりで孤独に暮らすうちに、すっかり忘れてしまっていた。それだけに、とても新鮮で懐かしい感覚だった。
 しかし、全てを正直に告げるのも面映く、三浦は曖昧な言い方で誤魔化すと、裕貴の手を離し肩に回した腕を外した。
 一瞬、寂しそうな目で裕貴が三浦を見上げたが、すがるような真似はしなかった。
「パスタ、すっかり冷めちゃったね。せっかく作ってくれたのに、ごめんなさい」
「さっきから、おまえは謝ってばかりだな」
 三浦が立ち上がり、冷たくなったパスタの皿を手にした。
「こいつはもう片付けよう。俺は食欲がなくなった。おまえもそうだろう?」
 しょんぼりした裕貴の頭に三浦が手を置き、ぽんぽんと動かした。
「腹が減ったらサンドイッチでも作るさ。じゃなかったら、外に早めの夕食を食いに行けばいい」
「家にいたい」
「わかった」
 三浦がパスタとサラダの皿を下げに台所へ行くと、同じように自分の皿を持って裕貴が後からついて来た。
「温かい飲み物でも飲むか。コーヒーとミルク、ティーバッグの紅茶、あとはココアがある。どれがいい」
「孝生さんと同じでいい」
「じゃあ、紅茶だな。ちょっと洋酒を垂らすと体が温まる」
 三浦は食器の片づけは裕貴に任せ、自分は紅茶を淹れることにした。
「孝生さんって、コーヒーはかなりいい豆を使ってるのに、紅茶はティーバッグなんだね」
 食器を食器洗浄機にセットしながら、裕貴が話しかけてくる。
「俺はコーヒー党なんだよ。コーヒーの豆の良し悪しはわかるが、紅茶はさっぱりだ。それに、ティーバッグといっても、うちのは旨いぞ」
 ティーパックの入った箱をかざして見せると、裕貴がのぞき込んできた。
「本当だ。知らないメーカー。おいしいの?」
「ティーバッグの中ではかなり。といっても、お歳暮でもらったんだが」
 お歳暮の贈り主は、いわゆる広域指定暴力団の幹部で地元の組長なのだが、それはさすがに言えなかった。
 銀行員時代の営業先、その社長の父親が組長だったのだ。どこでどう噂が流れたのか知らないが、三浦に財テクの才能があることを聞きつけ、資産運用――ぶっちゃけて言えば、暴力団の資金稼ぎ――を依頼してきたのだ。
 組の事務所ではなく、傘下の消費者金融の事務所で話し合いをした時に出て来たのがこの紅茶だった。
 お世辞で『旨いですね』と言ったら、組長がそれを覚えていて、毎年お歳暮として届けられるようになったのだ。
 その話は『いずれ気がむいたら』という事でお茶を濁しつつ断ったのだが、お歳暮が届く限り、組長は三浦を諦めてない、という証拠でもあった。
 お湯が沸くとケトルの中にティーバックを浸す。
 こいつには糖分も必要だな。ロシアンティーに変更するか。
「いちごのジャムとマーマレード、どっちが好きだ?」
「いちごかな」
「じゃあ、いちごのジャムにワインを入れて……っと」
 カップにジャムと赤ワインを入れ、スプーンで軽く混ぜてから紅茶を注いだ。自分の分の紅茶には、ブランデーを風味づけ程度に入れる。
 紅茶を淹れ終わると、片付けを終えていた裕貴の待つリビングへカップを持って戻る。
 裕貴の隣に座ると、あからさまにほっとした顔になった。甘えん坊の子犬が、カップを手にして紅茶を飲み、口を開く。
「孝生さん。僕、あとで警察に行く」
 思いつめた顔で裕貴が言った。きっと、裕貴にとっては一大決心だったのだろう。
「その気になったか」
「うん。孝生さんには迷惑をかけているんだし、あんまりわがまま言っちゃいけないから」
「じゃあ……四時になったら散歩に行って、帰って来たら車で警察に行くか。夕食は適当にどこかの店で食べよう。それとも、遅くなるが家に帰ってきてからにするか?」
「外食でいいよ」
 さっきは家にいたいと言った裕貴だが、『わがままを言っちゃいけない』という言葉を貫徹するつもりなのか、外食に賛成した。
 無理しなくてもいい、と言おうと思ったが、本人が外食でいいと言っているのだから、外食で済ませようと思い直した。
「それじゃあ、せめて、静かな店にしよう。高森さんにいい店を聞いておく」
「ありがとう。お願いします」
 ほんの少し改まった口調で言うと、裕貴が三浦を見つめて来た。
 撫でろ、と言っている目だな……。
 黒い瞳に誘われて手を伸ばしかけた時、時計の針が一時を回っている事に気づいた。
 そろそろ、仕事――いや遊びか――に戻らないと……。
「すまない。俺は二階にあがる。今日はもう家事はしなくていいから。あとで携帯を持ってくるから自分で警察に連絡するんだぞ」
 こっくりと裕貴がうなずくのを確認し、三浦が紅茶の入ったカップを手に仕事場へ移動する。
 裕貴はまだ不安そうだな。何が気にかかっているのだろう?
 そんな事を思いながら、三浦はパソコンの前に腰を下ろした。

   ***   ***   ***

 その後、三浦から携帯を借りて、裕貴は警察署に電話した。
 遺失物を取りに行く事を告げ、電話を切る。テーブルに携帯電話を置くと、毛布にくるまった。寒いからではない。何かに包まれて安心したかったのだ。
「まさか、あの人達が捜索願を出していたなんて……」
 裕貴が叔父夫婦を思い出し、眉を寄せた。
 裕貴は叔父よりも、叔母の方が怖かった。裕貴の叔母は、女のエゴを非常に強く持った人間で、それをてらいなくむき出しにするタイプの人間だったから。
 最初に家に上がり込んだ日のことだ。叔母の胸元を真珠のネックレスが飾っていた。
 大粒の真珠のネックレスは、母の嫁入り道具のひとつでとても大切にしていた品だ。
 妹の彩乃が年頃になったら譲ると約束していた物で、その日が来るのを妹はとても楽しみにしていた。
 そのネックレスを勝手に持ち出されたのだ。当然、裕貴は気色ばんだ。
「そのネックレスは、母の物です。返してください」
「どうして? あんたが持っていてもどうしようもないじゃない。だから、あたしが使ってやるっていうのよ」
 へ理屈もいい加減にしろという気分になった。
 母と妹の想いを、大切な思い出を汚す叔母に、思わず裕貴が腕を伸ばした。殴ろうとしたのではない。ネックレスを外そうとしたのだ。
 すると、叔母は大げさに悲鳴をあげた。家中、いや近所にまで響くような叫び声に、叔父と三人の従姉弟たちもやってくる。
「どうした!?」
「裕貴が私をぶったのよ」
「なんだと!!」
 叔父が裕貴を睨みつけ、襟元を掴んだ。叔母は殴られたかのように頬に手をあててうつむいた。
「ちっ、違う――。僕は、ただネックレスを取り返そうと……」
 裕貴が弁解を言い終えないうちに、叔父の拳が裕貴の腹に入った。思いがけない一撃によろめいた所で、小学校三年と一年の従兄弟が裕貴の腕と太腿にむしゃぶりつく。
「お母さんにひどい事をするな!」
「謝れよ!」
 小さい従兄弟たちは、本気で母が殴られたと信じている。裕貴を敵だと認識して、険しい瞳を向けて来た。
 小学校五年生の従妹が、叔母の元へ気遣わしげな顔で近づき、裕貴を睨みつけている。
 叔父の暴力よりも、十歳以上年下の従姉弟たちの反応の方が、裕貴にはやりきれなかった。
 どんなに嘘つきで最低な女でも、子供たちにとっては大切な母親なのだ。
「あ……」
 こどもの純粋な敵意に晒されて、裕貴から抵抗の意思が奪われた。立ちつくす裕貴に、叔父が何度も拳をふるった。
 その時、藍原家の中の力関係が決まった。叔父夫婦の敵意と醜悪さに耐えながら、自分の部屋と大学を往復する日々がはじまったのだ。
「嫌な事を思い出しちゃった……」
「――何やってるんだ?」
「孝生さん! お仕事、終わったの!?」
 大好きな保護者に向かって裕貴が笑みを向ける。どんな嫌な思い出が裕貴を襲おうとも、三浦が姿を現わすと、すぐに笑顔になれる。
「今日はイマイチだったから、早めに手じまいにした。……どうだ。少し早いが散歩に行くか?」
「うん」
 被っていた毛布を畳んで裕貴が立ち上がった。コートを着て外に出ると、遅れて三浦がやって来た。そのまま並んで言葉少なに海岸へ向かう。
 風に吹かれながら、裕貴は海を見つめた。水平線が遠くに見える。
 ふたりで静かに海を見ていると、心が穏やかになり、満たされていく気がした。
「そろそろ帰ろう。風が強くなってきた」
 優しく肩に手を置かれて裕貴がうなずいた。
 孝生さんが傍にいたら、僕は全然寒いなんて思わないんだけどなぁ……。
 白いマフラーに顔を埋めながら、そんな事を考える。そうして家に帰ると、三浦の運転するハイエースに乗って警察へ向った。
 事前に連絡をしていたからか、簡単に裕貴のディバッグは返してもらえた。
 ナイロン製のカジュアルなデザインのバッグを受け取り、念のために中身を確認する。
 財布、携帯、ハンカチ、ティッシュ。ipodに――家の鍵。
「無くなっている物はないか?」
「貴重品も含めて全部あるよ。現金もカードも、そのまま」
「いい人が拾ってくれたんだな」
「うん。すごいね。――すごい」
 金品は盗まれていても仕方ないと諦めていたが、それでも無事に帰って来ると不思議な喜びが込み上げてくる。
 孝生さんの住む街の人。どこの誰かは知らないけれど、ありがとう。
 心の中で礼を述べると、裕貴は三浦の顔を見上げた。
 孝生さんと出会ってから、いろんな事がいい方向に向かっている気がする。
 小さな喜びが、とても大きな物に感じる。そう感じられることが、嬉しい。
「ありがとう」
「何がだ?」
 裕貴がほほ笑むと、三浦が不可解、という風に顔をしかめた。
 ふたり並んで小さな待合室を通り抜け、警察署の玄関を出て、駐車場へと向かった。
 いや、正確には向かおうとした。
「見つけた!」
 その声に、裕貴の足が止まった。受け取ったばかりのディバッグを落としそうになる。
「あんた、今までどこをほっつき歩いていたのよ!」
 紫色のフェイクファーのコートを着た叔母が、まっすぐに裕貴に向って歩いてきた。
「知り合いか?」
 異変を察したのか、裕貴を庇うように三浦がさりげなく背後に回った。
「叔母さん……」
 つぶやきにも似た裕貴の返答に、三浦の顔が険しくなる。しかし、その三浦以上に険しい顔をしていたのは、裕貴の叔母の方だった。
「どこをほっつき歩いてたのかって聞いてんのよ!!」
 そう言うや否や、叔母が裕貴に平手打ちをくらわせようと、手を振り上げた。
 首をすくめ、目を閉じて、衝撃に裕貴が身構える。
「待ちな。あんた――山口さんだっけ? どうして裕貴を殴ろうとするんだ?」
 ドスの利いた声で三浦が叔母に問いかける。
「あんた誰? とっとと腕を離しなさいよ!!」
「俺は裕貴の友人だ。友人が突然殴られそうになったら、普通は助けるもんだ」
「……離さないつもり? 大声を出すわよ?」
「ご自由に」
 叔母と三浦のやり取りを聞きながら、裕貴は『まずい』と思った。
 早く手を離さないとこの叔母がどんな言いがかりをつけるか――。
 そう思うだけで、心臓を素手でつかまれるような不安が裕貴を襲う。
 不幸な事に、裕貴の予想は当たった。
「誰か! この男が私に乱暴を!!」
 金切り声をあげて、叔母が助けを求める。すぐに入口近くで見張りをしていた警官が、三人の元へ駆けつけてくる。
「どうしたんですか?」
「この男が、急に私の腕を掴んで暴力をふるおうとするんです。早く、この男を逮捕して!」


