鏡海亭 Kagami-Tei  ネット小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

・画像生成AIのHolara、DALL-E3と合作しています。

・第58話「千古の商都とレマリアの道」(その5・完)更新! 2024/06/24

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第58)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

飛び出せ妄想、主人公の出番!

連載小説『アルフェリオン』、ここからが、ようやく主人公の見せ場です。
始まるか、スーパールキアンタイム!?(笑)

主人公ルキアン、ミトーニアを戦火から救うぞ!と珍しく格好いい決意をしたまではよかったのですが。その後の彼は…。あたかも、すごろくをして遊んでいるときに運悪く「三回休み」のコマに止まってしまい、他の参加者が先に進んでゆくのを指をくわえて見ていないといけない、悲惨なプレイヤーのようでした。

今回以降、「ルキアン節」全開、目が離せません。会話中なのに延々とモノローグのような語り(苦笑)、思い込み、電波、妄想、鬱回想、そして超覚醒(爆)。ルキアンの本領がいかんなく発揮されます(どんな本領だ ^^;)。

最悪じゃないか…? いや、超覚醒の後はそれなりに主人公らしく戦うので、ご心配なく。

それにしても今回も、相変わらずひどい言われようのルキアンです。
「震えながら剣を握り、引っ込み思案の心で気迫負けしながら敵と対峙する」主人公だとか、「戦士には全く向いていない」主人公だとか…。
シェリルさん(仮名)、容赦ないですね。

以上
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【解説】もうすぐ、念願の主人公のターンが!

連載小説『アルフェリオン』(ブログ再掲版)、ミトーニア市をめぐる攻防も、いよいよ重要な局面に入って参りました。市民たちを巻き込む戦いを止めたい、というルキアンの思いはどうなるのでしょうか…。

1 主人公はレーイではありません(苦笑)

第34話の「戦慄、黒き疾風」というサブタイトルの通り、ナッソス家の秘密兵器である旧世界の超高速陸戦型アルマ・ヴィオ「レプトリア」が大暴れします。他のアルマ・ヴィオには到底追いつけない俊足ぶりを誇るばかりか、魔法弾まですべて無効化してしまうという、反則モノの機体です。腕自慢のクレドールのエクターたちも、さすがに今回は苦戦を強いられるのか?

今回の掲載分(34話-03)、相変わらずレーイが活躍しすぎです。何だか、言動がほとんど主人公みたいじゃないですか。ルキアン涙目…。物語がナッソス家との戦いに入って以来、目立ち度だけで言えば、実際にレーイが主人公のようにみえるかもしれません。まずナッソス艦隊との戦闘でレーイが大活躍、魔法を剣で切り裂く超人技を披露したり、単機で敵艦を沈めたりしていました。続いて空中竜機兵が来襲したときも、ヒロイン格のカセリナと一騎打ち、しかも「俺は愛のためには戦わない!」という名セリフ(?)まで吐く始末。そのうえ今回、レプトリア相手にまたもやエースの風格を見せています。

レーイ自重! どんだけ活躍すれば気が済むんだ(^^;)というところです。

対する本当の主人公のルキアンは、ナッソス家との戦いの中、まずはダメっ子ぶりを発揮したかと思えば極度の鬱展開を経て、一度は「戦いを止める!」と珍しく熱くなったのに、なぜかその後は空気になってしまっているという…。見せ場があるかと思いきや、敵のおねぇさんとお見合い(違)状態になったまま、ず~っと動きません。クレドールの仲間たちは苦戦し、レーイは大活躍する一方、我らが主人公は、もうしばらくは敵兵相手に得意の電波系会話を延々と…。

2 地味展開→超展開→超覚醒でルッキルキに… 

とはいえ、主役を食ってしまうようなレーイの目立ちっぷりがあるからこそ、主人公ルキアンが地味展開や鬱展開を延々と耐えて超覚醒したときの開放感が、いっそう高まるわけです。レーイ、良い仕事しています(笑)。

