『隠蔽捜査』から始まる隠蔽捜査・竜崎伸也シリーズは、通算すると第12弾になる。整数表記の間に、3.5と5.5という表記の2冊がイレギュラーに入っているからだ。
さて、本書は9編の短編連作集。2018~2022年に7編が「小説新潮」に掲載され、1編「内助」がアミの会(仮)著『惑-まどう-』に所収された。1編「信号」を書き下ろされて、2023年1月に単行本が刊行された。
短編はモチーフが絞り込まれてストレートにストーリーが進展する。気持ち良くさくさくと読み進めることができた。竜崎伸也シーズは数あるシリーズの中で、私には特に好きなシリーズの一つである。各短編について、読後印象を含め簡略にご紹介しよう。
<空席>
警視庁大森署長から神奈川県警刑事部長に異動した竜崎伸也の最初の活躍を描いたのが前作『探花』だった。この短編は、竜崎が異動した後、北海道警から新任署長が着任するまでの期間に大森署の貝沼副署長以下が署として窮地に立つ姿、奮戦を描く。
品川署での2件のひったくり事件に関連して、第二方面本部の野間崎管理官が緊急配備を命じてくる。一方、大森署管内でタクシー強盗事件が発生。こちらも緊急配備が必要となる。署内の人員は限られている。貝沼は板挟みの苦境に立つ。そして、遂に竜崎に相談の電話をかけた。
野間崎管理官の圧力と署内課長クラスからの要求。一見、二律背反の状況。あちらを立てればこちらが立たず。管内事項は最優先したい。貝沼の心境が伝わってくる。どう切り抜けられるかがおもしろい。
<内助>
竜崎の妻冴子(サエコ)は、午前11時半からのテレビの報道で、大森署管内で焼死体発見というニュースを見た。その時冴子はふとデジャヴを感じた。大森署では捜査本場が立つ。捜査会議までの時間に竜崎が一度帰宅してきた。勿論、竜崎は捜査関連のことは一切話せないと言う。そこで、冴子は自分が抱いた既視感の原因究明のために分析推理を始める。
たまたま早く帰宅した娘の美紀は、母の話を聞き、公開情報の収集に協力する。
冴子の分析推理の結果が、竜崎には意外な発想視点となる。
「内助の功」が発揮されるという展開がおもしろい。読んで楽しくなる短編。
<荷物>
竜崎の息子邦彦が大学生の時、思わぬ窮地に陥ったと思い悩むストーリー。浪人時代の邦彦にはヘロインの所持・使用で捕まり不起訴となった苦い経験がある。それが因で、竜崎は警察庁長官官房総務課から大森署に飛ばされた。ポーランド人留学生ヴェロニカに頼まれて彼女の友人から紙袋の荷物を受け取るのを引き受けた。だが荷物が気になり中身を見る。邦彦は黒い化粧ポーチのようなバッグの中にビニールの袋に小分けされた白い粉を見て、愕然とする。覚醒剤の運び屋として捲き込まれたのでないか・・・・・と。
法律の規定はどのように解釈されるのか。邦彦のこの状況にどう適用されるのか。父が警察の幹部である邦彦の恐怖感・切実感が伝わってくる一編である。
<選択>
竜崎の娘美紀は広告会社に通勤する途中、新橋駅のホームで、痴漢とみなされた中年男にしがみつき捕まえる協力をした。だが、そのため、重要な広告企画のプレゼンの仕事に少し遅れることになった。そこから2つの事象が始まる。富岡課長のパワハラ的言動、新橋署の増原刑事からの呼び出し。痴漢被害を叫んでいた女には痴漢詐欺の疑いがあるという。さらに、あの中年男が名誉毀損を云々していると増原刑事は言い、美紀に共犯の疑いを抱く。思いあまった美紀は父に相談する。