拡散推奨動画

2011年02月28日 02時15分29秒 | Weblog

1/3【討論!】TPP問題と日本の行方[桜H23/2/26]

 

2/3【討論!】TPP問題と日本の行方[桜H23/2/26]

 

3/3【討論!】TPP問題と日本の行方[桜H23/2/26]

 

どうも。「おまえは何と戦っているんだ?」と親兄弟からよく言われる鹿能です。こんにちはー。

正直、TPPに何十時間も費やして学習するより、その時間分、小説書いて、同人誌の1冊でも作った方が、作家としては「正解」だし「勤勉」だと結構本気で思ってます。んが!

私のゴーストが「今はこっちをやっておけ」と囁くの……。

数少ない私の小説読者のみなさまには、心からごめんなさい。それでも見捨てないでください……。

(いや、TPPの勉強はしつつ、お箏と編み物をやめた方がいいのか???)

 

さて、ニコ動観てたら、社長が「この動画拡散してね☆」ってゆってたので、脳が生まれつき致命的に小さな私は、素直に拡散します。

拡散しやすいように、URLもほいっと。

<ニコニコ動画>

動画1 http://www.nicovideo.jp/watch/1298623598

動画2 http://www.nicovideo.jp/watch/1298624307

動画3 http://www.nicovideo.jp/watch/1298625042

 

<youtube>

動画1 http://www.youtube.com/watch?v=gE_Bqxr0RsA

動画2 http://www.youtube.com/watch?v=8P23rTqvGgk

動画3 http://www.youtube.com/watch?v=TU1nEPkcIMA

 

お勧めは動画3かなぁ。よかったらそれだけでも見てください。

うっひゃーってなります。


書くことないです

2011年02月27日 19時18分17秒 | Weblog

あえて他人に報告したいような出来事が、まるでない日常の鹿能です。こんにちは。

しいていえば、夕食に作ったトン汁が非常においしくできました、くらいかしら???

あ。ママンへのマフラーは編み終えました。縮絨(しゅくじゅう)という作業をしています。要は柔軟剤とお湯で(ここ重要!)洗って、バスタオルに挟んで平置き乾燥し、その後、アイロンかけてできあがり、です(現在平置き乾燥中)。

手芸店で売ってるような毛糸を使えばこの作業は必要ない時もあるんですが、工業用の糸を使うと絶対に縮絨作業が必要になります。面倒臭いんですが、その面倒臭さを物にしないイキオイで、お安いんですよーーーー!!! あ、あと、いいアイロン買ったってのもある。乾かすだけなら超優秀ですよ、ティファールのアイロン。

本当は、乾燥機で乾かすんだけど、うちの洗濯機、乾燥機能ないの。なにせ、13年前に買ったのだから(まだ壊れない……)。

 

とゆうことで、現在、友人用のツインニットを編もうと思ったら、編み図がないでござる状態なので、自分用にノルディックセーター編んでます。これは、両親からもらったバザーで出てた毛糸なので、原価ゼロ円という、おそろしく安上がりな一品でございます。

他人にはカシミヤだけど、自分用には極安ウールでございます……。いやだってさ、喜んでもらいたいじゃん!! といいつつ、たまに贅沢すると、すぐ母に持っていかれます……(実は、自分用に編んだ自信作! 素敵なお帽子!! をあげるのは2度目です)。

 

そーいえば、今回のNZ地震で民主党の対応が早かったのですが、これ、たぶん、自民党――特に小泉元首相の――取り組みが実をなしたのでは? と思う。

理由。スマトラ地震の時、親戚の官僚(地震とか噴火などの災害系専門)が現地行って調査して、小泉元首相に直接報告したってゆってたから。

当時はまだそんなに偉くなかったので、それでも直接首相に報告……ってことは、小泉元首相がそれだけ海外へ速やかに救助隊を派遣できる体制の構築を重要視してたのだと思います。ま、妄想だけどね! でも、小泉元首相はクレバーなので、それくらいは考えてたと思うナリ。

 

そーいえばその2で、気になるネットの噂。原油はダウで150~200ドルまであがる。だって。

んで、イラク最大級の製油施設が爆破されたので、少なくとも週明けまたダウがあがると思う。確か、リビアも原油輸出が、完全ストップしたし。イタリアは国内で使う化石燃料の3分の1をリビアから輸入していた上に、移民が押し寄せているので(中には刑務所から釈放された人も混ざっている可能性が高い)、治安も低下するし、欧州も今後騒がしくなると思います。

まあ、リビアに武器売ってたのは欧州だけどね……。とはいえ、お偉いさんのやることで、一般国民が被害にあうのは、基本的によろしくないと思います。

 

安保理 リビア制裁決議を採択 NHKニュース

いやぁ、ロシアと中国が反対しないと、何でも決まるのが早いですね!

そーいえば、リビアは北朝鮮の主要貿易国のひとつです。この件が、北朝鮮――極東アジア情勢にも関わってくるんじゃないかなぁ。

 

リビアといえば、大使館はやっぱり25日に撤収完了。この間紹介したツイッターのまとめページによれば、まだ邦人はリビアにいるんだけどね……。

で、この件を朝生のアナウンサーが番組で紹介してもいいですか、とツイッターで確認取ってたけど、放送したのかしら? 朝生って、レベルが低すぎてみる気がしないんだけどねぇ……。興奮して大声で喋り、他人の意見をさえぎる場面が多すぎて、まったくもって知的でないから。

 

三重で鶏26万羽の殺処分開始 南伊勢町農場の鳥インフル  47NEWS

未だ猛威をふるう鳥インフルです。そういえば、おととい肉をネットで買おうとしたら、いつも買ってる宮崎のお店で地鶏の取扱なくなってた……。ついでに、豚肉を買う店でも(ここの肉は岩手産)「鳥インフルの影響で、鶏肉の発送が遅れています」と表示が出ていた。このまま行くと、品薄→値上がりコンポじゃないかと予想します。確か、九州は鶏卵が品薄で値上がりしてた……とネットで読んだ記憶が。

個人的に、もう、食料品を中心にスタグフレーションの段階に入っていると感じています。

毛糸も店によっては1.5倍に値上がりした商品がありますし……。コンビニ弁当も、1年前に比べて同じ値段でも内容がしょぼいか、値上がりしている商品が増えていると思うのよね。

 

そんなかんじでー。ドロン!!