来週の後半ぐらいから、本格的にルキアンのターンです(`・ω・´)。これほどルキアン中心の展開が続くことは、従来なかったかも(あ、あれっ? ルキアン、一応、主人公なんですけど…)。

続く第35話は、物語の1話から40話までのうち、最大の山場だといっても過言ではありません。一話丸々、ルキアンづくしです。第35話のサブタイトルは、この小説に出てくるキーワードのうち最も重要であろう「パンタシア」です! 何とも最終回を思わせるような題名です。ダメっ子・根暗・妄想・電波の属性をすべて兼ね備えた少年を主人公にしたことには、実は必然性があった! このことが明らかになる第35話でありました。なんというぶっ飛んだ設定(苦笑)。

今のルキアンの状況から、どこをどうひねればそんな山場が来るんだ?という話もあります。そこはまぁ、ご期待を。超展開と超覚醒のコンボでルッキルキにされてください(爆)。ルキアンと対峙している敵の女傭兵、通りすがりのモブキャラかと思いきや…。彼女とのからみで、第34話の後半から、続く超展開に向けてストーリーが着々と進んでいきます。ルキアンとシェリル(偽名)の偶然の遭遇は、今後の物語の流れを考えると、「運命の人」との出逢いみたいなもんですから(非恋愛的な意味で)。カセリナ(=設定上のヒロイン)ますます涙目です。

3 主人公の過去が実は謎に包まれていた件

第35話にはルキアンの過去の話も漠然と出てきます。細切れの回想、子供ルキアンも登場。そういえば、カルバに弟子入りする以前のルキアンのことって、何気に謎ですよね。両親は実の親ではなく、ルキアンはもらわれてきた子。兄たちと比べて悲惨な待遇の子供時代。

何だかシンデレラ風味な話です。不幸な娘が魔法使いにガラスの靴をもらって王子様と…ではなく、地味な少年がリューヌからアルフェリオンをもらって繰士として超覚醒(苦笑)と置き換えてみると、男版かつ戦闘物のシンデレラ(^^;)と言えなくもないんですが。ルキアン自身、兵器としてのアルフェリオンや戦争をあれほど嫌っていたにもかかわらず、アルフェリオンを操るエクターになることで従来の不満な日常から抜け出せる、という暗い願望をもっていました。自分のあり方を突然に変えてくれるとは、まさにガラスの靴やカボチャの馬車。ルキアンにしか履けない(アルフェリオンにはルキアンしか乗れない)というのも、ガラスの靴っぽい。しかし、履いた者を暗黒面に引きずり込むガラスの靴でもあります。一度履いたら最後、もう後戻りはできません。おまけに、闇のパラディーヴァのリューヌさんまで、もれなく憑いてきてしまうという…。

 ◇

それから、ルキアンの養親は、彼をイヤイヤ引き取っていたような雰囲気でした。第9話に、次のような回想が出てきましたね。養父と養母の言葉です。そういえば第9話でも、この鬱回想を経てルキアンが覚醒するのでした。いや、第3話でも「鬱回想→覚醒」です。これはもう、パターンになりつつあります。

 ――ねえ、あなた……あんな子なんてもらわなければ良かったわ。
 ――声が高いぞ。あの子が聞いていたらどうするんだ。
 ――大丈夫ですわ。もう寝てますよ。
 ――まあ、やむを得まい。金になるんだ。わが家を守るためには……。

この会話を生で聞いてしまった幼いルキアン、トラウマになりそうです。「ぼ、僕、聞いてるんですけど…」と暗い顔で思わず出ていったのでしょうか。あるいは、半開きの扉の向こうで声を立てずに涙を流していたのでしょうか。これでは、幼いルキアンが、場所すら分からない本当の「おうち」に帰りたいと泣いていた(第35話)気持ちも分かろうというもの。ただし、故郷や生家に帰ったからといって幸せになれるとは限りません(不吉なことを言わないで! ルキアン談)。

