シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

リゾート経営の変遷 (3)

2007年06月26日 | 経済あーだこーだ
“アルファリゾート・トマムの魅力” は、端的にいって何でしょう。 それは、冬のスキーと夏のゴルフではないかと思います。

ただし ゴルフ場としては、人口の多い札幌周辺のゴルフ場に比べて どのような優位性があるのか想像できません。 もう一つ 夏向けスポーツのテニスも、ゴルフ場と同じ状況にあり、わざわざ北海道中部まできてやる意味が見いだせないと、集客は難しいでしょうね。

温泉を引いてない代わりに作られたのかも知れませんが、人工波を伴った造波プール施設「VIZ スパハウス」も、半日もいると飽きてしまうもので、どう時間を潰したらいいのかよく分かりません。 訪問客は滞在期間中に二日は行かないでしょう。

けれど スキーは二〜三日は連続して行く滞在客が多いのではないでしょうか。 それ以外、周辺でメインのレジャーの合間にできるスポーツやイベントはなかったと記憶しています。
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以下の調査は、1999年3月時点の報告のため、現経営 星野リゾートについては記述がありません。
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「スキーリゾートの経営」(http://www.kawanisi.jp/ski/00.htm) から ...
1. アルファリゾート・トマムの誕生とその成長
2. アルファ・コーポレーションの経営破綻
3. リゾートの開発と経営
3-1. リゾート経営躓きの原因
アルファリゾート・トマムは、かってはもっとも成功したリゾート開発として賞賛を浴びていた。 それでは、なぜアルファリゾート・トマムは躓いたのであろうか。 最大の理由は、アルファ・コーポレーションの過大なリスクを取った戦略である (※追加3へ続く)。

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夕食が終わってしまうと、後は時間をどう使ったらいいのか、どの観光地でも悩むところですが、このトマムは特に山中で孤立しているために、ちょっと近くのイベント会場へなどと 繰り出しようがありません。

以前はコンサート企画などがあったようですが、開催されたのかどうか分かりません。 スポーツだけのトマム、これは観光地としてはかなり厳しいもので、多面的な楽しみを提供する長期滞在型施設としての魅力を打ち出さないと、回りにあるスキー・リゾートとの競争に負けてしまわないとも限りません。

ハコものは出来た。 __ 後は中に詰めるソフトです。

以上 (おわり)


以下は興味ある人のみ お読み下さい (文中にある図表7~9はウェブサイトでは見られませんでした)。

※追加3_ アルファリゾート・トマムは計画的なリゾートである。 まったく何もない占冠村トマム地区にスキーリゾートを創り上げることで 地域振興を図ろうとする占冠村と、世界的な大規模リゾートを創造しようと考えた民間企業の協動である。 そのプロジェクトを担っていたのは、関兵製麦グループの経営陣の一人であったホテルアルファ社長の若い関光策氏であった。

日本でも類を見ない 計画された大規模リゾートは、目新しさもあり集客も順調であった。 しかしながら、集客の増加以上に宿泊施設の収容能力の増加があった。 宿泊施設は投資額も大きく、高い宿泊室稼働率を確保しないと、投資回収が困難になる。 

リゾートの経営戦略として、宿泊施設の増設は高いリスクを伴うものである。 そのリスク管理がアルファ・コーポレーションに関して甘かったのではないかと思われる。 具体的な数値によって、アルファ・コーポレーションの戦略がリスキーかを検証してみたい。

1989年12月には地上36階、376部屋を持つ会員制ホテル「ザ・タワー I 」が開業する。 関兵製麦の所有する「ザ・タワー I 」の開業により、コンドミニアム形式の施設を含めてアルファリゾート・トマムの宿泊施設の収容人員はリゾート・オープン時の10倍にあたる 4,700人 強となった。

北海道経済部が調査する観光客入り込み数では、占冠村の89年12月から90年3月までのスキーシーズンの宿泊観光客数は 25万1661人 である。 そのうち、どれだけがアルファリゾート内に宿泊したかは分からないが、全員がアルファリゾートに宿泊したと仮定すると、1日あたりの宿泊者は 2,080人。 宿泊施設の稼働率は 44% 程度と推定される。

アルファリゾート内の宿泊は高いため、占冠村の他の宿泊施設を利用した観光客がいるであろうから、実際の稼働率は4割程度ではないか。 1年を通じてで計算すると、稼働率はもっと低くなる。「ザ・タワー」が開業してフルに稼動した90年度の占冠村の宿泊客は 49万8,301人 で、全員がアルファリゾート・トマム内で宿泊したと仮定しても、1日当たり 1,365人。 宿泊施設の稼働率は、3割を切ってしまう。

スキーリゾートだけあって 1月がもっとも宿泊人数が多いが、それでも前述の計算によれば6割程度の稼働率である。 もっとも、こうした稼働率には コンドミニアムや会員制のホテルが含まれているため、この稼働率をもってホテルアルファトマムの経営に関して言及はできないものの、少なくとも宿泊施設にはこの頃既に過剰感があったのではないかと考える。