次元の異なる事象が渾然一体として扱われているというよくありそうな局面をキラリと切り出して見せたストーリー。竜崎の客観的な助言が興味深い。
竜崎は新橋署の署長にでも、一言連絡したのだろうか。竜崎はそんなことをするかな。しないかな。そんなことを想像したくなる短編。
<専門官>
神奈川県警の刑事部長となった竜崎の日常の一コマを切り取っている。良くありそうな一断面。矢坂敬蔵は捜査一課の捜査員で、警部待遇の警部補。専門官と呼ばれている。板橋捜査一課長とは同年齢。仕事の実力・実績はあるが、一匹狼的で組織人としては問題にされる存在。いわば大森署の戸高刑事のようなタイプ。板橋課長は過去の事件での竜崎との関わりから、竜崎には敬服している。
港北署管内で死者、怪我人はいないが強盗事件が発生。連続強盗犯の可能性があった。本部からは捜査員として、矢坂が単独で現着していた。
池辺刑事総務課長は竜崎から「捜査本部はどうだ、と訊かれた」ということを板橋課長に伝えた。その時、池辺の解釈を添えて。その結果、矢坂が竜崎に直に抗議するという行動へと走り出す。矢先と竜崎の対決。組織無視の矢坂の行動に両課長はあわてる。
捜査本部を立てるかどうか・・・・。竜崎の対応が読ませどころとなる。
矢坂が竜崎に対面し、いわば毒気を抜かれるところが楽しい。
<参事官>
竜崎は池辺課長から佐藤実本部長からの呼び出しを伝えられる。本部長の話は、刑事部に所属する二人の参事官のことだった。阿久津参事官と組対本部長の平田清彦警視正。竜崎は阿久津のことは知っているが、平田組対本部長が参事官兼務とは認識していなかった。佐藤本部長の話は、前任の本郷刑事部長からこの二人の参事官の折り合いが悪いと聞いているということだった。阿久津はキャリアで平田は地方(ノンキャリア)。佐藤本部長はこの参事官二人の関係をなんとかしてほしいと言う。
横須賀での発砲事件に関する110番通報が契機となり、竜崎が二人の参事官と対話する状況が生み出されて行く。この事件は竜崎にとって二人と会話を重ね、観察する好機となる。竜崎は独自の見解をもつことに・・・。
これもまた、組織の中ではありがちな話ではないか。実像と虚像。人の噂の伝播。確かめられないまま虚像が実像化していく。一事象が正反対の解釈を生み出す思い込み。そんな局面が鮮やかに切り取られている。
<審議官>
『探花 隠蔽捜査9』での事件-横須賀で起きた殺人・死体遺棄事件-の解決後に尾を引いた後日譚。警察庁長官官房に所属する刑事局担当の長瀬友昭審議官から、佐藤本部長に呼び出しの連絡が入った。それは、横須賀での殺人・死体遺棄事件に関連していた。竜崎は佐藤本部長に同行する。
長瀬審議官は言う。NICSの特別捜査官が被疑者を追うために東京都内で捜査活動をしていたことを知った。米軍関係者が都内で捜査するのは日米地位協定を逸脱している。日本の警察の権威失墜に繋がると。竜崎にねじ込んできた。竜崎はその状況について事実関係を論理的に説明した。だが、長瀬審議官には聞く耳なしという状態。事前に知らされていなかったことが根底にあるようだった。長瀬審議官は佐藤本部長に竜崎の処分を指示した。
竜崎は論理的な説明を受けつけない長瀬審議官の背景を考え始める。そして、奇抜な対応策を編み出す。
佐藤本部長に対する竜崎の発言が奮っている。「問題の本質が、長瀬審議官の機嫌だということがわかったので、それに対処したまでです」(p230)
人の心理の機微を巧みに突いた竜崎の作戦がおもしろい。人間って、複雑で単純!
