鏡海亭 Kagami-Tei  ネット小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

・画像生成AIのHolara、DALL-E3と合作しています。

・第58話「千古の商都とレマリアの道」(その5・完)更新! 2024/06/24

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第58)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

幻のプロローグと二人の絆

本ブログで連載中のファンタジー・ロボット小説『アルフェリオン』! この小説がウェブで1998年にスタートしたとき、実は小説本編に先行して2つの関連記事が公表されていました。そのうちの一方である「物語の前史」を前回にアップしました。今回はもう一方、第1話に先立つ「プロローグ」を再掲です。

以下、原文をそのまま掲載しつつ、挿絵と注解(?)を新たに付記しました。

 


 

プロローグ  失われたことば

 

 いま僕たちの長い旅路は終わる。
 そして世界に別れを告げる。
 二人の哀れな魂は天に召されるだろう。

 ◇

 本当に構わないのか?

  ――えぇ。私はこの日のために生を受けたのですから。

 ありがとう……。
 今日までずっと僕の側にいてくれて。

 ◇

    私は哀しみの中で生まれた。
    あなたの涙が私の血となって、
    この冷たい体に命を吹き込んでくれた。

    だから私は、いつでもあなたと共にある。
    あなたを傷つけようとするもの全てから、
    この手で守ってみせる(*注1)。

 ◇

 捨て石となろう。
 もう誰も僕や彼のような思いをしなくてすむように。

  ――えぇ、最後までお供します。

 後は彼が必ず……(*注2)。

  ――私もそう信じています。

 ◇

    そして私は願った。
    あなたの哀しみを 私にください。
    あなたの胸の痛みを 分けてください。

    降り続く氷雨のようなその涙が、
    もうあなたの瞳を曇らせることがないように。

    さらに そうすることが
    私が本当の魂を得られる道でもあるのなら……。

 ◇ ◇

 山のように巨大な《樹》は雲間にまでその梢を延ばし、さらに天空へと続いている(*注3)。そのまわりでは無数の光の花が一瞬咲き、そして散っていく。見た目には美しい輝きであっても、それは燃え尽きる命が放つ最後の残り火なのだ。 

 翼をもった青白い光が、いま飛び立った。
 そびえ立つ巨木の塔の側面を疾風のごとき速さで上っていく。
 大小様々な黒い影が光に向かって殺到してくる。
 光はその影を全て打ち払いつつ、たちまちのうちに上空へと消えていった。

 しばらくして、大地を揺るがすような轟音とともに《樹》の遥か上方に閃光が走った。それが引き金となって、いくつもの爆炎が天上に巻き起こり始める。

 全ては間もなく終わった。
 だがそれは新たな始まりをも意味していたのである。

 そして今、もうひとつの物語への扉が開かれる。

 

 

(*注1) この部分と同じ台詞を、小説本編の第48話でもリューヌが語っていました。「私」とはリューヌのことを、「あなた」とはリュシオン・エインザールのことを指しています。リューヌはエインザールに対し、パラディーヴァとしての忠誠心・使命感以上の感情を抱いているようにも時々見えます。しかし、そもそもパラディーヴァに、人を愛するといった感情があるのでしょうか(人間にそのような感情があることを、パラディーヴァも理解はしているでしょうが)。ちなみにエインザールは、「闇の御子」としてリューヌのマスターに当たるだけではなく、リューヌも含め、すべてのパラディーヴァを創造した生みの親でもあります。

