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性交と恋愛にまつわるいくつかの物語
2005
高橋源一郎


先日、友人夫妻宅に行った際に借りてきました。彼らは途中までしか読んでいないとのこと。
多分、この人の本を読むよりも、この人が誰かの本へのコメント文章を読む機会の方が多いことは間違いありません。どこでも名前見かけます。
ちょっと手に取った本のオビでアオリを書いているのがこの人だったり、サクッと立ち読みしたコラムがこの人だったり。何かの怨念かとも思うほど。

内容はといえば、最初の短編はブサイクの盲信と無知(経験不足)による妄想と誤解を客観視して主観的に書く。書いてて自分でもよく分からないですけど、そんな内容です。他の短編もタイトル通り性交と恋愛にまつわるお話です。

タイトルのニュアンスだけ似た映画にウディ・アレン「 ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう」という映画があるのですけど、こちらはとても愉快。全く別物です。関係ありませんでした。

この本、エグいです。電車では読むのをはばかられるくらい。この本に出てくる気持ち悪い登場人物の思考が自分とかぶることがあるからでしょう。平野敬一郎「滴り落ちる時計たちの波紋」に収録されている「最後の変身」よりも。

俗だがよく理解できない言葉を並べまくられて、それだけをずっと読んでいると、変な催眠術にかかったように「それを知らない、もしくは肯定していないのはダメなことなのか?」という錯覚に陥ることがあります。あー、コワイ。

ロリコンの主人公の短編もありましたが、扱い方が阿部和重とは違う。なんというかリアル。阿部和重だとそれほど体温を感じなかったロリコンも、高橋源一郎が書くとどうも生々しい。なんか、嫌いじゃない。

でも、読み終わった後にその気持ち悪さがなぜか残らない。ものすごくデフォルメしちゃえば誰でもこうなる要素はあるな、と。そのバランスとってこそなんですけどね。
前にどっかで読んだ高橋源一郎の言葉で「経験していないことは書けない」というのがあったんですけど、そう考えてみるとホントっぽい。

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