千里眼新シリーズの第6弾! 文庫書下ろしである。とはいえ、はやかなりの歳月が過ぎた。平成19年、2007年7月の刊行。この新シリーズ、ゆっくりと読み継いでいる。このストーリーのスタイルでの面白さは、時を経た今も変わりはない。
冒頭は、ハローワークで行う相談に派遣された臨床心理士牧野高雄が来談者の京城麗香と牧野幸太郎の二人に手を焼く場面からスタート。ハローワークを訪れていた京城が突如、株式会社レイカを設立登記して、ハローワークで知りあった幸太郎を社員にするという挙に出る。この二人、主な登場人物になっていく。
一方で、ランボルギーニ・ガヤルドを運転する岬美由紀は、都内で黒のクライスラー300Cセダンに追跡され、それを振り切るためにとんでもないドライビングを行うという場面で登場する。追ってくる男は、メフィスト・コンサルティングの関係者とわかる。その男は、京城麗香に会わせないという意思を表明した。逆に、それは美由紀に火をつけることになる。のっけからおもしろい場面が進展する。こういうスタイルがこのシリーズの常套手段なのだが。
ハローワーク通いだった京城麗香が会社を起業して何をしようとするのかに、読者はまず、関心を抱かざるを得ない。やる気が全くなかった幸太郎が麗香に引っ張られてどんな役回りを演じる羽目になるのか・・・・。起業した麗香は、次に車を口八丁手八丁のやり口で入手する。フロント部分がオロチという異形のクーペスタイルのスポーツカーである
麗香の指示で、幸太郎は渋谷109の正面に仮設された舞台に車を乗り上げさせる。
これもまた奇想といえる展開。
会社の事務所に戻ると、会社に関わっているポアがいた。刑事が現れひと悶着。幸太郎はポアから彼女がメフィストに関係する工作員と告げられる。併せて、麗香はメフィストかどうかは不詳だとも。
そんな矢先に、地震が発生した。この時、美由紀はレインボーブリッジの中央部にいた。勿論、美由紀は橋上での避難行動の対処に巻き込まれていく。これはいわば美由紀の行動を彷彿とさせるエピソードの織り込み。
麗香はこの地震が人工地震で、メフィストが仕掛け、自分に接触してきたのだと解釈する。幸太郎には意味不明。勿論読者にとっても同じ。興味は高まる。
美由紀は。雑居ビルの前でオロチを洗車する幸太郎に出くわす。二人が会話をしているところに麗香が現れる。麗香を見た美由紀は麗香のまなざしを見つめて、気づく。麗香は西之原夕子であるということに。
その場に、ポアが現れて闘うことになり、美由紀はメフィストが絡んでいることを察知する。
即座に、美由紀は西之原夕子をメフィストの魔手から救うという使命感をいだく。
つまり、ここまでがいわば準備ステージ。ここからストーリーが本格的に進展する。
西之原夕子にポアを付けることで、メフィストは何を目的としているのか?
メフィストが人工地震を起こした意図は何か? それが夕子とどう関係するのか?
今回、メフィスト・コンサルティングを、特別顧問ジェニファー・レインが指揮していることが、美由紀と夕子には明らかになった。
美由紀が幸太郎を助けたことを承知の上で、夕子は幸太郎に、横浜みなとみらいの赤レンガ倉庫の駐車場に、オロチを運転してきてくれと電話連絡してくる。背景を何も知らない幸太郎は、徐々に関連情報を知るようになる。彼はどうするか、どうなるのか?
美由紀はこの状況にどう対応していくのか?
ストーリーの後半に突き進んでいく。
ストーリーにはいくつか枝葉になるエピソード風のサブ・ストーリーが織り込まれいく。それがこのストーリーの特徴にもなtっている。後半でのおもしろいシチュエーションに触れておこう。
銀座の地下の幻の地下街の先の通路の床にある正方形の深い竪穴を使って、内部の水位が上下する中で、クイズ形式の一種のテストが夕子に課される。そのプロセスの描写スタイルがエピソード風だ。読者をも試しているように思えておもしろい。この竪穴に美由紀が巻き込まれていく。
最後に、一項目触れておこう。このストーリー、自己愛性人格障害というのを中核のテーマに据えている。臨床心理士岬美由紀が扱うのにピッタリというところか。
著者は、美由紀が夕子に対し、次のように語らせている。
「聞いて。治療するんじゃなく、その人格を自分のものとして理解し、長所も短所も受け入れることよ。もし怒りに我を忘れることがあったとき、その時点で自己愛性人格障害だからと自分をなだめることはできない。でも、自分に異常が起きそうな状況をあらかじめ察知して、避けることはできる。そうしているうちに、冷静さのなかから自分を再発見していくことが可能になるの。わかった? だから症状をありのままに受け入れて」と。(p240)
ご一読ありがとうございます。
補遺
自己愛性パーソナリティ障害 :「MSDマニュアル 家庭版」
自己愛性パーソナリティ症(NPD) :「MSDマニュアル プロフェッショナル版」
自己愛性パーソナリティ障害とは :「大阪メンタルクリニック 梅田院」
ネットに情報を掲載された皆様に感謝!