没った暗い小説 その11 ~102/240

2011年02月27日 16時51分53秒 | 小説



 犬になりたい、だって――!? 人間でいたくないだって?
 裕貴の切実な告白を聞いた三浦は、めまいがしそうになった。
 冗談じゃない。こいつは、本気でそう思ってる。食えと言えばドックフードも食べるし、しろと言えば男にフェラチオだってする。本当に、今すぐにでも人でいる事を捨てかねない。
 そう思った途端三浦は凍りつき、そして次の瞬間、そこまで言うのなら信じてもいいのかもしれない、と思った。
 こいつなら、万が一俺の性癖がわかっても、変わらぬ態度で接するのではないか、と。
 一瞬くらい、どん引きされるかもしれないが。その時はその時だ。そう覚悟を決めた。
 そうして、実際に裕貴に触れて、三浦は改めて自分がどれほど温もりや触れ合いに飢えていたかを知った。
 性愛的な意味合い以外でも、人間には温もりが必要なのだ。その対象は、必ずしも人間である必要はない。
 温かくて、呼吸をして、見つめ合い、触れ合うこと。
 それまで、三浦のそういった部分を満たしていたのが、愛犬のリクだったのだ。
 もちろん、犬よりは人間の方が健全なのだが。
 リクの毛より、柔らかいな……。
 裕貴の癖のない髪を撫でながら、内心でひとりごちる。形の良い後頭部。すんなり伸びたうなじ。細い肩、襟元からのぞく白い肌を美しいと感じた。
「孝生さんって、お父さんみたい」
 目を閉じながら、裕貴が安心しきった声で言った。
「俺はおまえみたいにでかいガキのいる年じゃないぞ」
「ごめんね。でも、同じくらい安心する」
 いくらなんでも父親はないだろう。父親は。年も十歳しか変わらないんだから。そう心の中で三浦がひとりごちる。
「……百歩譲って保護者だな。飼い主だから、似たようなものか」
 その時、三浦の心に愛しい、という感情が生まれた。愛犬に感じていたものに似ていたが、どこか違う愛しさだった。
 優しい沈黙がリビングを満たす。その柔らかな静寂を破るように、チャイムの音が響いた。
「……宅急便かな?」
 三浦が裕貴の頭から手を離し、腰を浮かせた。
 裕貴は床に手をつき、犬のように潤んだ瞳で、忠実なまなざしを三浦に向ける。
 すぐに戻って来てね。また、僕を撫でてね。
 そんな声が聞こえるようだった。甘えん坊だが、よく躾けられた犬のような態度を示す裕貴に、三浦が微笑を向けた。
「すぐに戻る」
「わん!」
 すっかり犬になりきっているのか、裕貴が犬語で返事をした。苦笑しながら三浦がインターフォンに向かう。
「はい?」
『三浦さんのお宅ですか? 警察の者です。少々、お話をおうかがいしたいのですが』
 ――警察? なんだっていきなり? 近所に空き巣でも入ったのか?
「すぐに行きます」
 そう答えて三浦が玄関に向かった。リビングと違い、廊下には暖房が入っておらず寒気が三浦を襲う。
 鍵を開け、ひんやりしたノブを握り、扉を開けた。そこには、県警の制服を着た警察官がふたり立っていた。
「三浦さんですね?」
「そうです」
「少々おうかがいしたいのですが、こちらに藍原裕貴という青年がおりませんか?」
「藍原裕貴……」
 耳慣れない名前を三浦が復唱する。しかし、声に出してみると、意外に口になじむ。
 これはたぶん、リクの本名だ。直感がそう囁く。
 さて。どうした物か。どう対応するのが正しいのだろうか?
 とりあえず、状況がわからないので三浦は空っとぼける事にした。
「その名前は初耳ですね」
「もしかしたら、偽名を名乗っているのかもしれません。こちらを見ていただけますか?」
 警官が一枚の写真を三浦に差し出す。
 それは、典型的な幸せそうな家族の写真で、両親らしき中年の男女と、そのこどもらしき兄妹が写っていた。
 男が裕貴で、裕貴によく似た文句なしの美少女は、おそらく彩乃という名の妹なのであろう。
 今より少し髪が短く、カメラに向かって笑っている。その笑顔は、三浦が違和感を抱いたほど、今の裕貴の印象と違っていた。
 屈託のない笑顔なのだが、いたって普通というか、今の裕貴のまとう独特の――空虚な――雰囲気がなかった。
 警察官は三浦の微妙な表情の変化に気づいたのか、強い口調で確認してくる。
「ご存じですか? 彼には三日前に捜索願が出されていましてね。同日、うちの管轄の派出所に藍原裕貴名義のキャッシュカード入りの財布や携帯電話の入ったバッグが遺失物として届けられました」
「それで?」
「事件性がないかも含め、特異家出人として捜索していたんですよ」
「事件性……というと、誘拐ですか?」
 慎重に、言葉を選びながら三浦が問いかけた。
「普通、財布や携帯電話の入ったカバンを紛失したら、遺失物届を出すでしょう? なのに三日経っても音沙汰がない。その上捜索願です。誘拐された可能性もあると判断しました」
「それはそうですね」
 答えながら、三浦はどうしたものかと考える。
 ここに裕貴を呼べば、話は簡単に終わる。三浦は裕貴を拉致したわけでも監禁しているわけでもない。
 偶然意気投合したから、家に泊めた。そう説明すればいいだけの事だ。
 違法性がない事が説明できれば、リク――じゃなかった、裕貴に実家に連絡させて、このままこの家に置く事もできる。
 さきほどの心の交わる経験が、三浦から裕貴を手放す気をすっかり失わせていた。
 もちろん、永久に手元に置きたいわけではないが、先ほどの優しい時間をあと一週間、いや、三日、せめて一日でも、持ちたいと心の底から願っていた。
「それで、おまわりさんは、どうしてうちに来たんですか?」
「昨日、駅前の派出所から連絡があったんですよ。藍原裕貴によく似た人物が、あなたらしき人と行動をともにしている、とね」
「なるほど。それでここにいらしたんですね」
 そこまでネタが割れていれば、空っとぼける事も不可能だろう。その時、当の本人が、玄関にやって来た。
「孝生さん。お客様?」
 ドアから顔を出した裕貴を認めて、警察官の眼光が鋭くなった。
「藍原裕貴くんだね?」
 警察官に本名で問いかけられて、一瞬で裕貴の顔が蒼白になった。
「そうです。けど……。何か?」
「君の捜索願が出ているんだ。良かったら、このまま署の方へご同行願えるかな?」
 裕貴が困り果てたという目で三浦を見上げた。そうして、怯えた目をしてドアの陰から出て来ると、三浦の背中に隠れるようにして警察官と向き合った。
「僕の捜索願を、誰が出したんですか? 僕に家族はいません。心当たりがないのですが」
 家族がいない? さっき見た写真――あれは裕貴の家族だよな?
「もしかして、お前以外、全員亡くなったのか?」
 三浦が早口で尋ねると、裕貴が申し訳なさそうな顔でうなずいた。
「そう。四ヶ月前に温泉旅館で火事に遭って……。僕は、どうしても外せないバイトがあって、旅行には行かなくて……ひとり残された」
「……」
 四ヶ月前といえば、まだ家族を失った衝撃は生々しく残っているだろう。
 可哀想にと思った瞬間、裕貴を抱き締めたいという衝動に襲われる。
 小声で話すふたりを、警察官はいぶかしげな眼で見ていたが、ややあって口を開いた。
「捜索願を出したのは、山口充明さんですよ。あなたの叔父さんの」
「あの人が?」
「今、山口さんと同居しているんでしょう? いつまでも帰って来ないから、心配されたようです」
