はるか大昔、受験勉強で「いい国作ろう鎌倉時代」、1192年が鎌倉時代の始まりと記憶した。その時代区分を露とも疑わずに・・・・。だが、その歴史認識はもはや主流ではないらしい。「邪馬台国」は「やまたいこく」と呼ぶものと記憶した。だが、今は「邪馬台」を普通名詞として「やまと」と読むのが適切であるという。
日本史の研究は史資料や出土品等の発見が累積し、それとともに歴史解釈が変化してきているようだ。歴史知識は半世紀以上前の受験期のまま、ほぼ凍結されてきたようなもの。一度、リセットしてみないと・・・・・。
そんな折りに、何周遅れかは知らないが、本書のタイトルが目に止まった。2018年8月に刊行されていた。手に取ったのは同年翌月発行の第3版。悠久の歴史のスパンからみれば、ごく最近の本。現在時点で、日本史の何が論点になっているのか? その概略を知り、古びた知識をリセットして、少しは頭を活性化するのには手頃かもと読んでみた。
読んでいて、ある意味で、目から鱗が落ちるという類いの新鮮さを味わうことができた。なるほどな・・・と思う箇所が多かった。一つ一つの論点が、それぞれたぶん一冊の本になるところだろう。それを言わばダイジェストして、何が歴史解釈の論争点になるのかをまとめてくれている。歴史解釈の見直しに触れる入口としては便利な新書である。
本書は日本史の論点を29取り上げている。目次をご紹介すれば、何が論点になってきているのかが、それでお解りいただけるだろう。本書は研究者の共著である。各章に執筆者名等を併記してご紹介する。各著者の肩書きは、本書末尾の「執筆者紹介」から引用。
第1章 古代 倉本一宏 国際日本文化研究センター教授
論点1 邪馬台国はどこにあったのか
論点2 大王はどこまでたどれるか
論点3 大化改新はあったのか、なかったのか
論点4 女帝と道鏡は何を目指していたのか
論点5 墾田永年私財法で律令制は崩れていったのか
論点6 武士はなぜ、どのように台頭したのか
第2章 中世 今谷 明 帝京大学特任教授 国際日本文化研究センター明誉教授
論点1 中世はいつはじまったのか
論点2 鎌倉幕府はどのように成立したか
論点3 元寇勝利の理由は神風なのか
論点4 南朝はなぜすぐに滅びなかったか
論点5 応仁の乱は画期だったか
論点6 戦国時代の戦争はどのようだったか
第3章 近世 大石 学 東京学芸大学教授
論点1 大名や旗本は封建領主か、それとも官僚か
論点2 江戸時代の首都は京都か、江戸か
論点3 日本は鎖国によって閉ざされていた、は本当か
論点4 江戸は「大きな政府」か、「小さな政府」か
論点5 江戸の社会は家柄重視か、実力主義か
論点6 「平和」の土台は武力か、教育か
論点7 明治維新は江戸の否定か、江戸の達成か
第4章 近代 清水唯一朗 慶応義塾大学教授
論点1 明治維新は革命だったのか
論点2 なぜ官僚主義の近代国家が生まれたのか
論点3 大正デモクラシーとは何だったのか
論点4 戦争は日本に何をもたらしたか
論点5 大日本帝国とは何だったか
第5章 現代 宮城大蔵 上智大学教授
論点1 いつまでが「戦後」なのか
論点2 吉田路線は日本に何を残したか
論点3 田中角栄は名宰相なのか
論点4 戦後日本はなぜ高度成長できたのか
論点5 象徴天皇制はなぜ続いているのか
この本の便利なところは、自分の関心が深い論点から読めること。どこから読んでも、一つの論点はそれで完結している。日本史の論点の概略を知るのに便利である。論点の論述の中に、関連する著書・論文が明記されているので、さらに一歩奥に入るためのガイドブックの役割も果たすようになっている。少なくとも、
日本史の解釈がダイナミックに動いているという感じに触れることができておもしろい。
2点、触れておきたい。
1つは、各章の裏ページに、簡略な「関連年表」が記されている。史実の整理に役立ち、並行して別に年表など必要としない。これ自体が一つの副産物になる。
2つめは、本書の末尾に、「日本史をつかむための百冊」と題して、論点に深入りしていくための関連書籍がリストアップされている。各書に簡略な紹介文が付記されている。
論点のメッセージに、貴方がちょっと、引っかかりを感じたら、その関心があなたの日本史理解への一歩を推し進めることになることだろう。
この論点全てに、最新解を持っている人など、たぶんいないだろうから。きっと、どこかで関心が目覚めるのでは・・・・。
ご一読ありがとうございます。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『眠れないほどおもしろい 徳川実紀』 板野博行 王様文庫
『収容所から来た遺書』 辺見じゅん 文春文庫
『新選組』 黒鉄ヒロシ PHP文庫
