ミツバチのささやき
1973
Victor Erice (ビクトル・エリセ)
アナ(アナ・トレント)とイザベル(イザベル・テリェア)の2人の姉妹をモチーフとして、少女の持つ神聖性、純真さ、残酷さを描ききっています。
月並みな言い方ですが、やはりこの言い方になってしまいます。
スペイン内紛のさなか、街にやってきた「フランケンシュタイン」の映画を観た二人の姉妹は、まるでサンタクロースを信じる子供のようにその存在を信じ、夜はベッドでこそこそと話し合う。そのお話はフランケンシュタインのお話であるけれど、命の話であり、善悪のお話。そしてアナは一人でフランケンシュタインを探しに行ってしまう。
このあらすじを読んでおわかりの通り、モチーフが「パンズ・ラビリンス」と共通しているところがとても多い。
パンフレットの解説でも殆どの方が本作を引き合いに出しています。
ギレルモ・デル・トロ監督が本作を観たことがなかったとしたら驚異のシンクロニシティです。
そしてこの2作品に優劣を付ける必要は全くありません。どちらも素晴らしい作品です。
「パンズ・ラビリンス」では少女の空想を綺麗で残酷な映像に着地させることで逆説的に少女の置かれた悲劇的な状況をに浮き彫りにしています。
「ミツバチのささやき」はその空想を描かずして本人を通して、そのリアルな映像だけで垣間見させる。
そもそも本作が名作たる所以はアナ・トレントの奇跡的な名演技。あれは本当に演技なんでしょうか?撮影されていることをまるで分かっていないような空気感。
あの、世界の全てをのぞき込むような眼差しにはギクッとしてしまう。
「フランケンシュタイン」を観る、そのスクリーンを見つめる目は、本当に何かを観ています。この眼差しを久しく観ていなかった。
時代的に決して明るくはなかったスペインをモチーフにして、その中に暮らす少女の、その眼差しに光を求めた作品。
傑作です。
ビクトル・エリセ監督。ついて行きます。
なぜ本作のDVDが廃盤なのか。
納得のいかない世の中です。
歴史に残る名作映画というのは正にこういう作品のことを言うのでしょう。
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色んな意味で驚愕としました。
もうちっとまじめに勉強するんだったなー
ボケが治らない。
あの目には息を飲んだ。