「同居? あの人は、葬式の時、黙って僕の家の鍵を盗んで、不法侵入したあげく、勝手に住み着いているだけです。出て行けと言っても出て行かないし、鍵を返せと言っても返さない。自分の借金を払えないからって、僕に両親の遺産を全てよこせと言うような人です。僕は、彼らから逃げて来たんだ。戻れと言われても、絶対に戻りません!」
 恐るべき激しさで、裕貴が警察官に食ってかかった。大人しそうな美青年が激昂する姿には、ただならぬ迫力があった。
 三浦も警察官も、あっけにとられながら裕貴を見つめる。
「法的にも、僕は成人していて後見人は必要ありません。他に家族がいるわけでもないし、僕は自分のいたい場所にいる権利があるはずだ。そうですよね?」
「それはそうだね」
 警察官がうなずいた。
「僕は、あの家には帰りません。絶対に」
 そう断言すると、裕貴はくるりとふたりに背を向けて、玄関を後にした。
「やれやれ……。参ったなぁ……。彼には、遺失物の引き取りもお願いしたかったのに」
「そちらは、彼が落ち着いたら取りに行かせます」
「そうしていただけますか?」
 ほっとした顔で、警察官が遺失物を保管している警察署と、引き取りに必要な物を説明する。
「裕貴の叔父には、私の住所を連絡先として教えていただけますか? 彼はしばらく俺が預かりますので」
「それがいいでしょうね。確かに、彼が言う通り、成人は無理に連れ戻す事はできないんですよ」
「大変ですね。警察という仕事も」
 ひやかしではなく、半ば本気で三浦が警官を労わった。
「そう言っていただけるとありがたいですよ。それでは、これで失礼します」
 一礼して警察官が帰って行った。その場でため息をつき、三浦がリビングに戻る。
 リビングでは、毛布にくるまって裕貴がソファに座っていた。テーブルの上では、ボンゴレやスープがすっかり冷めてしまっていた。
 そういえば、食事の途中だったな……。
 しかし、三浦に食欲はなかった。それは裕貴も同じ事だろう。
 裕貴は三浦を見上げると、何か言いたそうに口を開いた。しかし、形の良い唇から声は出ない。水槽の中の金魚のように、ただ口をパクつかせるだけだ。
 三浦にした所で、聞いたばかりの裕貴の過去の重さに、どんな言葉をかければいいかわからない。
「おまえ、藍原裕貴っていうんだな」
 とりあえず、名前を糸口とする事にした。寒そうに震える裕貴の隣に腰をおろすと、細い肩に腕を回した。
 裕貴を抱き寄せると素直に体重を預けて来た。体にかかる重みが、なぜか悲しい。
「ごめんね、名前。教えなくて」
「いいさ。いい名前だな、おまえのイメージにピッタリだよ。リクよりやっぱり、こっちの方がしっくりくる」
「そう?」
 裕貴がぎこちない笑顔を浮かべた。今までに見た事のない、無理をしている笑顔だった。
「警察には、しばらくうちでおまえを預かると言った。おまえは成人だし、法的に強引に連れ帰る事はできないんだそうだ。だから、おまえは好きなだけここにいていいんだ」
「……ありがとう。孝生さん。本当にありがとう」
 ここにいてもいいとわかり、裕貴が安堵の表情を浮かべながら三浦の手を握った。
 極度に緊張したのか、裕貴の手は痛々しいほど冷たかった。三浦は少しでも裕貴を温めたいと思い、その手を握り返す。
「……」
 裕貴が驚いたという顔をして、弱々しく三浦の手を握り返す。
 なんだか、リクを看取った時を思い出すな――。
 健気な生き物は、どんなに力を失っても、主の愛に応えようとした。
 全力で尻尾をふるリクの姿と、目の前の裕貴の姿が、重なった。
「警察は、おまえのカバンを拾得物係まで取りに来てほしいそうだ。あとで、落ち着いたら一緒に取りに行こう。携帯も財布もなければ、おまえも不便だろう?」
「いらない。そんな物、ない方がいい」
「どうして?」
「僕は、人間としての自分を忘れたい。ここで、孝生さんを愛するだけの生き物として、暮らしていきたい」
「……」
 頑ななまでに、自分の荷物の引き取りを裕貴が拒む。これには、三浦もお手上げだった。
 俺を愛する……っていうのも、逃避の一種なんだろうな。
 裕貴が逃げているのは何なのか。家族を亡くした悲しみか。それを踏みにじるようなまねをした叔父夫婦にか。それとも、つらい人生をひとりで歩む事か。
 甘ったれるな、と言う事は簡単だった。だが、それを言うには三浦も寂しすぎたし、裕貴はあまりにも傷つきすぎているように思えた。
 こんなにしょぼくれてるんだ。いっそう追い詰めて、本気で自殺でもされたら叶わない。
「拾得物の保存期間は半年ある。それまでに気が変わったら、取りに行けばいい」
「うん。……ありがとう」
「おまえが家出して、無茶な賭けをした理由っていうのは、叔父さんが原因か?」
「他にも……色々あったけど、家出したのは、叔父さんが原因」
「鍵を盗んで不法侵入。その上、おまえの家に居座った……か。誰だって嫌になるさ」
 テレビもないリビングで、こいつは文句ひとつ言わなかったもんなぁ。家族のいなくなった家は孤独だが、静寂でもあったのだろう。
「叔父さんは……母の年の離れた弟で、奥さんとこどもが三人いるんだ。千葉にいる祖母が、遅くに出来た長男だっていうので、無茶苦茶甘やかして育てて……。うちの両親とは、元々あまり仲が良くなかった」
 噛み締めるように、裕貴が三浦に事情を語り出す。三浦は裕貴の邪魔をしないよう、静かに耳を傾ける事にした。
「祖父が死んだ時、遺産はほとんど祖母と叔父で分けて、母親には、祖父の愛用していた万年筆と腕時計が遺された。でも、うちはお金に困ってなかったし、母はそれでいいって笑っていた」
「出来たお母さんだったんだな」
「うん。いい母親だった……と思う。もちろん、父親も、妹もね。喧嘩もしたけど、ちゃんと仲直りした。家族って、そういう物だよね?」
「そうだな」
 ふと、三浦は自分の両親の事を考えた。自分の息子が同性愛者だと知って、地方公務員だった父親と小学校の教員だった母親は『外聞が悪い』と、都内の大学に通うことをきっかけに、地元に帰って来る事を拒絶した。
 銀行を自主退職せざるを得なかった三浦にとって、実家は――故郷は――もうないものとして、帰る場所ではなかったけれど。
 それをここで言うのも、大人げないな。そう内心でひとりごちる。
 仲がいい家族の方が、失った時につらいだろうしな。
 話す事で落ち着いてきたのか、裕貴は、もう震えてはいなかった。
「祖父の遺産を元手に、叔父さん夫婦は飲食店をはじめたんだ。最初はものすごく調子がいいって言ってたんだけど、本当は赤字だったみたい。銀行から、かなりの額を借金していて、首が回らなくなってから、うちの両親に借金を頼みに来たんだ。父は、遺産相続の件もあったし、普通のサラリーマンだったから何百万か用立てして、それでこれ以降はお金は貸せないって言い渡したみたい。この辺はあまり詳しく教えてもらってないから、よくわからないんだけど」
「親はこどもに余計な心配をかけたくないもんさ。それが親心だろう?」
「うん。で、四ヶ月前に両親と妹が……亡くなって……。父方の親戚なんかもお葬式のお手伝いをしてくれたわけ。でも、父方の親戚には、叔父の事をほとんど話してなかったから、その時家の鍵を渡しちゃったらしいんだよね。それから三ヶ月は音沙汰なかったから、僕もバタバタして鍵を失くしたんだってくらいにしか思ってなかったんだけど……。遺産相続と保険金の支払いが終わった頃になって、叔父さん一家がやってきた」
 裕貴が唇を噛み締めた。その姿は、怒りで青白い炎をまとっているように見えた。

