備前の古社を訪ねる(備前国内神名帳の研究)

備前の由緒ある神社を巡礼する

コラム16.磐座主義者

2008-07-11 22:19:31 | Weblog
「磐座」とは、依代である岩石のことであり、祭祀された岩石と言っても良いと思う。依代には巨石、滝、洞窟、巨木など、人智を超えた不思議なものに神秘を感じ、そこに神が降りてくると考えられたのだろう。なかでも、不朽で、揺るがない巨石が代表的なものとなっているようだ。
ネットや書籍でみると、磐座コレクターというか、磐座ハンターというか、磐座の愛好者がことのほか多いようだ。内容をみると、単なる「巨石フェチ」のような人もいるようだが、ある意味「無色」で、素朴に楽しむことができる。
もちろん、一方で、「祭祀された」という部分を重視する人もいる。社殿を建てるようになったのは仏教の影響であり、本来は磐座そのものが神社であった、という考え方もある。そのこと自体は、かなり納得できる話だと思う。ただ、そこから進んで、岩以外の依代を軽視したり、磐座の無い神社を軽視したりするような傾向を感じることがある。小生は密かに、こういう人を「磐座主義者」と称している。自分自身にもそのような傾向があるので、気をつけたい。
なお、磐座が特徴的な神社もあるが、国内神名帳所載の神社には雨乞いや水源の神様が多いような気がする。国司が五穀豊穣を祈るためだから、当然かもしれない。このことは以前にも一度書いたと思うが、機会があれば、また書きたい。

コラム15.操山、八幡雄島宮、安住院(続)

2008-07-06 10:54:30 | Weblog
「八幡雄島宮」については、コラムでも既に書いているが、今住んでいるところの近くで何となく気になるので、しつこく書く。「岡山市史 第一」(昭和11年3月)を読んだりしてわかったことなど。
「瓶井山禅光寺安住院」は天平勝宝年間(749~756年)に報恩大師により建立された備前48ヶ寺の1つ。社伝等によれば、(本尊は千手観世音菩薩だが)鎮守として阿弥陀如来の化現である八幡大菩薩を勧請したとされる。ただし、寺の創建のときに神社も創建されたのかどうか。別の古伝によれば、当寺は「八幡雄島宮」の社地に創建されたという。小生は、以前書いたように、先に「八幡雄島宮」あるいはその前身(ひょっとしたら磐座とか)があり、そういう聖なる場所に寺が建立されたのだと思う。
現在は合祀されている小島神社(小島八幡)と八幡雄島宮のどちらが「岩清水八幡」の別宮だったのか、諸本をみても何となく混乱しているように思う。ただし、素直にみれば八幡雄島宮のほうであろうし、だからこそ西大寺観音院に伝わる神名帳西大寺本の筆頭に記されているのだろうと思う。
前出の「岡山市史」によれば、明治初年には「禅光寺」には安住院(本坊)のほか、塔頭子院が10坊あったといい、略図も掲載されている。それによれば、中門から入った正面、本堂の東に「八幡」の記載がある。現在、中門は竜宮造りの「鐘楼門」となっているが、その正面には今も「鎮守堂」がある(写真)。
ただし、現在の本堂は、寛政12年(1800年)に移築されたもの。かつては多宝塔に上って行く途中、「古観音」とよばれる場所(歴代住職の墓地が並ぶ辺り)にあったとされており、本堂の移転により「八幡」も移転したと思われる。

瓶井山禅光寺安住院のHP:http://www.anjuin.com/

コラム14.備前48ヶ寺と会陽

2008-07-05 19:44:03 | Weblog
「コラム2.神名帳(西大寺本)について」(2008年5月22日付)記事で、なぜ西大寺観音院に神名帳が伝えられたのか、について書いた。要するに、有名な西大寺会陽(裸祭り)とは、春迎えの法要である「修正会」の結願の行事であり、その法要の重要な儀式の1つとして神名帳の読み上げを行う。これによって、国内の重要な神々を勧請して、五穀豊穣などを祈願するためである。(脱線するが、そういう目的だからか、水源や雨乞いの神が多いような気がする。)
備前48ヶ寺というのは、半ば伝説的な僧、報恩大師が阿弥陀如来の「四十八願」にちなんで、勅命により開山(ないし選定)した備前の48寺。そのすべてが会陽を行っていたわけではないし、他の社寺でも会陽を行っていた。しかし、次の通り、備前48ヶ寺のうちに会陽を行っていた寺が多いのも事実である。

<現在も会陽を行っている寺>金山寺、西大寺観音院(以上、岡山市)
<かつて会陽を行っていた寺>恩徳寺、安住院、満願寺(以上、岡山市)、弘法寺、静円寺(以上、瀬戸内市)、元恩寺(和気町)、円城寺(吉備中央町)

ところで、西大寺観音院以外の寺では「修正会」の際に神名帳の読み上げは行わなかったのだろうか?
密教儀式であるせいか、修法の詳細は不明なことが多い。

岡山県立図書館のHP(「会陽って何だろう」より):http://djv.libnet.pref.okayama.jp/mmhp/kyodo/kenmin/eyo/eyo-list.htm#bizen

コラム13.備前国五高山

2008-07-01 21:49:40 | Weblog
一応、備前国総社合祀128社全部について何かしら書いたので、個別の項目の中で少しずつ訂正、修正、補正していきたい(既に一部修正したところがあります。)。何かご存知のかたは、ご教示をお願いします。
さて、これからはペースダウンして、雑談的なことを少しずつ書くことにしたい。
「備前国五高山」という言い方があるらしい。

旧磐梨郡:熊山(標高508m)=熊山神社
旧磐梨郡:高星山(標高447m)=高星神社
旧赤坂郡:龍天山(標高490m)=布勢神社(赤磐市)旧跡、現・布勢巨神社
旧三野郡:金山(標高500m)=金山神社
旧津高郡:化気山(本宮山、標高583m)=化氣神社

備前にはあまり高い山はないが、山にはそれぞれ神が宿る。高い山になれば当然だろうが、低い山でも姿が良い山が多い。そうした自然が身近に残るところがなかなか素晴らしい。