(*注2) この部分のうち、「僕」とはエインザール自身のことです。これに対して「彼」とは誰のことなのか。「後は彼が必ず……」という台詞だけを見ると、「彼」というのは、エインザールを継ぐ後代の闇の御子であるルキアンのことではないかとも考えられます。しかし、その前の部分で「もう誰も僕や彼のような思いをしなくてすむように」とエインザールが告げていることからして、「彼」はエインザールにとって既知の(当時すでに存在している)人間なのです。ですからルキアンではあり得ません。
 エインザールが天上界との最終決戦に向かう頃、この戦いの背後に存在する「あれ」のことに漠然と気づいていたということは、小説本編でも指摘されていました。つまりエインザールは、たとえこの戦いで天上界を滅ぼしたとしても、その結果、「あれ」からの反作用によって世界や自身に何らかの終極的な事態が生じるであろうことを予測していたのです。それでも、自身には今の世界を救うことが無理であったとしても、別ルートで戦っている「彼」が何とかしてくれるだろうという意図で、エインザールは「後は彼が必ず」と言ったのです。しかし結局、旧世界は滅亡した(「あれ」の影響力によって「リセット」された)という小説本編の前提からして、「彼」も成功はしなかったと考えるのが妥当なようです。

 この「彼」が誰を指すのかは内緒です。ヒントとなる内容は、第18話(約22年前に公開済み!)にすでに出てきています。旧世界の「塔」の天空人によって残された日記が、カギとなります。そういえば、変に具体的な記述があると不思議に思われた方もいたかもしれません。エインザールが天空植民市群を攻撃する一方、地上人たちは、天空人の地上討伐軍を劣勢に追い込み、さらに《世界樹》の奪取を図って進撃していたようです。そこで最前線で戦い、守護神のような役割を果たしていたと思われる戦士は誰か・・・。

(*注3) この《樹》というのが、小説本編でシャリオさんその他が言うところの『大きな大きな木』のおとぎ話のもとになった、《世界樹》のことです。詳しくは物語の比較的初期に当たる「パラミシオン編」や「序曲と二つの星」編をご覧ください。「世界樹」といっても、ファンタジー小説定番の文字通りのそれではなく、むしろSF的な意味で、旧世界の軌道エレベータの比喩であろうことは、小説本編の内容からある程度予測できます。なお、あの『大きな大きな木』という本作中の架空の昔話が『ジャックと豆の木』を下敷きにしていることは、いうまでもありません(笑)。
 ただ、世界「樹」という表現は「比喩」であるというよりも、この軌道エレベータ自体、実際に種から芽生えた豆の木・・・いや、本当に「樹木」の形状をしているのです。つまりは、軌道エレベータのタワーそのものが、ただの構造物ではなく、ひとつの巨大な生体(!)なのです。おそらくはアルマ・ヴィオの技術を応用したのかと思われます(植物型超巨大アルマ・ヴィオ?)。何しろ「生き物」ですから・・・たとえば、地上から世界樹内部を攻め上っていく際、蔓や根のような巨大触手が妨害してきたり、通路の形がリアルタイムでうねうねと変化して迷わされたりするのでしょうか。
 いずれにせよ、この軌道エレベータを地上人に奪い返された時点で、天上界の「終わりの始まり」となりました。それまでは、自らの出力でもって大気圏を超えて宇宙に到達できる兵器しか、天上界(=天空植民市群)に直接攻撃を加えることができなかったわけです。また、それが可能であったのは、当初はおそらく「空の巨人」ことアルファ・アポリオンだけであったかと思われます。アルマ・ヴィオ単体やアルマ・マキーナ単体で大気圏を離脱することは、通常は極めて困難(それこそガンダム世界のように・・・)。また、宇宙船を加速させて射出する地上側の施設等は、衛星軌道上から毎日雨のように降ってくる天上界の攻撃でほとんど破壊されていたでしょうし。だからこそ、天空人たちは、アルファ・アポリオンを「紅蓮の闇の翼」と呼んで恐れおののいたのでしょうね。

 


以上、再掲


 

小説『アルフェリオン』連載開始(1998年)に先立って公表された2編の記事、前回および今回の蔵出し公開、いかがだったでしょうか。

細々とではありますが、ファンタジー・ロボット物を綴って四半世紀!(笑)の鏡海亭、いつもご訪問いただきありがとうございます。
当時からの読者様も新しい読者様も、ご声援、大変感謝申し上げます。
引き続き、よろしくお願いいたします。

ではまた。

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