ところで、気づいていた方もおられると思いますが、「金になる」という養父の言葉の意味が、いま思うと意味深ですよね。ルキアンを売り飛ばしたり労働力としてこき使ったり、という意味ではないでしょう。それこそ厄介払いのように、16歳になったとたん、ルキアンは半ば口減らしも同然にカルバのところに放り出されてしまったわけですし。誰がどういう理由で金を出すのでしょう?(何気にミステリアスなルキアンの過去)

また、いくら(貧乏)貴族の子とはいえ、陰気なダメっ子にしかみえない少年を、一流の魔道士であるカルバがわざわざ内弟子に取ったというのも、これまた不思議です。しかもカルバ先生、謎めいた器官(例の「黒い珠」)を埋め込んだ方のアルフェリオン(アルフェリオン・ノヴィーア)のテストを、なぜ優秀なヴィエリオではなくわざわざルキアンにやらせる予定だったのでしょう? なお、この機会に、「黒い珠」とリューヌに関する新たな記事を後日書きます。お楽しみに。

 ◇

登場時のルキアンは、魔道士の見習いであるという点をのぞけば、それまで平凡な暮らしをしてきた少年のように描かれていました。その後も、敢えて「謎めいた過去を持つ少年!」等々という勢いで強調されることはありませんでした。なるほど、彼が実の親ではなく養親に育てられ、しかも精神的な虐待を受けていたらしい、という上記のような仄めかしは物語に出てきました。ただ、これなら普通の日常世界を描いたドラマにもある範囲の「過去」です。ファンタジーやSFの世界にしては、まだまだ極端ではない範囲内でしょう。

貧乏と言っても貴族の子だし、普通に恵まれて暮らしてきたんじゃないか。それにもかかわらず、自分の日常にやたらに不満ばかり言って一人で暗くなっている、現実をよく分かってないヤツ。自分だけが不幸だと思っている勘違い野郎…。当初は、ルキアンのことがそんなふうに見えたかもしれません。

しかし、じわじわと、考えれば考えるほど謎の多い、ルキアンの過去です。第37話・38話になると、彼の「謎の幼年時代」の件が本格的にストーリーに絡み始めます。

以下の数行分は、ある程度のネタバレを含むので白字にして隠してあります。ご覧になりたい方は、マウスでドラッグし、文字を反転させて読んでください。

第37話・38話では、ルキアンの幼年時代の記憶が部分的にかなり欠落している!(しかも本人が、そのことにあまり気づいていなかった)という話が出てきます。単なる物忘れという次元ではありません。まさか記憶とか頭の中だとか、色々といじくられてるんじゃなかろうな、という不自然な場面です。ガンダム風味に言えば、強化人間キタ━(゜∀゜)━!!というオチだったりするのでしょうか?? でも「強化」といっても、あのヘボさです。いったい何を強化したんだというところです。あ、妄想力を通常の三倍に強化したのかもしれません(そんな馬鹿な)。

養父母や兄たちではない、ルキアンの本当の家族についても、すべては謎に包まれています。実はルキアンの姉(あるいは、血はつながっていなくても姉貴分だったような娘?)の話は、本家サイトの第37・38話にちらほらと出てきています。今後のストーリー展開に大きくかかわってきます。この件に関しては、「絶対に外れない」という設定のアマリアの予言により、悲劇的な結末が示されていましたが…。

4 ザックスの悲劇

「黒き疾風」ことレプトリア2体に、オヤジばかりが乗っているというのは、なかなか渋いです。ナッソス家四人衆自体、約1名をのぞけば、おっさん集団…。まぁ、アルマ・ヴィオの場合、その特性上、戦闘機やロボットのパイロットの場合と比べて遥かに高齢までエクターを続けることができるでしょう。

巨大ロボット物と言えば、何だか美少年・美少女ばかりが活躍しそうな印象ですが、この作品はひと味違います。おじ様も若者に負けずに奮闘し、三十路前後の微妙な年齢の姐さんキャラたちの層が異様に分厚いという、素敵な『アルフェリオン』です(笑)。もし、この作品をアニメやコミックで描いたら、中年前後の人たちがあちこちで暴れ回るという、とっても奇妙な絵になるんでしょうね…。まぁ、そこが良いんです。

