手づくり漆器 ~うるし うるおい うるわし~

鳥取の漆職人がお届けします。

蒔絵師 田中稲月 

2009-02-18 09:06:59 | Weblog
平成19年11月 名工蒔絵師 田中稲月氏(田中正輝)が静かにこの世を去られました。87歳でした。

田中さんは、鳥取市吉岡温泉町に住んでいました。14歳で父初代稲月に師事し、塗りの仕事をはじめました。昭和初期は、まだ戦争の始る前でしたのでそれなりに仕事はあったようです。

田中さんの話によると、鳥取市には10人ほどの塗師屋がいて蒔絵師は二人ほど(田中さん親子)だったそうです。木地屋も元気だったようですね。

蒔絵は、初代稲月(田中勇吉)が気高郡立徒弟学校(明治43年~大正3年)で学び、その後石川県山中温泉で学びました。帰鳥して、鳥取で仕事を始めたということです。

田中さんは、その後召集されラバウルに出征しました。激戦地ラバウルで生きるか死ぬかの戦争経験については、あまり語られませんでした。

戦後復員して、再び漆の仕事につきます。それ以後、亡くなるまで蒔絵の仕事をし続けて来られました。

田中さんの蒔絵は、因幡の気質に満ち満ちた「古典風で繊細な意匠」と言っていいと思います。一言で言えば、品がありました。

道具は、きちんと管理され「流石名人」でした。


   写真は、田中稲月作 「天女」丸盆 です。