鏡海亭 Kagami-Tei  ネット小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

・画像生成AIのHolara、DALL-E3と合作しています。

・第58話「千古の商都とレマリアの道」(その5・完)更新! 2024/06/24

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第58)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

連載小説『アルフェリオン』第57話名場面集・続編、水の御子イアラの覚醒!

AIさんで画像化する、連載小説『アルフェリオン』の名場面集! 少しお久しぶりの今回は、第57話「五柱星輪陣(第三部)」の続きの分です。ルキアンとエレオノーアの「闇」チームに続いて、「水」チームのイアラ(とアムニス)を中心に取り上げていきます。

イアラを描いたタイトル画像は、AI姫(カスタマイズされたChatGPT-4o)、Holaraさん、そして鏡海、二つのAIと一人の人間の合作です。かなりイアラらしい絵になったかと思います。

 

それでは第57話のイアラ名場面集の方に参りましょう。

イアラがこれまで心を閉ざしていたのは、彼女の中の竜の血がもたらした特異な容姿(「竜眼」や体のいくつかの部分にある鱗)だけのせいではありませんでした。これまで他人から差別され、蔑まれていた彼女が……勇気を出して唯一信じた男に騙され、恐ろしい罠にはめられたという衝撃の事実が明らかにされます。

 
 なぜ私がいると皆の笑顔が凍り付くのか、
 なぜ私だけを置いてそこから離れてゆくのか。
 大人も子供も。父や母ですらも。
 私は、嫌われるようなことも、悪いことも、
 何もしていないのに。
 とても幼い頃、私には分からなかった。
 しかし、ほどなく理解した。
 私の存在自体が忌まわしく、否定されるべきものなのだと。
 私がどこに行こうとも、普通に生きようとしても、呪いは私自身に付いて回る。
 私は最初から、鍵のない見えない牢獄に囚われて生まれ、その中で生きていたのだ。
 この竜の左目が、醜い鱗が、私の人生も幸福も残らず喰らい尽くすのだろう。
 
 
 ずっと暗闇の中にいた者にとっては、
 たとえ微かな光でも、それはあまりにも眩しく、
 抗し難い憧れをかき立てられずにはいられない。
 手の届いた光に恋焦がれ、
 私は追いかけるようにすがりついた。
 その光がどういうものか、確かめもせずに。
 
 
 最初は偶然のように、それからは次第に偶然が必然になり、
 いつしか《彼》は、私に会いに来てくれるようになった。
 永劫の檻に囚われた醜い竜の眠り姫を、
 誰も助けようとせず、誰もがあざ笑い、
 それどころか存在すら忘却しようとしていた中、
 ただひとり、彼だけが呼び掛けを絶やさなかった。
 そして私は、差し出された手を信じて箱庭から飛び出した。
 何度か忍び会うたびに、初めて見る外の世界にふれるたびに
 私は自身が赦されていくような気がした。
 
 その幸せな時間が積み重ねられるほど、
 やがて来る絶望がいっそう深くなるとは、思うはずもなく。
 
 
 
騙されて捕らえられたイアラは、もはや普通の娯楽では満足できなくなった一部の上流階級に向け、闇の夜会のおぞましい余興に供せられることになります。彼らの見せ物として、魔物の群れに襲われるイアラ。人間ではなく「トカゲ」と蔑まれて……。
 
 
醜悪な魔物たちに犯されそうになったイアラを、謎の美青年、いや、精霊のような不思議な存在が救います。彼は美しくも冷酷で、敵に対しては容赦がありませんでした。彼はアムニス、《水》属性のパラディーヴァです。イアラの運命が変わり始めた瞬間。
 
しかしイアラは、これまで普通の人間たちから受けてきた仕打ちや、この世界に対する憎しみから、《御子》として戦うことを拒否し続けていました。よりによって、この世界に傷つけられてきた人間が、なんでこの世界のために命をかけて戦わなければならないのかと……イアラの気持ちには確かに理解できるところがあります。
 
 
その一方、光の炎属性の「古の四頭竜」と戦うルキアンたちは、《あれ》の御使いである神竜の超越的な力の前に、苦戦を強いられていました。五属性の御子の最後の一人、水の御子のイアラが来てくれないと、御子たちの奥の手である《五柱星輪陣》は完成できません。また、《炎》属性の神竜に対し、天敵である《水》属性を扱えるイアラの力はどうしても必要です。
 
もはやこれまでかというとき、状況を変えたのはエレオノーアでした。さすがはメインヒロイン!(笑)
「本当に君は……毎回、私の予想を超えてくる」(by アマリア)
 
 
 一息、口を閉じた後、エレオノーアは何の飾りもひねりもなく、ただ真正面から告げる。
 ――私みたいなお子様に指摘されるの、腹が立つかもしれませんけど……。イアラさん、はっきり言って、ひとつ間違っています。
 そしてエレオノーアは、とんでもないことを言ってのけた。
 
 ――《この世界》のために、《みんな》のために戦えなんて、誰もあなたに言っていませんよ?
 