しかしザックスの置かれた状況は、もはや渋いなどとは口に出せないほど悲惨です。戦争さえなければ…。一度は引退し、家族と共にのんびりと農園を営んでいたのに。そして留守の間に家族は…。しかもその事実を知らないままザックスが戦っていることに、胸が痛みます。戦いが終わったら真っ先に家族のところに帰ろうと思いつつ、それを支えに戦っているのでしょう。想像すればするほど悲しすぎます。

これでもし、ルキアンとザックスがお互いの素性を知らないままに戦ってしまったら? 万一、ルキアンがザックスを倒したら、もうカセリナとの関係の修復は永久に不可能でしょう(「人殺し」と言われ続けるに違いない)。それ以上に、シャノンやトビーは…。ザックスといま交戦中なのは、(不幸中の幸いとまでは言えないが)ルキアンではなくレーイです。しかし、レーイがザックスを倒したとても、「レーイ=シャノンの父親を殺した人」になってしまいます。いや、結局、ギルドのエクターの誰かが「シャノンの父殺し」にならざるを得ません。四人衆を倒さない限り、ナッソス家との戦いは終わりそうにないです。名無しキャラに倒せるレベルの相手では無いですし、名有りキャラが汚れ役になるしかありません…。ギルドのエクターたちは、自分で戦いを仕事に選んだプロたちですから、そのあたりのことは冷徹に割り切っているのでしょうが。

本来は、ザックスに限らず、敵軍の一人一人に家族がいるわけです。ロボット戦闘物で、意外と見落としがちな部分がそこです。敵の家族のことを具体的に描いてしまうと、その敵を倒した主人公側が、どうしても悪役あるいは非道な人間のように見えてしまいます。ですから、イメージダウンを避けるということもあってか、普通はその手の描写はあまり行われません(敵パイロットが死に際に家族や恋人の名前を叫ぶ、という程度の描写はあっても)。しかし敵を一人倒すたびに、ザックスの家の場合と同様のことが毎回起こっているはずです。そのような悲しさを伝えることも、戦争を舞台にした物語の重要な点だと思います。もし実際の戦争が起こったら、同様の悲劇が現実として繰り返されることになるのだと…。

以上
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【緊急特集】 旧世界につながる謎の組織!?

連載小説『アルフェリオン』第33話(ブログ再掲版)、「あの存在」と「御子」の秘密を知る謎の組織「鍵の守人」が遂に登場です。ということで、普段よりも少し長目のスペシャル版をアップしました。

ちなみに本家サイト「鏡海庵」の方では、この部分(=本日ブログにアップした部分)を最後に、昨年まで更新が何年間も休止していたのでした(汗)。2007年の本家サイト再開後、このブログ「鏡海亭」も始動しました。そしてブログにおける『アルフェリオン』再掲版も、第1話から始まり、ようやく本日で33話の山場まで辿り着きました。色々と感慨深いものがあります。

さて、「鍵の守人」は、どうやら旧世界滅亡直後から延々と歴史の影で続いてきた秘密結社のようです。これまで本編に登場したキャラたちがとても知り得なかったような極秘事項が、怒濤のように明らかになる今回…。思わず、こんな重大な話をバラしちゃって大丈夫なの?(笑)と不安になりそうですが。しかもこの組織、旧世界の宇宙戦艦まで持っているようです。「飛空艦」ならぬ「飛宙艦」です。しかしファンタジー物の小説に宇宙戦艦って…。さすが、そんなのありか!?の『アルフェリオン』です(^^;)。この急展開、一体、何なんでしょう…。

「鍵の守人」はガノリス王国に潜伏しているようです。そのガノリスは、いまや事実上、帝国軍の支配下に! そして「御子」の一人であるグレイルも、現在ガノリスに居ます。物語の今後、特にガノリス方面でのストーリー展開が、「鍵の守人」の出現によって大きく動き出すのでした。ガノリスと言えば、帝国軍の特務部隊やガノリスのレジスタンスももうすぐ出てきます(本家サイトの方では、すでに登場済)。新キャラ満載のガノリス方面。これ以上、名有りキャラを出してどうすんだ(笑)という話もありますが、まだまだ増えますよ…。目指せ三国志!?(違)