 


没った暗い小説 その10 ~89/240

2011年02月26日 14時33分53秒 | 小説

 孝生さんとの散歩は、すごく楽しかった。誰かと喋ってこんなに楽しいなんて、本当に久しぶりだった。
 それ以上に、黙っている時、ひとりで先を歩いて振り返ると孝生さんが軽く手をあげて応えてくれた時が、何よりも嬉しかった。いつも見守られているような気がして。
「孝生さんも、もしかして俺の事、ちょっとは好きになってくれたのかなぁ」
 好きどころか、性行為まで三浦は考えはじめているのだが、裕貴はさっぱり気づいていない。
 男同士でセックスできるという知識があっても、それが自分に関わる可能性には思い至っていない。
 裕貴から恋愛対象外の烙印を押されている三浦は、といえば、今は台所で昼食の準備をしていた。裕貴は庭掃除にひと段落ついたので、いったん切り上げて家の中に入った。
「お腹すいちゃった。ご飯は何?」
 洗面所で手を洗い台所に入ると、カフェエプロン姿の三浦が鍋にパスタを投入していた。
「初めてだな。おまえが、腹減ったって言うのは」
「本当だ。お腹がすいた、なんて思うのは、久しぶりだ……」
 裕貴は家族を失ってから食欲を覚えなくなっていた。
 孝生さんとなかよくなったから……かな?
 そう考えただけで裕貴の胸が温かくなり、三浦が好きだという想いが湧き上がる。
 裕貴は黙って三浦が料理をする姿を見ていた。
 ニンニクと鷹の爪を刻んでオリーブオイルを流したフライパンに入れる。そして昨晩から砂抜きをしていたアサリを投入し、白ワインをふりかける。
「孝生さんって、グルメっていうか、食べ物にこだわるよねぇ……」
「どうせ食べるなら、旨い物を食べたいんだ。幸い、作る時間はたっぷりある。手間暇かけて何が悪い」
「そうだね。会社勤めでもないみたいだし。――孝生さんは無職なの?」
 口の開きはじめたアサリを見ながら質問する。三浦の職業は、裕貴にとって謎だった。
 毎日二階にこもってるから、その時に何かしているんだろうけど……。
「違う」
「もしかして、ウェブ関係の仕事?」
「ノーコメント。詮索されるのは好きじゃない。おまえもそうだろう?」
「そうだね。お互い、余計な事は聞かない方がいいか」
 興味はあるが、強引に聞き出すような真似はしない。裕貴が素直に引き下がると、三浦が『いい子だ』と褒めてくれたので、そっちの方が嬉しかった。
「孝生さん、大好き」
 いい子と言われて喜ぶなんて、自分でも幼児返りしているのはわかっている。
 しかし、頼りになる大人に遠慮なく甘えられる今の状態は、あまりにも居心地が良かった。
 飼い犬っていいなぁと思いながらてらいなく愛を告げると、三浦がうんざりという顔をした。
「おまえ……。発言に好きとか愛とか、多くないか?」
「そう? 今は好きって言えるだけで嬉しいんだ。ちょっと前まで何を見ても何も感じなかったから」
 裕貴の言葉を聞き、三浦が軽く眉を寄せる。
「僕は孝生さんが大好き。初めて会った時から好きになるって決めたんだ」
 あの時の感情が甦り、思いつめた瞳で三浦を見つめた。裕貴の瞳に気圧されたように、三浦が視線を逸らす。
「好きになると決めたって……。そんな事、できるわけない」
「できる。孝生さんは命の恩人だからね。恩人を好きになるのは、とても簡単な事だよ」
「そう言われれば、そうかもな。俺は自殺しようと思った事などないからわからないが」
「あれは自殺じゃない。賭けだったんだよ」
「賭け……? 自分の命を賭けたって事か? なんだってまた、そんな事を?」
「……秘密」
「わかったよ」
 三浦が肩をすくめて茹で上がったパスタをフライパンに入れた。手早くかきまぜればボンゴレの出来上がりだ。パスタの盛った皿を裕貴が持ち上げてリビングに運んだ。
 そして、テーブルにボンゴレとコンソメスープ、そして緑黄色野菜に半熟ゆで卵を飾ったサラダが置かれ、食事となった。
 L字型ソファの別々の辺に座る。裕貴が両手を合わせて『いただきます』と言うと『どうぞ』と声が返ってきた。
 そんな当たり前の事がとても嬉しくて、パスタにも手をつけず、裕貴が三浦を見つめた。
「なんでこっちを見るんだ?」
「孝生さんを見てると、胸が温かくなるんだ。生きてて良かったな……って思う」
「大袈裟だな。俺なんかに、そんな価値はないぞ」
「わかってないなぁ、孝生さん。孝生さんの価値はね、僕が決めるの。僕が大好きだから、孝生さんにはそれだけの価値があるんだよ」
「随分偉そうに言うな。……本当にそうだといいんだが」
 三浦の顔が歪んだ。照れるというより、自分を責めているような表情だった。
「そんな事より、さっさと食え。パスタがまずくなる」
 ニンニクの効いたボンゴレパスタは、麺もいわゆるアルデンテで、その辺の店より、ずっとおいしい、と裕貴が思った。
 孝生さんが作ったから……って点を割り引いても、やっぱりなんか違う。
「このパスタ、おいしいね。もちもちしてる」
「生だからな。一般的なパスタは乾麺だろう? これは乾燥させてないパスタ。賞味期限が短いのが難点だが、味はこっちの方が上だ」
「へぇ。そんなのがあるんだ」
「昨日買い物に行った時、ハムチーズの側にあった。覚えてないのか?」
「そうだっけ。僕、孝生さんばっかり見てたから、売り場の事はよく覚えてないんだ」
 その瞬間、三浦がパスタを喉につまらせた。肩を揺らしながら、ゴホゴホとせき込む。
「大丈夫? 水飲む?」
 裕貴の問いかけに、三浦がうなずいた。急いで台所に行きグラスとペットボトルを持って戻った。ボトルの中身をグラスに注いで、三浦に手渡す。
「はい、お水」
「すまない」
 苦しげな声で礼を言うと、三浦がいっきに水を飲み干した。一息ついた三浦の背中を裕貴の手が上下する。
「触るな!」
 まただ。また、拒絶された。どうして孝生さんは僕に触られるのを嫌うんだろう。
 愛しているなら、愛する者の希望に沿う行動を取るのが『正解』なのだと思う。今までの裕貴の常識はそう告げていた。
 でも――。
 裕貴の脳裏に、さきほどの三浦の歪んだ顔が甦る。あの顔を思い出したら、手を離すのが正しい事とは思えなかった。
 気がついたら、体が動いていた。三浦の体に腕を回して、脊中から抱き締める。
「孝生さん。僕を拒まないで。お願い」
「だから……っ。俺に触ると、おまえがいずれ後悔すると言ってるんだ」
「どうしてそんな事言うの? 触るとうつるような病気を持ってる……とか?」
「そんなんじゃない」
「だったらいいじゃない。背中をさするくらい」
「今は、抱きついてるだろう?」
 苛立った声が返ってくる。このまま抱きついていたら『出て行け』と本気で言いかねないほど、三浦は怒りを露わにしていた。
 怖い。孝生さんに、嫌われたくない。でも――。孝生さんは何か隠してる。そして、それは嫌な経験を思い出すからかもしれない。
 心に傷を負った人間は、恐るべき嗅覚で同類を見つけ出す。裕貴が三浦に感じたのもそれだった。
 でも、僕の悲しみは孝生さんに会う事で消えてしまった。少なくとも、孝生さんがいれば幸せなんだ。
 孝生さんにも、同じように癒されてほしい。僕の存在で。
 ううん。僕でダメなら他の誰でもいい。孝生さんの苦しみを取り去ってほしい。
 けれど、この場にいるのは裕貴だけだった。
 体中の気力をふり絞り、三浦を癒す事だけを考えて語りかけた。
「僕は孝生さんを好きだよ。絶対、嫌いにならない。教えて。孝生さんは、リクの事もそんな風に拒絶したの?」
「しない。するわけない」
「だったら、僕もリクと同じようにしてよ。僕はリクと同じなんだよ。あなたが好きって事しか考えられない」
「……」
「僕、本当に犬だったら良かった……。そうしたら、孝生さんに触れたのに。傍にいられるのに……。それなら僕は、犬になりたい。人間でいたくない」
 心の底から犬になりたい、という言葉は、裕貴の真実であった。これまでは苦しみから逃げて犬になりたかったのだが、今は違う。犬だったら三浦を癒せたという思いからだ。
 その想いが、言葉に重みを与え、三浦は裕貴の言葉を神妙な顔で聞いていた。
 裕貴が口を閉ざし、リビングに沈黙が広がる。三浦は迷っているようだった。『いや……』『しかし』といったつぶやきを、時折もらす。
「……わかったから、離してくれ」
「やだ」
「おまえに首を絞められて、息が苦しいんだよ」
「ごっ、ごめんなさい!!」
 慌てて裕貴が手の力を緩めた。三浦は大きく息を吐くと、胸元にある裕貴の腕に触れた。
「ほら、触ったぞ」
 優しい声と三浦の方から触れたことで、裕貴の体から力が抜けた。
「おまえは俺に、どうしてほしいんだ」
 裕貴の腕を外し、三浦が向きなおった。鋭い瞳が裕貴を射抜く。
 どうしてこんな事をわざわざ聞くんだろう?
「普通に、むせたら脊中をさすったりとか、そういう事ができればいいよ」
「手を握れとか、そういう訳じゃないんだな?」
「それは恋人同士とか、親子がやる事でしょ? ……もしかして、孝生さん、僕にお手とかおかわりとか教えたいの?」
 シリアスな場面であっても、裕貴のとぼけた発言は健在だった。いや、本人は至って真面目なだけなのだ。それだけに性質が悪い、と言えたが。
「まさか」
「だよね。それくらいできるもん」
「待て、だけは出来ないようだがな。触るなと言うのに、抱きつきやがって」
「それは……。孝生さんがつらそうだったから、なんとかしたいと思って……」
「つらい? 俺が?」
 信じられない、という顔で三浦がおうむ返した。
 そうか。孝生さん、自分がどんな顔しているか、気づいてなかったんだ……。
「触るなって言うたびね、つらい顔してた。僕は、孝生さんと出会えて幸せになれたから、孝生さんにも幸せになってほしい」
 外された手を再び伸ばし、三浦の手に重ねた。
 孝生さんが、少しでもつらい顔をしなくて済みますように。そう心から願いながら、三浦に愛情を込めたまなざしを向ける。
「わかったよ。これからは触っても怒らない。ただし、過剰なスキンシップはやめろよ」
 そう言って、ぽんぽんと三浦がソファのシートを叩いた。
 隣に座れって事?
 裕貴が真夏のひまわりのように晴れやかな笑顔を浮かべた。そうして、いそいそと三浦の横に座ると、三浦が目を細めて懐かしそうな声で言った。
「リクも、こうやって何かと俺の傍にいたがったな。ソファに座れば足元にうずくまったし、仮眠を取ると体の上に乗って来た」
「こんなかんじ?」
 裕貴がソファから降りて床の上に座った。ソファに半ば寄りかかりながら、三浦の太腿に頭を預ける。さすがに体の上に乗るのはハードルが高いので、裕貴なりに少しアレンジして足元にうずくまってみたのだ。
「そうだな。こんなかんじだった。構ってほしいというリクのアピールだから、俺はいつもこうやって背中を撫でてやった」
 大きな手が裕貴の髪に触れた。温かな手に頭を撫でられ、吐息のように言葉がこぼれる。
「気持ち良い……」
「リクもそうだったのかもな。目をつぶって、うっとりした顔をした」
 その時の事を思い出しているのか、三浦が遠い目をして手を動かした。裕貴もリクを見習って目を閉じる。
 すごく、安心する。大好きな人に優しく撫でられるのは、なんて心地良いんだろう。
 こどもの頃、父や母に抱かれた感覚にとてもよく似ていた。
「孝生さんって、お父さんみたい」
「俺はおまえみたいにでかいガキのいる年じゃないぞ」
「ごめんね。でも、同じくらい安心する」
「……百歩譲って保護者だな。飼い主だから、似たようなものか」
 この瞬間、裕貴は三浦と心がつながったような気がした。
 裕貴は三浦に癒され、三浦もまた、裕貴を癒す事で癒されている。とても不思議な時間だった。静かで、そして満ち足りた時間。
 ――このままずっと、このままいられればいいのに――
 心の底から、裕貴が願った。夢のような幸福は、夢のように儚い。砂糖菓子を水に浸すように、あっという間に崩れ落ちてしまう。
 そして、幸福な時間を破壊するチャイムが鳴った。

 


痒くなって来た……

2011年02月26日 01時04分15秒 | Weblog

三か月くらい前に見た時、「???」だった動画が、今見ると半分くらい理解できてた! と、浮かれている鹿能です。こんにちはー。

 

ちなみに、動画の内容は「経済」です。気をよくしたので、ちょっと本気に経済学勉強してみる~。といっても、経済学とマクロ経済とミクロ経済の入門書を読むだけですが(まだ読んでなかった。今は地政学の本を読んでます。でも、そろそろちゃんと次のプロット用の資料を読まないとな……。買ってはいるんですけどね)。

まあ、ざっくりわかればいいのさー。もっと知りたい、と思ったら、その時もうちょっと難しい勉強すればいいだけだし。ただ単に、新聞やテレビや国会に条件反射で鋭い突っ込みを入れられるようになれればいいもので。

脳みそ小さいので、ちょっとずつ進むのですよ。無理すると続かないのよねぇ……。

 

えーっと、小説ですが、今日アップした分は、非常に痒い。……こういうパートは、あんまりオープンにしたくないけど、伏線も引いてるし、飛ばせない。あうあう、うごうご言いながら校正してアップです。

そうそう。今回から日記のタイトルに謎の数字が出ていますが、ただ単に、今78ページまで行ってるよ! という、私が翌日校正スタートさせる時に便利だから入れただけで、まったく意味はございません。

ようやく全体の3分の1終了ですよ……。で、エロなシーンはすっとばすので、3分の1以上終わってる計算です(私の記憶では、エロは1か所……だったかな? しかし、キスシーンがあるので、そこは……大幅改稿ですかね!!)。

 

と、痒々に我慢してたら、ネットで注文していた災害用のご飯キタ―――!!

今月、久々に霊能者さんに会った時、「備蓄、どうでしょう?」と聞いたのですよ(ちなみに、去年も聞いた。特に買わなくてもいいと言われた)。したらば!

