机から手に届くところに、長らく積読本状態にしていたこの小説を読み終えた。
私にとっては、初作家で衝動買いで入手した本だった。まして、上下巻なので遅くなった・・・言い訳(笑)。
原題は「NIGHT FALL」で2004年のコピーライトと表記されている。原題のタイトルのままで翻訳され、2006年9月に上・下巻の文庫として刊行された。
1996年に、ニューヨーク発パリ行きのトランス・ワールド航空(TWA)800便(ボーイング747-100)がアメリカ合衆国内で航空機事故を起こした。離陸後ロングアイランドのイーストハンプトン沖を飛行中に突如爆発して空中分解し墜落、乗員乗客230名全員が死亡。 この航空機事故は史実である。本作を読了後にインターネットで検索して知った。この航空機事故の発生当時ほとんど認識していなかったように思う。記憶にない。
この航空機事故について得た情報を補遺に掲載しておきたい。
本作は、実際に起こった航空事故を題材に、その原因究明を行い仮説を立てるというミステリー仕立てになっている。事実とフィクションのはざまの融合を楽しませてくれる。原因究明に引き込んでいく筋立てが巧み。一気読みにさせるエンターテインメント性があったのに・・・・・・。読み始めるのが遅くなった。
第1部は、1996年7月16日、ニューヨーク州ロングアイランドにある郡立カプソーグ・ビーチ公園の砂丘の一隅で、夕刻から、バド・ミッチェルとジル・ウィンズロウが戯れる浮気シーンを描く。彼らは海辺でビデオカメラを使いつつ戯れていた。その時、航空事故が発生した。
第2部は、5年後のニューヨーク州ロングアイランド。
TWA800便事故発生から5年後、海辺での追悼記念式典。式典の場所のちょうど反対側、ほぼ13キロばかり沖合の上空で、巨大な旅客機が爆発し、海に墜落した。
この式典に、ジョン・コーリーとケイト・メイフィールドも出席した。メイフィールドは、ジョンの二人目の妻である。ケイトの誘いに応じ、ジョンもこの式典に同行した。
ケイトはFBI捜査官として働くとともに、ATTF(連邦統合テロリスト対策特別機動隊)に参加していた。彼女は5年前、TWA800便事故の捜査に参加し、目撃者の聞き込み捜査に携わっていた。一方、ジョンはニューヨーク市警の殺人課刑事として働いた後、ATTFに勤務している。ジョンはATTFでケイトに出会って結婚した。
TWA800便事故の調査については、政府の公式見解が発表され、CIAはこの事故についてのアニメーションすら制作していた。
式典の場所で、ジョンはリーアム・グリフィスというFBI捜査官に接触され、告げられた。「奥さんはこの事故について最終的に出された結論には決して満足していないんだよ。・・・・・本件の調査はすでに終了している。・・・・連邦の法執行機関に身を置いている者はだれであれ・・・・5年前の事故について、政府の結論と異なる仮説、おそらくは疑心暗鬼がつくりだした仮説に肩入れするような真似はつつしまなくてはならない。・・・・・政府のもとで禄を食む立場にあるかぎり、たとえ勤務時間外であっても・・・・この事故について考えることすらご法度だ」(p55-56)と脅しをかけてきた。
ケイトはグリフィスがFBI捜査官であることを知ってはいたが、何をしている人物かは全く知らなかった。
これまでTWA800便事故そのものについてそれほど関心を寄せていなかったジョンの心に、グリフィスの発言に対する反骨魂が、火を付ける結果になる。
ケイトは、TWA800便事故については、政府の結論が出ているので、FBI捜査官としてもはや行動できる立場にはいない。現職を失いたくはない。だが、この事故の捜査に関わったことで生じた疑問を内心に抱いている事実は消えない。そこで、ジョンは政府に雇われているわけではないので、彼女はジョンを巻き込む状況を設定したのだ。
ケイトはジョンに言う。「とにかくちゃんと見て、ちゃんと話を聞いてちょうだい。そのうえで、あなた自身がなにをしたいかを決めればいい」(p86)と。ジョンの刑事魂に働きかける。主体的・自主的に謎の究明に突っ走りたい欲求に火がつくことに・・・・。
その式典の後、ケイトは郡立カプソーグ・ビーチ公園のあの場所にジョンを案内する。さらにその後夜遅く、ケイトはアメリカ合衆国沿岸警備隊ーーーセンター・モリチズ基地にジョンを導いた。ここでジョンはスプラック大佐と面談する。大佐はこの事故を目撃した一人だった。「光の筋は海の向こう側から陸地の方角にむかって・・・・・若干は私がいた場所寄りの方向に・・・・突き進んでいた」(p103)と言った。己の目撃事実を客観的に語ることができる人物だった。さらに、深夜にジョンはケイトの指示で、カルヴァートンに赴く。巨大な格納庫には、TWA800便事故の後、回収された航空機の全パーツが再構成されて保管されていた。ジョンは、そこで国家運輸安全委員会づき調査官のシドニー・R・サイベンの説明を聞く。
この一連のオリエンテーションは、ケイトによれば、<200人の目撃者を信じる人々>という組織化されていず、名称すらない存在が事実究明のために協力しているという。
この式典後の一連の体験がジョンを真実究明行動に駆り立てる始まりとなる。
このストーリーの興味深いところは、ジョンが政府の公式の事故調査報告によるデータ・情報群を相手にして、真実究明をする必要があるという構図にある。
一方、このストーリー、第二部の終わりは、追悼式から一週間後に、ケイトとジョンが海外出張という名目でタンザニアとイエメンのアデンという別々の任地に飛ばされることになる。彼らの行動に横やりが入ったのだ。
下巻は第三部の始まり。ジョンが9月に祖国アメリカに帰国した直後から始まる。彼はバド・ミッチェルとジル・ウィンズロウが撮ったビデオが事故の瞬間を記録していないかに行動の的を絞る。当日の二人の足跡を追跡することに重点を移していく。ジョンの不屈の意志と行動力が徐々にビデオ入手の核心に迫って行くプロセスが読ませどころとなる。
、それは、中央情報局(CIA)所属のテッド・ナッシュとの対決になっていく。
このストーリー、最終ステージは、いわば驚天動地の瞬間の到来で幕切れになる。まさに想定外のエンディングである。お楽しみに!!
「どうしようもない」という一言に尽きるか・・・・・・。
ご一読ありがあとうございます。
補遺
トランス・ワールド航空800便墜落事故 :ウィキペディア
FBI Records : The Vault TWA Flight 800 Part 01 (Final) :「THE FBI」
What Happened When TWA Flight 800 Crashed in 1996 YouTube
What Really Happened To TWA Flight 800? YouTube
TWA Flight 800 From Wikipedia, the free encyclopedia
A passenger jet exploded nearly 30 years ago. How families of aircraft disaster victims are treated was forever changed :「CNNus」
TWA Flight 800: Twenty-five years after the tragedy
Families Of Victims Mark 25th Anniversary Of TWA Flight 800 Crash YouTube
What Really Happened To TWA Flight 800? YouTube
History's Greatest Mysteries: The Unexplained Explosion of TWA Flight 800 (Season 4)
YouTube
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