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映画【ぼくを葬る(LE TEMPS QUI RESTE)】

2008-04-23 23:44:41 | 映画
 
 
ぼくを葬る(LE TEMPS QUI RESTE)
2005
フランソワ・オゾン(Francois Ozon)


私、その気は無いんですが、こういう描き方をされると美しいものかもしれないと思ってしまう。
映画とは恐るべきモノです。
ちなみに、タイトルは「葬る」と書いて「おくる」と読みます。
日本語にタイトルを直訳すると「残された時間」
直球ですね。この日本語タイトルはアリではないかと。

本作は31歳にして余命3ヶ月を言い渡された売れっ子フォトグラファー(ゲイ)のお話。
主人公の人生の最後の5ページくらいを描いた作品。
それ以前もそれ以後もないお話。
彼が生きていたその瞬間だけを描いた作品です。
死ぬことを受け入れた彼の、自分を浄化するかのような恐ろしいほどのプライベートな日々を客観しています。

パーソナリティを逐一説明することなく、登場人物との関わり方だけで彼のアイデンティティを描く手法は秀逸です。
台詞で語られていることと相反するであろう主人公の想い。
それを結ぶ、異常なまでに美しいラストシーン。これは必見です。
映像であるからこそできる表現。
これが映画ですよ。

火サスの様に全ての言葉で想い語ろうとするクソ映画は「映画」である必要がないですね。
というか、言語化できないのがその人そのものだと思うのです。
たまたま
文芸にしても、音楽にしても、明文化されたものに答えはなく、その行間を想像する自分のなかにしか答えはないのです。
その答えは万人に共通ではないはず。
そう思うと、同じものを観たり、読んだり、聞いたりして同じ感想を持つのは奇跡的なことでは。
映画の見解が違うからと言って侃々諤々と揉めることもありますが、それは楽しい揉め方です。