今ある分に追加で

・水があれば食べられるもの

・米を少々

・干した野菜

と回答が。……買い物に行かないでもいいようにか? と思いつつ、ちょっと気になる結果だったので、アルファ米とか缶入りの味噌汁とか入ったセットを3日分揃えました(あと、簡易トイレとスコップ)。

 

まあなんですかね。小麦が18%値上げですしね。

電気代その他も4月から値上がりするし。

電気・ガス代4月に一斉値上げ 原油高騰で7カ月ぶり msn産経

急激な円高は(現在ドル円81円台ですよ)、あまりよろしくはないのですが、石油に関しては安く調達できていいなぁ、と。通貨安競争していた国は体感的にもっとあがってると思います。そういえば前回の石油高騰の際、民主党はガソリン値下げ隊なるものを作って暫定税率を廃止しようとしてましたが、政権与党になった現在、そんな動きはございませんね。

……二枚舌。

 

「リビアは無政府状態」、外国人が続々脱出 AFP通信

無政府状態というのは、かなりやばいですね。エジプトをはじめ、デモをやってる国でこういう表現はまだないです。

で、そんな時に日本政府の対応は、といえば。


@Maky3333さんからのリビア・トリポリ情報転載 http://togetter.com/li/104914

無能に等しいようです。エジプトの時より、数段ダメダメくさい。

こちらの方、とにかく無事に脱出できたようで良かったです。……って書いてから読んだら、大使館員、まだ邦人がリビアに残ってるのに全員チェニジア脱出ですって!?

嘘だと思いたいけど……。わからんので態度はとりあえず保留(しかし、チェックはする)。これ、もし本当だった場合、マスコミが報道しなかったら○○ってかんじですけど!?

 

マスコミといえば、NZの件で被害に遭われた方へのテレビ局のインタビューが色々酷いとネットの噂。

不愉快になるので、テレビ(特にニュースという名のワイドショー)は見ないのですけど。なのにうっかりニコ動で見て「!!!」ってなったんですけど。

被害に遭われた方全員が一日も早く元気を取り戻されることを、そして亡くなった方のご冥福を心からお祈りいたします。

 


没った暗い小説 その9 ~78/240

2011年02月25日 16時25分14秒 | 小説

「リクは、ここに越して来る前の前に住んでいたアパートの、隣の家の飼い犬だったんだ。それを、引っ越しついでに庭に忍びこんで連れて来た」
「盗んだって事? それって犯罪だよ?」
「そんな事はわかってる。ただ、隣の家の家族ってのが、なんていうか……まともじゃなかったんだよ。好きな芸能人が飼ってる犬がほしいってだけでペットショップから買って来て、最初の二~三ヶ月は得意そうに連れ回していたものの、でかくなったら持て余して、ロクに散歩にも連れて行かない。真夏に水や餌もやり忘れる。当然、台風や雪の日でも、リクは外に出しっぱなしだった」
 当時の事を思い出したのか、三浦の顔が険しくなった。
「ひもじいのか通りかかった俺に悲しそうな顔でリクが鳴くわけだ。見かねて餌をやっていたら、俺に文句を言うだけじゃなく、恥をかいたと言ってはリクに殴る蹴るの虐待だ」
「……ひどい」
 その光景を想像するだけで、裕貴の胸が痛んだ。
 そんな人がいるなんて信じられな……くはない、か。
 この世には、他人の痛みなどまったく顧みない人間が確かに存在することを、裕貴は知っていた。
「だろう? だから、かっさらったんだ。リクは大型犬だが、痩せてガリガリだったから、なんとか連れ出せた。最初は、元の家が恋しいのか、遠吠えするし……。あの時ばかりは後悔したな。もしかしたら、俺は間違った事をしたんじゃないか……と」
 裕貴には、三浦が間違った事をしたのはわかっていた。しかし、それを言うのははばかられた。遠い目をする三浦の話に黙って耳を傾ける。
「あんまり痩せてたから、いっぱい食わせて太らせると決めた。散歩だって毎日行った。もし、元の飼い主が取り戻しに来たら、俺の元にいた方が、リクは幸せだって言ってやるつもりで。……本当の飼い主から引き離しておいて、何を言ってるんだか」
 自嘲するように三浦がうそぶく。三浦の中には、未だ迷いがあるのだろうか。
「おいしい物を食べて、散歩にも連れてってもらえて。リクはきっと喜んでたよ。リビングに首輪と一緒にリクの写真が飾ってあるでしょ。写真の中のリクは、本当に幸せそうに見えたよ」
「……」
「だから、孝生さんはいい事をしたんだと思う。みんなが犯罪だって孝生さんを責めても、僕は、孝生さんはいい事をしたと思うよ」
 まるで、自分がリクになったような気分で裕貴は孝生に訴えていた。
 悪い事だとわかってて、孝生さんはリクを助けたんだ。ちゃんと反省もしてるんだし、それでいいじゃないか。
 そういう人だから、孝生さんは僕を助けてくれた。今だって――迷惑だろうに――すごく良くしてくれてるし。
「孝生さんは、いい事をしたんだよ」
 念を押すように、裕貴が同じ言葉を繰り返した。裕貴の言葉で罪悪感が少しは薄らいだか、三浦の表情が緩んだ。
「……おまえって、本当に犬みたいだなぁ」
「犬みたいじゃないよ。犬なんだよ」
「そうだったな」
「犬には人間の決めたルールは関係ない。僕にとって正しければ、それでいい」
「随分と思いきった事を言うな。そうだな。……リクが本当にそう思っていたら……いいな」
 その時の三浦の顔を思い出しながら、裕貴はリビングで犬の臭いの染みついた毛布に顔を埋める。
 もう寝なきゃ……。そうつぶやいて目を閉じると、ふいに自分の呼吸音が気になりだした。
 まずい。
 そう思った時には遅かった。ふわっと目に涙が溢れて、水滴が頬を伝う。
「……っ」
 唇から嗚咽が漏れる。昼間、あれほど泣いたというのに、おかまいなしに涙が流れる。
「父さん、母さん。……彩乃……っ」
 今は亡き家族に呼びかける。返事は決して返って来ないのに。
 そんな事はわかっている。けれど、そうせずにはいられないのだ。
「……っ。…………」
 その時、階段から物音が聞こえた気がした。
「孝生さん?」
 目を擦りながら置き上がり、暗闇に向かって呼びかける。
「孝生さん、いるの?」
 もし、孝生さんがいるのなら、僕の事を――どうして家出したのかを――話してしまいたい。
 話してもどうしようもないんだけど。もしかしたら、孝生さんが重いって思って、どん引きしちゃうかもしれない。でも……。
 それでも無性に話したかった。そうする事で、三浦との距離を、もっと縮めたいと願っていた。
 しかし、暗闇からは何の答えもないまま、一秒、二秒と時が過ぎていく。
「空耳か……」
 ひとりごちながらソファに横たわり、再びクッションに頭を預ける。泣いたことでまぶたが腫れ、じんじんと痺れていた。

   ***   ***   ***

「参ったな……」
 音をたてずにドアを閉め、寝室に入ると三浦が息を吐いた。
 夜中に喉が渇き、ビールでも飲もうかと寝室を出た。裕貴を起こしてはいけないと、足音をたてないよう階段を下りた。その三浦の足が止まった。
 三浦の耳に、聞く者の胸が痛くなるような泣き声が聞こえたからだ。
「父さん、母さん。……彩乃……っ」
 父と母と。彩乃というのは、姉か妹か。なんとなく裕貴の家族のような気がした。
 妻か娘――という選択肢もなくはないが、リクは絶対独身……いや、学生だろうな。
 頭の片隅でそんな事を考えながら、三浦は回れ右をする。その時、かすかに階段がきしむ音をたてた。
 しまった!
「孝生さん?」
 すぐに、リビングから声がした。
 どうする? 何食わぬ顔で声をかけるか? いや。ダメだ。何を言えばいいのかわからない。俺は、こんな時に誰かにかける言葉を持っていない。
 考えた末に、三浦は息を殺し気配を消した。
「孝生さん、いるの? ……空耳か」
 かぼそい声を聞き、しばらくそのままでいた後、リビングが静まり返ったのを確認し、三浦は階段を上がりはじめた。足音を忍ばせて寝室に戻り、寝床にもぐり込む。
「あの声……。随分わけありっぽいようだったな」
 家出をしたのに、家族を恋しがるのもおかしなものだが……。リクにはリクの事情があるんだろう。
「明日の朝、強引に聞くか……。いや、そんな事であいつが口を割るはずないな」
 なにせ、未だに名前も年齢も教えないのだ。このアイディアは没にして、三浦は掛け布団を肩までかぶる。
「いいさ。リクと一緒だ。いずれあいつが俺に心を開くのを待つだけだな」
 昼間、泣き顔を見て以来、三浦は裕貴の事を本当に飼い犬――リク――のように思うようになっていた。
「泣かずに、寝ていてくれるといいんだが」
 そう願いながら、三浦は目を閉じた。