『坂本龍馬』 黒鉄ヒロシ PHP文庫
「遊心逍遙記」に掲載した<歴史>関連の本の読後印象記一覧 最終版
2022年12月現在 28冊
日本史の研究は史資料や出土品等の発見が累積し、それとともに歴史解釈が変化してきているようだ。歴史知識は半世紀以上前の受験期のまま、ほぼ凍結されてきたようなもの。一度、リセットしてみないと・・・・・。
そんな折りに、何周遅れかは知らないが、本書のタイトルが目に止まった。2018年8月に刊行されていた。手に取ったのは同年翌月発行の第3版。悠久の歴史のスパンからみれば、ごく最近の本。現在時点で、日本史の何が論点になっているのか? その概略を知り、古びた知識をリセットして、少しは頭を活性化するのには手頃かもと読んでみた。
読んでいて、ある意味で、目から鱗が落ちるという類いの新鮮さを味わうことができた。なるほどな・・・と思う箇所が多かった。一つ一つの論点が、それぞれたぶん一冊の本になるところだろう。それを言わばダイジェストして、何が歴史解釈の論争点になるのかをまとめてくれている。歴史解釈の見直しに触れる入口としては便利な新書である。
本書は日本史の論点を29取り上げている。目次をご紹介すれば、何が論点になってきているのかが、それでお解りいただけるだろう。本書は研究者の共著である。各章に執筆者名等を併記してご紹介する。各著者の肩書きは、本書末尾の「執筆者紹介」から引用。
第1章 古代 倉本一宏 国際日本文化研究センター教授
論点1 邪馬台国はどこにあったのか
論点2 大王はどこまでたどれるか
論点3 大化改新はあったのか、なかったのか
論点4 女帝と道鏡は何を目指していたのか
論点5 墾田永年私財法で律令制は崩れていったのか
論点6 武士はなぜ、どのように台頭したのか
第2章 中世 今谷 明 帝京大学特任教授 国際日本文化研究センター明誉教授
論点1 中世はいつはじまったのか
論点2 鎌倉幕府はどのように成立したか
論点3 元寇勝利の理由は神風なのか
論点4 南朝はなぜすぐに滅びなかったか
論点5 応仁の乱は画期だったか
論点6 戦国時代の戦争はどのようだったか
第3章 近世 大石 学 東京学芸大学教授
論点1 大名や旗本は封建領主か、それとも官僚か
論点2 江戸時代の首都は京都か、江戸か
論点3 日本は鎖国によって閉ざされていた、は本当か
論点4 江戸は「大きな政府」か、「小さな政府」か
論点5 江戸の社会は家柄重視か、実力主義か
論点6 「平和」の土台は武力か、教育か
論点7 明治維新は江戸の否定か、江戸の達成か
第4章 近代 清水唯一朗 慶応義塾大学教授
論点1 明治維新は革命だったのか
論点2 なぜ官僚主義の近代国家が生まれたのか
論点3 大正デモクラシーとは何だったのか
論点4 戦争は日本に何をもたらしたか
論点5 大日本帝国とは何だったか
第5章 現代 宮城大蔵 上智大学教授
論点1 いつまでが「戦後」なのか
論点2 吉田路線は日本に何を残したか
論点3 田中角栄は名宰相なのか
論点4 戦後日本はなぜ高度成長できたのか
論点5 象徴天皇制はなぜ続いているのか
この本の便利なところは、自分の関心が深い論点から読めること。どこから読んでも、一つの論点はそれで完結している。日本史の論点の概略を知るのに便利である。論点の論述の中に、関連する著書・論文が明記されているので、さらに一歩奥に入るためのガイドブックの役割も果たすようになっている。少なくとも、
日本史の解釈がダイナミックに動いているという感じに触れることができておもしろい。
2点、触れておきたい。
1つは、各章の裏ページに、簡略な「関連年表」が記されている。史実の整理に役立ち、並行して別に年表など必要としない。これ自体が一つの副産物になる。
2つめは、本書の末尾に、「日本史をつかむための百冊」と題して、論点に深入りしていくための関連書籍がリストアップされている。各書に簡略な紹介文が付記されている。
論点のメッセージに、貴方がちょっと、引っかかりを感じたら、その関心があなたの日本史理解への一歩を推し進めることになることだろう。
この論点全てに、最新解を持っている人など、たぶんいないだろうから。きっと、どこかで関心が目覚めるのでは・・・・。
ご一読ありがとうございます。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『眠れないほどおもしろい 徳川実紀』 板野博行 王様文庫
『収容所から来た遺書』 辺見じゅん 文春文庫
『新選組』 黒鉄ヒロシ PHP文庫
『坂本龍馬』 黒鉄ヒロシ PHP文庫
「遊心逍遙記」に掲載した<歴史>関連の本の読後印象記一覧 最終版
2022年12月現在 28冊