<非違>
マスコミが言う「不祥事」を、公務員の世界では「非違行為」と称することをこの短編で知った。非違行為は「明かな犯罪行為から軽微な違反、さらには職務怠慢なども非違行為に含まれる」(p241)
この短編、大森署の戸高刑事が野間崎管理官の建前上のターゲットにされるという話。大森署の新任署長は女性キャリアで40歳の藍本百合子警視正。貝沼は、藍本署長は好みの問題を超越した美貌の持ち主ととらえている。貝沼副署長は、第二方面本部の野間崎管理官が足繁く署長に面談にくることに頭を痛めていた。面談後、辻褄合わせの署内視察をするのだ。大森署に頻繁にくる用件を貝沼が問うと、野間崎管理官は、戸高の勤務中のボートレース場通いを非違行為だと言い、調べなければと言い出した。
思いあまった貝沼は、再び竜崎に電話をして、相談に乗ってもらう。
このストーリー、非違行為に対する話のオチがおもしろい。ナルホドである。
藍本署長を主人公にしたストーリー展開を期待したくなる。
<信号>
神奈川県警ではキャリア会が恒例行事として行われている。竜崎は赴任後、出席しなかった。だが、警察学校時代に同期であった八島が警務部長として赴任してきた。その八島がキャリア会に出ることを誘ってきた。竜崎は何のメリットもないと思いつつ、出席せざるを得なくなる。
そのキャリア会で、歩行者用の信号で赤信号を無視して渡ることについての是非が話題となり、賛否両論に別れた。その後、この話題での無視論が漏れ伝わり、三島交通部長が佐藤本部長に問題だと詰め寄ってきたのだ。三島交通部長は地方でノンキャリア。部下の課長にはキャリアが居る。誰かが信号無視の話を記者に洩らしたことが原因らしい。
八島が本部長からの竜崎呼び出しを伝えに来た際に、この話を伝えた。キャリア会に出席していた竜崎は、三島交通部長の怒りに捲き込まれていくことになる。
竜崎が三島交通部長に語る落としどころが興味深い。
法律の規制ってその目的は何か。原点に立ち戻る視点がここに出てくるのだが・・・・・。
法律遵守って何だろうかを考えるおもしろい材料にもなっている。
楽しく読める短編連作集である。
ご一読ありがとうございます。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『マル暴 ディーヴァ』 実業之日本社
『秋麗 東京湾臨海署安積班』 角川春樹事務所
『探花 隠蔽捜査9』 新潮社
「遊心逍遙記」に掲載した<今野敏>作品の読後印象記一覧 最終版
2022年12月現在 97冊
さて、本書は9編の短編連作集。2018~2022年に7編が「小説新潮」に掲載され、1編「内助」がアミの会(仮)著『惑-まどう-』に所収された。1編「信号」を書き下ろされて、2023年1月に単行本が刊行された。
短編はモチーフが絞り込まれてストレートにストーリーが進展する。気持ち良くさくさくと読み進めることができた。竜崎伸也シーズは数あるシリーズの中で、私には特に好きなシリーズの一つである。各短編について、読後印象を含め簡略にご紹介しよう。
<空席>
警視庁大森署長から神奈川県警刑事部長に異動した竜崎伸也の最初の活躍を描いたのが前作『探花』だった。この短編は、竜崎が異動した後、北海道警から新任署長が着任するまでの期間に大森署の貝沼副署長以下が署として窮地に立つ姿、奮戦を描く。
品川署での2件のひったくり事件に関連して、第二方面本部の野間崎管理官が緊急配備を命じてくる。一方、大森署管内でタクシー強盗事件が発生。こちらも緊急配備が必要となる。署内の人員は限られている。貝沼は板挟みの苦境に立つ。そして、遂に竜崎に相談の電話をかけた。
野間崎管理官の圧力と署内課長クラスからの要求。一見、二律背反の状況。あちらを立てればこちらが立たず。管内事項は最優先したい。貝沼の心境が伝わってくる。どう切り抜けられるかがおもしろい。
<内助>