ところで「鍵の守人」といえば、やはり魔道士・ウーシオンでしょう。変人美形キャラで独特の味を出しています。「ククク…」という不気味な笑い声が特徴。話がもう少し進んで、彼がグレイルやフラメアと絡むと、結構面白いんです(^^;)。

このあたりから、作者の本気?(笑)が見えるかもしれません。そうそう、相変わらず空気化したままの主人公ルキアンも、あと2話ほどすれば一気に爆発します。地味展開(時には鬱展開も)を延々と続け、他のキャラに目立つ出番をさんざん取られた後、一気に超覚醒しておいしいところをもってゆく(^^;)というのは、ルキアンという主人公の醍醐味みたいなものです。ご期待ください。

以上
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【設定解説】アスタロンとパンタシア

連載小説『アルフェリオン』に登場するMT兵器に関して、先日、解説記事をアップしました。今回はその続き、設定の根幹にいっそう深く関わる「アスタロン」と「パンタシア」についてです。

※注 なお、あくまでフィクションとしての似非超魔法科学であるため、まともに理解しようとするとバカになります(^^;)。そんなもんかと雰囲気で流してください。

 ◇

この物語の舞台となる異世界イリュシオーネには、実際に魔法が存在する。魔法という超自然的な現象を、イリュシオーネの魔法学者たちは「アスタロン」と「パンタシア」という仮説を使って説明しようとしている。概要は以下の通り。

まず、イリュシオーネの魔法学においては、この世界は、物理的な法則に服する現実界(人間に知覚可能な世界)と霊的な法則に服する仮想の世界(把握不可能。観念することしかできない)とが対になっており、両者が統合的に作用することによってあらゆる事象が生起すると考えられている。つまり、人間に知覚される世界で起こる現象というのは、実はその世界の裏にあって知覚不能なもうひとつの世界の働きも合わさって生じている、というわけである。この裏側の仮想世界は「アストラル・プレーン」というモデルを使って表現される。実際にアストラル・プレーンが存在するか否かは証明不可能だが、このモデルを使えば魔法の作用は一応整合的に説明できる、とヴィエリオも本編で述べていた(第35話)。

仮説によれば、アストラル・プレーンは、魔法力を伝達する架空の媒質「アスタロン」で満たされている。このアスタロンの仮説を用い、現実世界での魔法の効果の発生は次のように説明される。まず魔法力は、術者の働きかけによって、裏側の世界すなわちアストラル・プレーン側でアスタロンを介して発生・伝達される。しかし、このままでは魔法の力は現実世界では決して発動しない。そこで術者の「パンタシア」の力によって生じた特異点(二つの世界を結ぶ、説明のためのモデルとしての結節点。実際にそういう点があるとは考えられていない)を介し、アストラル・プレーン側に魔法力として存在する霊的な力が、物理世界の側に現実の結果(魔法の効果)となって現れるのだとされている。

いわば、表裏一体であるにもかかわらず、直接に重なったり交ったりしないすることが永久にない「観念できるにすぎない世界(霊的世界)」と「現に存在し知覚しうる世界(物理世界)」とが、「人間」の精神の働きによって同じ次元において相互に影響し合うことが可能となる、というのである。つまり「Aが観念される」(平たく言えばAというものを思い浮かべることができる)ということと「現にAが(物理的に)存在する」こととの間にある深淵をつなぐ、何らかの力が人間の精神活動に秘められている…。そう考えない限り、魔法の効果発生は説明できないと、イリュシオーネでは主張されているのだった。