このような宿泊室の稼動状況でありながら、ホテル・アルファ社長の関光策氏は 関兵製麦とは別にリゾートの拡張計画を立案する。 時はバブル経済の頂点の時期、右肩上がりの日本経済を国民の大多数が信じていた時期である。 将来的には経済成長がこうしたキャパシティーの過剰を解消するであろうと 野心家の関光策氏が予測し、いっそうの成長を求めて拡大路線を取ったとしてもおかしくはない。

そして、この時代は、余剰資金が株式市場や土地市場へ流入し、また、ゆとりある生活スタイル確立のために 官民あげてリゾートを支援する風潮にあった。 関光策氏の野心的リゾート拡張戦略を資金的に支援する経済状況にあったのだ。

また、関兵製麦グループ内における関光策氏の位置づけの変化、すなわち同族経営陣の中での権力に関して、関光策氏なんらかのアクションを起こそうと考えたのではないかと推測される。 関光策氏はアルファ・コーポレーションを新たに設立し、アルファリゾート・トマム内で積極的な設備投資を行い、自らの利益を拡大しようとしていく。

通常の一般向けホテルだと 資金回収が長期間にわたるため、アルファ・コーポレーションは会員権方式でホテル利用権を販売することにより、短期間で投資を回収しようとした。

前章で述べた ルスツリゾートを経営する加森観光も、同様に会員制ホテルやコンドミニアムを計画している。 しかしながら、加森観光は慎重に計画を評価し、何度も計画を変更している。 また、設備投資もキャッシュフローを重視し、アルファ・コーポレーションの経営戦略とは異なるものであった。

91年12月に地上32階スイートルーム100室を持つ会員制ホテル「ガリレア・タワースイートホテル・サウス」と、地上8階200室を持つ会員制ホテル「ヴィラ・スポルト I 」を、92年6月には地上32階100室を持つ会員制ホテル「ガリレア・タワースイートホテル・サウス」を、同年12月には地上6階187室の会員制ホテル「ヴィラ・マルシェ・ホテルアビチ」と地上4階108室の会員制ホテル「ヴィラ・スポルト II 」を次々と開業していく。

しかしながら、アルファ・コーポレーションにとって最大の不幸は、バブル経済が崩壊していく過程で、こうした宿泊施設が開業したことである。 会員権の販売は厳しくなり、借入金金利の上昇が収益を圧迫し、地価の下落は借入金の担保価値を低下させた。 アルファ・コーポレーションの資金繰りが一気に悪化したことは容易に予想される。

3-2. スキー場の分析
JR 北海道の鉄道が通っているので 交通手段は便利であるが、車で行こうとすると アルファリゾート・トマムスキー場は少し遠く不便な立地にあるかもしれない。 車を使うと 札幌から3時間、旭川から2時間強、新千歳空港から2時間半で、日帰りは避けたい距離である。

特に札幌からは山道を走る時間が多く、降雪の多い時期は車で行くのは厳しいかもしれない。 そうなると、ある程度滞在日数を取り、アルファリゾート・トマム内に宿泊することになる。 何もしないで自然の中でゆっくり休暇を楽しむというライフスタイルは、日本人の中ではあまり根づいておらず、それゆえに、リゾートは魅力あるレジャー施設を提供しなくてはならない。

アルファリゾート・トマムが宿泊施設の収容人員を増加させるのであれば、それに伴ってレジャー施設の集客力を高めていく必要がある。 占冠村の観光客入り込み数を見る限り、アルファリゾート・トマムは冬期間の入り込みが多く、ゴルフ場や造波プールを作っても スキーリゾートの性格が強かった。

(図表7)「アルファリゾート・トマムスキー場索道利用者数の推移」

(図表8)「アルファリゾート・トマムスキー場のコース図」

アルファリゾート・トマムスキー場の索道利用者数は、オープン以来順調に伸びていたが、バブル経済崩壊の影響で低下傾向に転じた (図表7)。 そして、96年度からは再び増加し、ピーク時と同程度の索道利用者数までに回復している。

しかしながら、宿泊施設で見たリゾートの規模からすれば、このスキー場の策道利用者数は少ないといえよう。 その理由は、他の大規模スキー場と比較して アルファリゾート・トマムスキー場が競争優位を構築しているとは言い難いからではないかと考える。

まず、積雪量がニセコ等と比較して少なく、シーズンが12月中旬から3月末ぐらいまでと短い。 そのため、スキーリゾートとしての稼動期間が少ないのである。 積雪量が少ないものの気温は低く、雪質の面では良いが、リフトで移動している時間が長いとつらいこともある。 また、コースは18と多いものの、コース幅がせまかったり、短いコースをつないだ感じで、あまり滑走の爽快感を感じられるものではない (図表8)。 特に山麓部分が緩やかで距離が長く つまらない。 ゲレンデもトマム山をピークにするゲレンデと、第4リフトと第10リフトのあるゲレンデが分離しており、コースの数の割には大きなスキー場という感じを覚えないのはもったいない。