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冒頭は、ハローワークで行う相談に派遣された臨床心理士牧野高雄が来談者の京城麗香と牧野幸太郎の二人に手を焼く場面からスタート。ハローワークを訪れていた京城が突如、株式会社レイカを設立登記して、ハローワークで知りあった幸太郎を社員にするという挙に出る。この二人、主な登場人物になっていく。
一方で、ランボルギーニ・ガヤルドを運転する岬美由紀は、都内で黒のクライスラー300Cセダンに追跡され、それを振り切るためにとんでもないドライビングを行うという場面で登場する。追ってくる男は、メフィスト・コンサルティングの関係者とわかる。その男は、京城麗香に会わせないという意思を表明した。逆に、それは美由紀に火をつけることになる。のっけからおもしろい場面が進展する。こういうスタイルがこのシリーズの常套手段なのだが。
ハローワーク通いだった京城麗香が会社を起業して何をしようとするのかに、読者はまず、関心を抱かざるを得ない。やる気が全くなかった幸太郎が麗香に引っ張られてどんな役回りを演じる羽目になるのか・・・・。起業した麗香は、次に車を口八丁手八丁のやり口で入手する。フロント部分がオロチという異形のクーペスタイルのスポーツカーである
麗香の指示で、幸太郎は渋谷109の正面に仮設された舞台に車を乗り上げさせる。
これもまた奇想といえる展開。
会社の事務所に戻ると、会社に関わっているポアがいた。刑事が現れひと悶着。幸太郎はポアから彼女がメフィストに関係する工作員と告げられる。併せて、麗香はメフィストかどうかは不詳だとも。
そんな矢先に、地震が発生した。この時、美由紀はレインボーブリッジの中央部にいた。勿論、美由紀は橋上での避難行動の対処に巻き込まれていく。これはいわば美由紀の行動を彷彿とさせるエピソードの織り込み。
麗香はこの地震が人工地震で、メフィストが仕掛け、自分に接触してきたのだと解釈する。幸太郎には意味不明。勿論読者にとっても同じ。興味は高まる。
美由紀は。雑居ビルの前でオロチを洗車する幸太郎に出くわす。二人が会話をしているところに麗香が現れる。麗香を見た美由紀は麗香のまなざしを見つめて、気づく。麗香は西之原夕子であるということに。
その場に、ポアが現れて闘うことになり、美由紀はメフィストが絡んでいることを察知する。
即座に、美由紀は西之原夕子をメフィストの魔手から救うという使命感をいだく。
つまり、ここまでがいわば準備ステージ。ここからストーリーが本格的に進展する。
西之原夕子にポアを付けることで、メフィストは何を目的としているのか?
メフィストが人工地震を起こした意図は何か? それが夕子とどう関係するのか?
今回、メフィスト・コンサルティングを、特別顧問ジェニファー・レインが指揮していることが、美由紀と夕子には明らかになった。
美由紀が幸太郎を助けたことを承知の上で、夕子は幸太郎に、横浜みなとみらいの赤レンガ倉庫の駐車場に、オロチを運転してきてくれと電話連絡してくる。背景を何も知らない幸太郎は、徐々に関連情報を知るようになる。彼はどうするか、どうなるのか?
美由紀はこの状況にどう対応していくのか?
ストーリーの後半に突き進んでいく。
ストーリーにはいくつか枝葉になるエピソード風のサブ・ストーリーが織り込まれいく。それがこのストーリーの特徴にもなtっている。後半でのおもしろいシチュエーションに触れておこう。
銀座の地下の幻の地下街の先の通路の床にある正方形の深い竪穴を使って、内部の水位が上下する中で、クイズ形式の一種のテストが夕子に課される。そのプロセスの描写スタイルがエピソード風だ。読者をも試しているように思えておもしろい。この竪穴に美由紀が巻き込まれていく。
最後に、一項目触れておこう。このストーリー、自己愛性人格障害というのを中核のテーマに据えている。臨床心理士岬美由紀が扱うのにピッタリというところか。
著者は、美由紀が夕子に対し、次のように語らせている。
「聞いて。治療するんじゃなく、その人格を自分のものとして理解し、長所も短所も受け入れることよ。もし怒りに我を忘れることがあったとき、その時点で自己愛性人格障害だからと自分をなだめることはできない。でも、自分に異常が起きそうな状況をあらかじめ察知して、避けることはできる。そうしているうちに、冷静さのなかから自分を再発見していくことが可能になるの。わかった? だから症状をありのままに受け入れて」と。(p240)
ご一読ありがとうございます。
補遺
自己愛性パーソナリティ障害 :「MSDマニュアル 家庭版」
自己愛性パーソナリティ症(NPD) :「MSDマニュアル プロフェッショナル版」
自己愛性パーソナリティ障害とは :「大阪メンタルクリニック 梅田院」
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