 翌朝、三浦がリビングに行くと、いつも通りの顔をした裕貴に挨拶をされた。まるでクリスマスの朝のこどものように、頬を紅潮させて裕貴が報告する。
「見て見て、この服、似あう?」
 ジャージ素材の明るい水色の上着に白のカットソー。細身で光沢のある布地のグレーのパンツ。昨日、百貨店で買った服を裕貴は嬉しそうな顔で着ていた。
 試着もしないで買ったので(あの店員は、見るだけで客のサイズがわかる、という神業を持っていた)、新しい服を着る裕貴を見るのは初めてだ。
「……いいんじゃないか。その水色、おまえに似合ってるよ」
「本当?」
「あぁ。顔が明るく見える」
 裕貴の顔が、一瞬曇った。しかし、次の瞬間、屈託のない笑顔を浮かべる。
「この服、すっごく着心地がいいよ。動きやすいし」
「動きやすいついでに、このまま散歩に行くか」
「散歩!?」
「リクが元気だった頃は、いつもそうしてたんだ。夏場は朝の六時に、冬は七時になったら散歩に行く。それから朝食を食べて、片付けをして掃除をする」
 ほんの数か月前までの日課を思い出す。
「一階に下りると、リクがリードを咥えて待っていて。早く散歩に行きたかったんだろうな。……今から行くか?」
「行く!」
「だったら、寒くない格好をしろよ。朝の海岸はかなり冷えるぞ」
「海岸……行くんだ」
「嫌か?」
「イヤじゃないよ。だって、孝生さんと初めて会った記念の場所だし」
 記念って……。その物言いは、つきあいはじめのカップルの、女の物だぞ?
 内心でつっこみつつ、三浦が階段を下りて洗面所で身支度を整えた。
 散歩用のカジュアルなコートと手袋、マフラーをして玄関に行くと、既に靴をはき終えた裕貴が扉の前で待っていた。
「早く早く!」
 外に出るのも待ちきれない、という様子で散歩をねだる。こんな所もリクにそっくりだった。そうして、海岸へ向う道を白い息を吐きながら、ふたりで並んで歩く。
 東の空ではゆるやかに太陽が昇っていた。強い潮風が吹き、雲も少ない。今日は一日、晴れそうな空模様だ。
 一緒に歩きながら、たあいもない事を喋った。裕貴は朝からよく笑い。よく喋る。昨日まではうるさい、としか思えなかった裕貴のふるまいが、今日は痛々しく見えた。
「おい。俺の前では無理しなくていいぞ」
「無理なんかしてないよ」
 前を歩いていた裕貴が振り返ると、きょとんとした顔で三浦を見上げる。
「だから。無理に明るく笑ったり喋ったりしなくていいんだぞ」
「笑うのも喋るのも、無理してないよ。孝生さんがいるとそうしたくなるし、今はふたりで散歩してるから、楽しくてしょうがない」
「それならいい」
「うん!」
 元気に返事をすると、裕貴が顔をあげて道沿いに建つ民家の白梅の木を見上げる。
「もう散っちゃってる。残念。いい匂いだから、梅の花って好きなのに。ねぇ、桜が咲いたらお花見に行こう。お弁当とレジャーシートを持って」
「花見か。悪くないが、二ヶ月は先だぞ? おまえ、それまでうちにいる気なのか?」
「いるよ。僕は孝生さんの側にいる。孝生さんが死ぬまでいる」
 それはそれで悪くない。そう思ったものの、口をついて出たのは全く逆の言葉だった。
「勘弁してくれ。それじゃあ、俺は恋人も作れやしない」
「あ。そうか」
 裕貴の足が止まった。つられて三浦も立ち止まる。
「……もし、僕が本当に邪魔になったら言って。その時は、すぐに出て行く」
「今すぐじゃないのか」
「今はフリーでしょ? えっと……フリーなんだよね?」
 断定した後に、まずいと思ったのか裕貴がおずおずと尋ねてくる。
「五年前からずっとひとり身だ」
「もったいないなぁ。孝生さん、背も高いし優しいし、かっこいいのに。世の中の女の人は、見る目ないよね」
 俺が恋人にするのは、女じゃない。さすがに真実は告げられず、三浦はどう言ったものかとしばし考えた。
「俺と合う人間はなかなかいないって事だ」
「そうなの? 僕は孝生さんと一緒にいると楽しいし、落ち着くし、幸せだけどなぁ」
 聞きようによっては、熱烈な愛の告白と受け取れる言葉に、三浦が息を飲む。
「孝生さんは、とっても素敵な飼い主だよね。犬の僕には最高だよ」
 そういう意味だろうとは思っていたが……。一瞬、本気で焦った自分が馬鹿みたいだ。
 落胆か安堵か。自分でもわからぬ感情に、三浦が脱力した時、海が見えた。
「海だ!!」
 小学生――いや、かつてのリクそのままに――裕貴が海に向かって走り出す。走って追いつく気力もなく、三浦はゆっくりと後を追った。
「はしゃいで転ぶなよ!」
「大丈夫!!」
 幼稚園児か小学校低学年のこどもにするような注意をする。
「アレを成人男性だと思うからいけないんだな。犬じゃない、ガキだと思えばいいんだ」
 自嘲めいた口ぶりで三浦がひとりごちる。
「ガキは言葉の意味もわからずに好き好き言いやがるからな」
 だからこそ、向けられる好意は純粋で、心地良いのだが。
「そう考えれば、いちいちそれに振り回される事もないだろう」
 同性が恋愛対象とはいえ、裕貴は三浦のタイプから大きく外れている。それでもやはり、てらいない愛の言葉に、心は揺れる。
 あいつとずっと暮らしたければ――、同性愛者だとばれない方がいい。いちいち動揺していたら、いつかきっと、ばれてしまう。
「いっそ、リクを恋人にできたらいいんだろうが……」
 それは、非現実的な考えだな。言動からしてあいつはノンケだろうし、命令すればセックスもさせるだろうが、それじゃあ俺が惨め過ぎる。
「第一、    あいつ相手に俺が勃つか? ……無理だな」
 自分のことを求めていない人間相手に、強引にセックスする趣味は三浦にはない。その気になれるはずがない。
 だが、もしも――。もしも、リクが求めてきたら、俺はどうするんだろうか。
「…………」
 裕貴を抱く自分を想像して、三浦は眉を寄せた。
 だが、それありえない。あいつが俺をそういう意味で欲しがる事は、は絶対にない。ありえない可能性を妄想するほど、非生産的な事もないな。
 揺れない心構えをしなければ、と三浦は思った。自分からは決して認めようとはしなかったが、三浦も寂しかったのだ。他人を拒絶して生きる事が。
 寄せては返す波の音を聞きながら、三浦は裕貴と少しでも長い時間を過ごせるように、と祈るように思っていた。


帽子

2011年02月25日 00時29分10秒 | Weblog

突然ですが、自分用に帽子を編んだの。

オユーナっていう欧州のブランドのデザインをまねっこして、配色を好きな色に変えて(2色使います)、カシミヤ100%の中細糸を使ってね。

 

できあがったその日に、母が来て、「その帽子いいわね」ってことになって、あげちゃいました……。

 

しょーがないので、自分用の帽子はまた後で編むことにします。同じ物を2回編むのは好きではないので、どうしようかなぁ……。いっそこれの表紙の帽子を糸替えて編むかな(編み図は、あむゆーずというハマナカの会員制手芸サイトに出ています)。

ちなみに、母の用件は「幅10センチのマフラーを編んでケロ」でした。案外、この幅のマフラーは売ってないらしい。とゆうことで、手持ちのシルクカシミヤの毛糸でマフラーを編んであげることに。……我ながら、母につぎ込んでます。そして、マフラーはもう半分くらい編んでしまった。

 

あ。お箏も地道に練習してます。腱鞘炎対策で1時間弱くらいですけど。

今やってるのは、「間違わずには弾けるけど、音楽じゃありませーん」な場所の部分練習です。ゆっくりめなところはもう大丈夫なんだけど、速い部分がまだまだでして。16小節くらいを、エンドレスで繰り返す日々です。毎日、地味な発見があるので楽しい。うふふ。

 

さて、誰が楽しみにしているのか、さっぱりわからないが楽しいのでやってるニュースです!

民主党 混乱印象づける一幕も NHK

……どんなチラシ(ビラ)だったのか、気になりますよね? ってことで、はい、コチラ。提供は朝日新聞です。たまにはいい仕事しますね。

 

で。マスコミといえばやってくれました。

NZ地震、日本人記者2人拘束か 外出禁止令の中、病院へ 47NEWS

これ、素直に逮捕って書けばいいのに~。

ニュージーランド地震で病院に侵入しようとしたとして日本人ジャーナリストら逮捕 Gigazaine

この記事から現地新聞の速報をえいっと!

11.00am To recap
- Air NZ continues its low cost air fares to and from Christchurch
- many people are choosing to leave the city
- body bags are being brought onto the CTV building site
- Teams have begun assessing the state of local houses and the welfare of occupants
- several members of the media, especially from Japan, were arrested last night for trying to break in and interview patients.

 

わかりやすいよう、赤くしてみた。……なんで外国行ってまで、日本の恥を晒すんだろう?

なんていうか、マスコミのやってることって、日本人の一般常識から外れていると思う。で、そのずれた価値判断のマスコミが流す情報を金科玉条のようにしている人が結構多い現状を、本気で憂いたりします(まあ、日本の新聞社っていうけど、日本人とは限らないんだけどねー)。

 

あと、リビア関係でまとめをみつけた。

リビア情勢、簡単にまとめ(やる夫ニュース) http://yaruonews.net/archives/4131388.html

@amnkLibya さんによるリビア情報  http://togetter.com/li/104873

 

実は、まだ読んでいない(それぞれ半分ずつかなー)。量が多いもので。@amnkLibya さんによるリビア情報の方が、詳しいですね。まあなんつーか、カダフィ大佐もアレですが、自由化を求める人たちも相当アレっぽいなーというのが、現在の感想です。

 

政局はもう疲れたよ、ママン……です。あと、中国と北朝鮮でもデモが起こってるらすい。北朝鮮の食糧&燃料不足はかなり深刻な模様です。去年あたり、私は戦争になるかも……と大騒ぎしてましたが、このままいくと内戦→半島統一→アメリカの統治下って流れですかね。韓国も経済的にかなりヤヴァイ状況ですが、日本は民主党のアホのような政策と予算案のせいで、半島を助ける余裕はないだろうなー。

個人的には、移民さえ日本に来なければ、統一はイイコトだと思います。ものすごい経済的な混乱があって、今後50年くらい、半島は極貧にあえぐことになると思うけど。悪意からではなく、いつかはそうした方がいいことなので、「今」やってしまった方が(少しでも早い方が)、傷は結果的に浅いんじゃないのかな、というわりと合理的な判断からです。