竜崎の妻冴子(サエコ)は、午前11時半からのテレビの報道で、大森署管内で焼死体発見というニュースを見た。その時冴子はふとデジャヴを感じた。大森署では捜査本場が立つ。捜査会議までの時間に竜崎が一度帰宅してきた。勿論、竜崎は捜査関連のことは一切話せないと言う。そこで、冴子は自分が抱いた既視感の原因究明のために分析推理を始める。
たまたま早く帰宅した娘の美紀は、母の話を聞き、公開情報の収集に協力する。
冴子の分析推理の結果が、竜崎には意外な発想視点となる。
「内助の功」が発揮されるという展開がおもしろい。読んで楽しくなる短編。
<荷物>
竜崎の息子邦彦が大学生の時、思わぬ窮地に陥ったと思い悩むストーリー。浪人時代の邦彦にはヘロインの所持・使用で捕まり不起訴となった苦い経験がある。それが因で、竜崎は警察庁長官官房総務課から大森署に飛ばされた。ポーランド人留学生ヴェロニカに頼まれて彼女の友人から紙袋の荷物を受け取るのを引き受けた。だが荷物が気になり中身を見る。邦彦は黒い化粧ポーチのようなバッグの中にビニールの袋に小分けされた白い粉を見て、愕然とする。覚醒剤の運び屋として捲き込まれたのでないか・・・・・と。
法律の規定はどのように解釈されるのか。邦彦のこの状況にどう適用されるのか。父が警察の幹部である邦彦の恐怖感・切実感が伝わってくる一編である。
<選択>
竜崎の娘美紀は広告会社に通勤する途中、新橋駅のホームで、痴漢とみなされた中年男にしがみつき捕まえる協力をした。だが、そのため、重要な広告企画のプレゼンの仕事に少し遅れることになった。そこから2つの事象が始まる。富岡課長のパワハラ的言動、新橋署の増原刑事からの呼び出し。痴漢被害を叫んでいた女には痴漢詐欺の疑いがあるという。さらに、あの中年男が名誉毀損を云々していると増原刑事は言い、美紀に共犯の疑いを抱く。思いあまった美紀は父に相談する。
次元の異なる事象が渾然一体として扱われているというよくありそうな局面をキラリと切り出して見せたストーリー。竜崎の客観的な助言が興味深い。
竜崎は新橋署の署長にでも、一言連絡したのだろうか。竜崎はそんなことをするかな。しないかな。そんなことを想像したくなる短編。
<専門官>
神奈川県警の刑事部長となった竜崎の日常の一コマを切り取っている。良くありそうな一断面。矢坂敬蔵は捜査一課の捜査員で、警部待遇の警部補。専門官と呼ばれている。板橋捜査一課長とは同年齢。仕事の実力・実績はあるが、一匹狼的で組織人としては問題にされる存在。いわば大森署の戸高刑事のようなタイプ。板橋課長は過去の事件での竜崎との関わりから、竜崎には敬服している。
港北署管内で死者、怪我人はいないが強盗事件が発生。連続強盗犯の可能性があった。本部からは捜査員として、矢坂が単独で現着していた。
池辺刑事総務課長は竜崎から「捜査本部はどうだ、と訊かれた」ということを板橋課長に伝えた。その時、池辺の解釈を添えて。その結果、矢坂が竜崎に直に抗議するという行動へと走り出す。矢先と竜崎の対決。組織無視の矢坂の行動に両課長はあわてる。
捜査本部を立てるかどうか・・・・。竜崎の対応が読ませどころとなる。
矢坂が竜崎に対面し、いわば毒気を抜かれるところが楽しい。
<参事官>
竜崎は池辺課長から佐藤実本部長からの呼び出しを伝えられる。本部長の話は、刑事部に所属する二人の参事官のことだった。阿久津参事官と組対本部長の平田清彦警視正。竜崎は阿久津のことは知っているが、平田組対本部長が参事官兼務とは認識していなかった。佐藤本部長の話は、前任の本郷刑事部長からこの二人の参事官の折り合いが悪いと聞いているということだった。阿久津はキャリアで平田は地方(ノンキャリア)。佐藤本部長はこの参事官二人の関係をなんとかしてほしいと言う。
横須賀での発砲事件に関する110番通報が契機となり、竜崎が二人の参事官と対話する状況が生み出されて行く。この事件は竜崎にとって二人と会話を重ね、観察する好機となる。竜崎は独自の見解をもつことに・・・。