パンタシアという言葉は、元々は「夢」を意味する旧世界の古典語に由来する。その語源通り、パンタシアとは人間のもつ「夢の力」(第6話)あるいは「夢想する力」(第35話)だとされている。すなわち、第35話のルキアンのセリフによれば、パンタシアとは「《心の中に何かを思い描いて、それを現実にもたらそうとするほど強い想像――創造――の力》です。それが魔力をこの世の力に変える」のであると。人間の精神の深みに宿るという、「観念」と「存在」との間の跳躍をもたらす架空の働きを、「夢」や「想い」というキーワードを用いて感覚的にうまく言い換えているといえよう。

それゆえパンタシアの力を操ることのできる人間のみが、魔道士になれる。第31話からの引用によれば「人は誰でも魔法の源となる《パンタシア》の力を持っている、というのが通説である。そのくせ、己の内に潜むパンタシアの力を実感し、自在に制御できる者の数となれば、急激に限られてしまうことになる。パンタシアを意のままに操るために必要な、天賦の感性を備えた人間だけが、魔道士になれる」のである。

【アルマ・ヴィオとパンタシア】

アルマ・ヴィオは、エクターが乗っていなければ、自然界に漂う魔力を動力に変えることができない。つまり魔力から物理的な力を取り出すためには、エクターのパンタシアという媒介が必要なのである。それゆえエクターはパイロットであると同時に、アルマヴィオにとっては一瞬の生体パーツでもある、という説明を過去にどこかで書いたような気がする。パンタシアの力がなければ魔法の力は現実界で発動できないという上記の話から考えて、当然のことである。なお、この場合の自然界とは、現実界とアストラル・プレーンの双方を合わせた意味での世界全体のことをさしているのだろう。

また、パンタシアの力が強ければ強いほど、アルマ・ヴィオはいっそう大きい力を自然界から引き出すことができる。いかに巨大な出力の動力機関や兵器を備えたアルマ・ヴィオであっても、それらを動かすために必要なエネルギーがなければ、どうしようもない。アルマ・ヴィオの性能という場合、機体自体の最大出力は理論上のリミットを示すものにすぎず、現実にはエクターのパンタシアの力の上限が、機体が実際に出しうる最大出力を決定するのだった。

【ステリア】

ところで、パンタシアの仮説に立脚する魔法学では説明できないものがある。それが問題の旧世界の「ステリア」の技術なのだ。本来、アストラル・プレーン側の魔力は、パンタシアの力による特異点を通じてのみ――物理的な力に置き換えれば想像を絶するレベルの力によって――現実界の力に姿を変えて現れる。だが、この特異点を経ず、何らかの「飛躍」によってアストラル・プレーン側の魔力をこちらの世界に現実化させるような話が、実はステリア技術の前提にあるのだ。

ステリアの詳細は謎に包まれているが、上記のように、アストラル・プレーン側の魔力を現実界に強制的に転移させるような働きと密接に関連していることは、明らかになっている。とはいえ、パンタシアの力による仲立ちを経ず、アストラル界の魔力だけをそのまま現実界に取り出せるなどということはあり得ない。どうやらステリア技術を用いた機関は(例えばアルフェリオンのステリア系機関)、魔法力を帯びたアスタロンをアストラル・プレーンから現実世界へと転移させることができる…という確率が高いのだった(このこととの関連から、やはりアスタロンは存在するという主張がイリュシオーネにおいて強まった)。そして、アスタロンと対をなす何らかのものが現実界側にも存在すると仮定し(これを負のアスタロンと名付け、本来のアスタロンを正のアスタロンと呼ぶ者もいる)、両者の衝突による霊的対消滅の結果、莫大なエネルギーが発生するというのである

このエネルギーを超高出力の攻撃兵器や恒星間移動(ワープ等)の動力のために用いたものが、おそらくステリア機関の正体である。そのパワーは、旧世界で用いられていたあらゆる物理的な動力機関を(おそらく対消滅機関も実用に至っていたであろう)遥かに上回ったとされている。このあまりにも巨大な力が旧世界滅亡の原因になったというのも、うなずけるところである。

 ◇

まだまだ、のんびりと不定期に、設定解説は続きます。

以上
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