そんなかんじでー。


没った暗い小説 その8

2011年02月24日 17時14分41秒 | 小説

「俺が悪かった。もう、出て行けとは言わない」
「本当?」
「ああ」
「僕の事、捨てないでね。もう、ひとりぼっちは嫌だ」
 暖かなオレンジ色の事を着ているというのに、裕貴はひどく寒そうに――寂しそうに――見えた。思わず、手を伸ばして抱き締めたくなる。
 しかし、過去の経験が――同性愛者だと会社の人間にばれた時の汚物を扱うような反応が――それを邪魔させた。
 こっちにそういう意図はなくても、いつか本当の事をリクが知ったら、やっぱり気色悪いと思うだろう。
 あの時の、周囲の手のひらを返すような変化を思い出し、三浦が心の中でつぶやく。
 もちろん、あからさまに触れるのを嫌がる人間ばかりではなかったが、仲間だと思っていた人間から、さりげなく拒絶されるのは、かなり堪えた。
 おまえの事は、本気で友人としか思っていない。俺は誰かれ構わず襲うような人間でもない。
 何度そう言おうと思ったか知れなかった。けれど、三浦は周囲の誤解を正し、コミュニケーションをとるより、逃げ出す事を選んだ。
 いや、元々、三十歳になったら銀行を辞めて、トレーダーになる予定だったんだ。とりたてて才能や特技もない自分が、どうやったら独立して金を稼げるかを考え、トレーダーに的を絞り、取引に必要な知識を得るために銀行に入ったのだ。
 証券会社ではなく銀行にしたのは、ただ単に会社訪問をした際に、証券より銀行の方が向いている、と感じただけの事だった。
 三浦は差し伸べかけた手を引っ込めると、替わりに大きく息を吐いた。
「泣きやんだら、昼飯を食いに行くか。その後で食材の買い出しだ」
 裕貴の泣き顔を見た事で、三浦の物言いも柔らかくなっていた。
 犬でいたい、と思うほどの何か――おそらく心が傷つくような出来事が――があったんだ。少しくらい優しくしてやっても罰は当たらない。
 今までの態度を改める気恥しさを誤魔化すため、そんな風に自分に言い訳をした。
「食事?」
「食いたい物はないのか? ハンバーグとかカレーとか」
「それじゃあ小学生だよ。これでも成人してるんだから、もっと普通の物で大丈夫」
「おまえ、成人してたのか」
「ひどいなぁ。何歳だと思ってたの?」
「家出するのは高校生と相場が決まってる。それくらいの年だと思っていた」
 高校生と思われていたとわかって裕貴が吹き出した。肩を震わせながら、くぐもった笑い声をもらす。
「じゃあ、二十歳なのか?」
「それは秘密。先に言っておくけど、名前はリクだよ」
「……相変わらず、名前も年も、自分のことは一切教えないつもりか」
「ごめん。そういうのも全部、忘れたい」
 忘れてどうする? どうやったって、過去からは――現実からも――逃げる事は出来ないぞ? そう言おうとしてやめた。
 世捨て人同然の生活をする人間が、何を言っても説得力がない。
「まあいい。オリーブオイルは平気か?」
「え? うん」
「確か、この近くに旨いと評判のスペイン料理屋があったはずだ。そこに行こう」
「スペイン料理かぁ。おいしそうだね」
「高森さんお勧めの店だ。味は期待できると思う」
「……高森さんって、昨日遊びに来たお爺ちゃんだよね。僕、あの人好きだな」
 屈託ない顔で裕貴が笑う。泣き顔が笑顔に変わって、三浦はそっと安堵の息を吐いた。
「リクもそうだったな。俺以外では、あの人にしか懐かなかった」
「そうなんだ。じゃあ、僕と前のリクは似てるんだね」
「おまえの事は、これから本気でリクだと思うぞ? それでいいんだな?」
「そうしてってずっと言ってるよ」
「大人になると、頭が固くなるんだよ。そう簡単に変化に対応できないんだ。特に、犬になりたいなんて言う人間が現れたりしたらな」
 軽口を叩きながら三浦がエンジンをかけ、車を発進させる。
「頭が固いって……。孝生さん、そんな年じゃないでしょ?」
「もう三十だよ。おまえに比べれば十分年寄だ」
 ため息混じりの三浦の言葉に、裕貴が目を丸くした。
「三十……。もうちょっと上だと思ってた」
「失礼な」
「さっき、僕も孝生さんに年下に見られたしね。おあいこってことで」
 笑いながら裕貴がシートベルトを締めた。それを合図に、ハイエースは軽やかに街を走り出した。

   ***   ***   ***

 駅ビルで大泣きしてから、はっきりと孝生さんの態度が変わった。
 なんていうか、すごく、優しい。
「どうしてかな……?」
 駅ビルで追い返されそうになった晩のこと。
 三浦はすでに二階へ行った。真っ暗になったリビングで、ソファの上に横たわりながら裕貴がつぶやく。
「おいしいスペイン料理を食べさせてもらったし、その後、駅ビルとは別の百貨店に行って着替えも買ってもらっちゃったし……」
 百貨店のテナントショップで、三浦は明らかに上得意の扱いを受けていた。シンプルだが、高品質で流行をさりげなく取り入れた服を揃えた店だった。
「いいか。そこにいろ。動くなよ」
 怖い顔で言われておとなしく従ったものの、裕貴は事態の変化についていけずにいた。
「服を買ってくれるつもりなの? でも、僕、そんなのいらない。コートだけで十分だよ」
「黙れ。俺は、自分の飼い犬が着たきりススメなんていう状態は我慢できないんだ。犬だと言うなら、黙って主人の言う事を聞け」
「はい……」
 三浦の迫力に気圧されて、素直にうなずく。そうして、マネキンの前に飾られた値札を見て、息を飲んだ。
 シャツが一枚、二万円って……。
 先ほどとは違う意味で裕貴が青ざめる。三浦は、といえば中年の男性店員を相手に、シャツやズボン、そしてセーターやカーディガンなどを次々と持って来させている。
「こいつに似合いそうなのを普段着で一週間分、適当に見繕ってほしい」
「一週間分、でございますね」
 三浦の言葉にうなずくと、店員が裕貴の胸元に次々とシャツを押し当てる。
「孝生さん……」
「情けない顔をするな。男だろう?」
「そうだけど……」
 これは予想外の展開だった。裕貴は店員と三浦のやりとりを、ただ茫然と見守った。
「こちらのカーディガンですが、こちらとこちらのシャツに合わせられます」
「それでいい。あんたのセンスは信用しているから、いちいち聞かなくてもいい。全部任せる」
「かしこまりました」
 店員が嬉しげに答えたかと思うと、あっという間にショーケースの上に服が山盛りで積まれていった。
「これ全部、買うつもり?」
「あぁ。これくらいないと不便だろう?」
「まあ……そうだけど……」
 一文無しで三浦の元に飛び込んだ事を、裕貴は深く後悔した。
 海岸に置いてきたディバッグ。あの中に財布も家の鍵も、全部入れたままだったっけ。せめて、キャッシュカードがあれば、自分で支払いができたのに。
 裕貴の個人名義の口座には、億単位の金が入っている。もちろん、ほとんどが定期だが、それでも普通預金の口座には、一千万近い残高がある。
 ほんの半年前までは、二十万も入ってなかった。
 それは、父と母と妹の、命の値段だった。生命保険と賠償金、それに両親が今まで貯めていた資産を合わせた金額だ。
 家は二十三区内の住宅地の一軒家。父方の祖父母は九州に、母方の祖母が千葉でひとり暮らしをしている。
 祖母の事は好きだったが、今は理由があって祖母の元に厄介になる事はかなわなかった。
 裕貴は逃げて来たのだ。家族の思い出の詰まった家から。もうひとつ、裕貴の気を滅入らせる事情があったのだが、それについては考えたくなかった。
 嫌な事を思い出しそうになり、裕貴が首を左右に振った。そうして、財布からカードを出して支払いをする三浦を見つめる。
「カードが……黒い……」
 裕貴のおぼつかない知識が、あれは一部の富裕層しか持てないものだ、と告げていた。
「孝生さんって、何者なんだ?」
 今までにないくらい、強く疑問が生じた。しかし、それも三浦の顔を見たら、すべて吹き飛んでしまった。
 この人が、どういう人でもいい。優しい飼い主。それで十分だ。
 元々、一文なしであろうとも、自分を助けてくれた人を愛すると――自分より大切にしようと――決めて、孝生さんの家に居座ったんだから。
 三浦の買った裕貴の着替えは、ショップの大きな紙袋で四つになった。
「さて、次は靴だな。散歩用に歩きやすい靴にしよう。服に合わせて、靴もシンプルなデザインの方がいいな」
「でも、そこまでしてもらうのは……」
「おまえ、自分の靴を見てみろよ」
 言われて、裕貴が足元に視線を向ける。
 海につかったせいで、シミがついてうっすらと塩が吹き形の歪んだ哀れな革靴が見えた。
「はっきり言って、みっともない」
 三浦の暴言に、返す言葉もなくうなずいた。
 この調子で三浦は裕貴の靴を三足買い、ようやく車に戻った。ハイエースにいったん荷物を置きに戻り、今度は食糧品のフロアへ向う。
 テナントの高級スーパーで三日分の食材を買った。
「すごい荷物になっちゃったね」
 いよいよ帰る段になり、裕貴が後部座席を振り返る。
「必要な物しか買っていない。犬だったら、細かい事は気にするな」
「うん……」
 言われてみればそうなんだけど、でも、本当にいいのかなぁ……。
 浮かない顔の裕貴を見て三浦がフォローするように口を開いた。
「それに、俺はリクにだってこれくらいの事はしていたぞ」
「前のリクにも?」
「病気して医者から療養食を進められるまで、リクには毎日新鮮な鶏肉や牛肉を食わせていた」
 たぶん、孝生さんの事だから、国産だったんだろうなぁ……。
「獣医にも高森さんにも甘やかし過ぎだ、と言われたが、リクは俺がかっさらう前までは、ロクに餌ももらってなかったんだ。その分、かわいがってやろうと決めていた」
「……かっさらった?」
 物騒な単語に裕貴が眉をひそめる。