これもまた、組織の中ではありがちな話ではないか。実像と虚像。人の噂の伝播。確かめられないまま虚像が実像化していく。一事象が正反対の解釈を生み出す思い込み。そんな局面が鮮やかに切り取られている。
<審議官>
『探花 隠蔽捜査9』での事件-横須賀で起きた殺人・死体遺棄事件-の解決後に尾を引いた後日譚。警察庁長官官房に所属する刑事局担当の長瀬友昭審議官から、佐藤本部長に呼び出しの連絡が入った。それは、横須賀での殺人・死体遺棄事件に関連していた。竜崎は佐藤本部長に同行する。
長瀬審議官は言う。NICSの特別捜査官が被疑者を追うために東京都内で捜査活動をしていたことを知った。米軍関係者が都内で捜査するのは日米地位協定を逸脱している。日本の警察の権威失墜に繋がると。竜崎にねじ込んできた。竜崎はその状況について事実関係を論理的に説明した。だが、長瀬審議官には聞く耳なしという状態。事前に知らされていなかったことが根底にあるようだった。長瀬審議官は佐藤本部長に竜崎の処分を指示した。
竜崎は論理的な説明を受けつけない長瀬審議官の背景を考え始める。そして、奇抜な対応策を編み出す。
佐藤本部長に対する竜崎の発言が奮っている。「問題の本質が、長瀬審議官の機嫌だということがわかったので、それに対処したまでです」(p230)
人の心理の機微を巧みに突いた竜崎の作戦がおもしろい。人間って、複雑で単純!
<非違>
マスコミが言う「不祥事」を、公務員の世界では「非違行為」と称することをこの短編で知った。非違行為は「明かな犯罪行為から軽微な違反、さらには職務怠慢なども非違行為に含まれる」(p241)
この短編、大森署の戸高刑事が野間崎管理官の建前上のターゲットにされるという話。大森署の新任署長は女性キャリアで40歳の藍本百合子警視正。貝沼は、藍本署長は好みの問題を超越した美貌の持ち主ととらえている。貝沼副署長は、第二方面本部の野間崎管理官が足繁く署長に面談にくることに頭を痛めていた。面談後、辻褄合わせの署内視察をするのだ。大森署に頻繁にくる用件を貝沼が問うと、野間崎管理官は、戸高の勤務中のボートレース場通いを非違行為だと言い、調べなければと言い出した。
思いあまった貝沼は、再び竜崎に電話をして、相談に乗ってもらう。
このストーリー、非違行為に対する話のオチがおもしろい。ナルホドである。
藍本署長を主人公にしたストーリー展開を期待したくなる。
<信号>
神奈川県警ではキャリア会が恒例行事として行われている。竜崎は赴任後、出席しなかった。だが、警察学校時代に同期であった八島が警務部長として赴任してきた。その八島がキャリア会に出ることを誘ってきた。竜崎は何のメリットもないと思いつつ、出席せざるを得なくなる。
そのキャリア会で、歩行者用の信号で赤信号を無視して渡ることについての是非が話題となり、賛否両論に別れた。その後、この話題での無視論が漏れ伝わり、三島交通部長が佐藤本部長に問題だと詰め寄ってきたのだ。三島交通部長は地方でノンキャリア。部下の課長にはキャリアが居る。誰かが信号無視の話を記者に洩らしたことが原因らしい。
八島が本部長からの竜崎呼び出しを伝えに来た際に、この話を伝えた。キャリア会に出席していた竜崎は、三島交通部長の怒りに捲き込まれていくことになる。
竜崎が三島交通部長に語る落としどころが興味深い。
法律の規制ってその目的は何か。原点に立ち戻る視点がここに出てくるのだが・・・・・。
法律遵守って何だろうかを考えるおもしろい材料にもなっている。
楽しく読める短編連作集である。
ご一読ありがとうございます。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『マル暴 ディーヴァ』 実業之日本社
『秋麗 東京湾臨海署安積班』 角川春樹事務所
『探花 隠蔽捜査9』 新潮社
「遊心逍遙記」に掲載した<今野敏>作品の読後印象記一覧 最終版
2022年12月現在 97冊