 彼女の言葉に対し、無感情だったイアラの瞳に精神の揺らめきがはっきりと生じたのは、そのときだった。
 
エレオノーア、凄いこと言いますね。そこからの彼女の言葉、自分自身に対するエレオノーアの言い分もとんでもないです。
 
 そこにエレオノーアの想いが堰を切ったように流れ込んでくる。
 ――わたしだって、別にみんなのために戦ってるわけじゃないです。でもわたし、絶対に勝ちたいんです!  あの竜に。そして、生まれもった宿命に。わたし自身に。こう見えてもわたしはですね、会ったことすらない誰かの亡骸と、天から降ってきた《聖体》というものから創られた、わけのわからない存在なのです。わたしは人間じゃないかもしれないですし、実は死んだままなのかもしれないですし、本当は、どこにもいないのかもしれないです。
 ――だけど、わたしが誰なのか、何なのかなんて、関係ないのです。わたしとちゃんと向き合ってくれる人にとっては、いま、目の前にいるわたしが問題なのだと。もし、わたしの本性が、実際には動く死体であろうと、魂のないぬけがらであろうと、悪魔の化身だろうと、ただの幻だろうと、それでもエレオノーアはエレオノーアなのだと。わたしのおにいさんは、きっとそうやって受け入れてくれていると思います。
 
 ――そして、わたしも、おそらく他の御子の皆さんも、あなたのことを同じように想っています。イアラさん。
 
 ――どうして。どうして私なんかのことを、そんなに……。
 初めて口を開いたイアラに対し、エレオノーアは少し怒りも交えた声で即答する。
 ――《なんか》じゃないですよ、イアラさん。簡単じゃないですか。あなたとわたしは同じだからです。《予め歪められた生》の苦しみを知っている、同じ光を瞳に宿した仲間だからなのです。
 エレオノーアの言葉に驚いたのか、感極まったのか、イアラは返答できず、頭を抱えて床に擦り付けるように、大きく俯いた。
 
(ChatGPTさんが、エレオノーアとイアラの会話の部分から創り出した画像です)。
 
自分が「会ったことすらない誰かの亡骸と、天から降ってきた《聖体》というものから創られた、わけのわからない存在」なのであるとか、単に「動く死体」にすぎないかもしれないだとか、自身の独自の存在自体を否定するような事実を受け入れ、それでも前を向いて生きるエレオノーア、彼女の意味不明な勢いにイアラも圧倒されます。
 
銀髪のエレオノーアと、赤い竜眼のイアラが、半分ずつひとつになった画像。二人の気持ちがひとつになります。何だか、エレオノーアとイアラは、良い友人になりそうな雰囲気です。
 
目覚めたイアラ。実は、この画像は、小説の当該箇所が本ブログにて連載された昨年11月に公開していたものです。第57話の段階に至っては、すでにAIでの画像化を並行して本サイトで行っていたのでした。現時点と比べても見劣りしない画像ですね。
 
イアラは、四頭竜が使った伝説の炎系呪文「炎帝(イムペラートル・イグニス)」を、「海が落ちてきた」と例えられる莫大な量の水を操って一蹴すると、《水》属性・氷雪系魔法の最上級呪文「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)」を唱えます。
 
 ――緊張……する。怖い。でも、私のこと、みんなが頼りにしてくれてる。なんとか、頑張り、たい。私がもって生まれた、《予め歪められた生》の呪いも……全部、凍り付かせて……やる。
「五柱星輪陣、《闇》の《水》!」
 《水》属性の一環である《氷》系魔法最上位の呪文のひとつを、イアラが唱え始めた。
 
 我は解き放つ水王の御蔵(すいおうのみくら)。
 目覚めよ概念の禁剣、封じられしグラキアルス。
 汝の極限の刃で
 繋ぎ止めよ、楔となりて。
 異界を渡り、
 死せる吐息を静かに歩ませよ。
 世界の脈動よ、停まれ。
 
 イアラの様々な思いが入り混じり、爆発した。それは彼女の中に鬱積した何かを解き放ったかのようでもあった。彼女のフードと髪が舞い上がり、右目に水の紋章が姿を現す。
 
「万物の営みを……零(ゼロ)に帰せ」
 
 露わになった左目の《竜眼》をイアラはもはや隠そうともせず、その燃えるように赤い瞳と、同じく竜である御使いの目が合った瞬間、彼女は叫んだ。
 
「《絶対零度(アブソリュート・ゼロ)!!》」
 
 
 
 
 
巨大な氷の剣、概念の禁剣「グラキアルス」が魔法効果の象徴として姿を現し、その周囲が極低温の氷の層で覆われてゆく。しかし、この呪文の本質は「凍結」魔法というよりも、むしろ「時間停止」魔法なのであった。
 
(実は、画像を何度生成しても氷の剣が巨大には描かれなかったため、最後には下絵(ラフな落書き?)を鏡海が描いて、それをAI姫に読み込んでもらって、以上の「絶対零度」の諸画像を生成しました)。
 
 
これで戦いの趨勢は決しました。とどめをさすのは、次の《地》属性の魔法、アマリアさんの《永劫庭園・弐》です。そしてさらに《五柱星輪陣》の真髄《最終全陣展開》のもとで、《闇》属性のルキアンとエレオノーアの放つ秘奥義《嘆きよ、我に集え》が待ち構えています。
 
激熱、燃え燃えの展開ですが、本日はここでひとまず……(えぇぇ、そんな!?)
 
本日も鏡海亭にお越しいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに。いつも感謝です。

ではまた。
 
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