策道1席あたりの利用者数 (97年度) は年間 8万4,000人 と 10万人 を割っており、効率は良いとはいえない。 もっとも利用頻度の高いと思われるゴンドラ以外は待ち時間も少なく、利用客からすれば快適である。 策道施設とコースの接続はいいが、JR トマム駅近くのインフォメーションセンターに下りてしまうと、リフトを利用して滑ってスキーセンターに戻れない欠点を持っていることを指摘しなくてはならない。

スキー場自体の拡張計画がストップしているため こうしたコース設計上の欠点があるのかもしれないが、第1リフトを延長するか、その上まで上れるリフトを設置すれば、利用客の利便性が高まるのに残念である。

スキー場の魅力に関して ニセコやルスツと比較して弱く、また、スキー場以外の造波プールの料金やレストランの値段も高いので、得られる効用に対して 遊ぶのにお金がかかる高級リゾートと感じられる。

それをアルファリゾート・トマム側でも認識していたのか、レジャーに関するハードの充実と共にソフト面での充実を積極的に行って、集客に努めている。 例えば、氷のドームや施設を飾るイルミネーションなどでエンタテイメント性は他のスキー場に対して高い。 また、スキーやスノーボードのオフピステツアーや、それ以外の各種の遊び方を提案しており、レジャーのソフト面での充実度は高い。

しかしながら、それでも宿泊施設の増加と比べれば、不十分であると考える。 レジャー施設を拡充して集客力を高める以上に、宿泊施設を増設して利益を確保しようとしたアルファ・コーポレーションの戦略は、リスクが高く、成功する可能性も低いものだったといえよう。

結果として、アルファ・コーポレーションの経営破綻が、アルファリゾート・トマム全体に悪影響を及ぼし、地元経済にも深刻なダメージを与えるものとなってしまった。

3-3. 地域社会へのリゾート効果と破綻の影響
アルファ・コーポレーションの経営破綻があったものの、アルファリゾート・トマムの誕生と成長は、地元占冠村に対して大きな貢献を果たしたと考えられる。

まず、北海道の中でも認知度の低かった占冠村は、アルファリゾート・トマムによって、一躍全国的にその名前を知られるようになった。 ただし、占冠よりはトマムで知られているかもしれない。 そうした認知度の高まりは地域社会に対して、好影響をもたらしたことは想像に難くない。 また、数字で表される効果としては、人口の過疎化に歯止めがかかり、91年の国勢調査では 2,721人 まで人口が増加している。

81年調査時と比較して、7割の増加となっている。 しかしながら、アルファ・コーポレーションの経営が傾き始めていた96年の調査では 2,104人 と減少しており、占冠村のアルファリゾート・トマムの雇用吸収力に対する依存の大きさを示している。

人口だけではない。 多種の税収、地方交付金、起債などによる占冠村の歳入に関しても、70年代は 10億円 に満たない規模であったのが、リゾート計画が動き始めて急増し、96年度には 40億9,900万円 にまで達している。 その後、アルファ・コーポレーションの固定資産税滞納などが響き、2割ぐらい歳入規模は縮小している。 商品販売額なども倍増以上となっており、アルファリゾート・トマムの誕生と成長により、占冠村の経済は発展したといって過言ではないであろう。

しかしながら、アルファ・コーポレーションの経営破綻から施設が占冠村所有になったことにより、年間3億円程度の固定資産税が徴収できなくなった。 この金額は村の歳入の 7~8% にあたるため、大きな痛手となっている。 通年の観光客入り込み数に関しても、日帰り客は90年度をピークにして 32% 減少の約 48万人 (98年度) へ、宿泊客はピークである92年度の約半分の 28万人 となっている (図表9)。

特に98年度はアルファ・コーポレーションの破綻によって宿泊施設が閉鎖されたため、前年と比較して 12万人 減少している。 冬期間に関しても前年度と比べ 98年度の日帰り客は約 10万人、宿泊客は約 5万人 減少しており、アルファ・コーポレーションの破綻の影響が現れている。

(図表9)「占冠村冬季観光客入り込みの推移」

占冠村の地域経済システムを一つの価値システムと見るならば、価値の産出源はアルファリゾート・トマムの価値連鎖である。 アルファ・コーポレーションが倒産したことで、占冠村の価値産出が低下した。 占冠村の価値システムとアルファ・コーポレーションの価値連鎖はタイトに連結されているため、アルファ・コーポレーションの影響が、占冠村の価値システムへ強く影響してしまったのだ。

アルファリゾート・トマムの事例は、地域社会の経済が過度に少数の民間企業に依存するリスクをあらわしていると考える。 不幸中の幸いなのが、過大なリスクを負ったリゾート拡大の戦略がアルファ・コーポレーション単独で行われ、結果としてリゾート開発と所有が2社により行われ、リゾート経営のリスクが分散されていたのである。

アルファ・コーポレーションの経営破綻があったにせよ、占冠村は投資以上の大きな果実を取ったと評価できるであろう。 今後、アルファリゾート・トマムは、スキーリゾート経営に関して コクドに次ぐ大きな力を持つ加森観光グループ中心の経営により持ち直していくであろう。

しかしながら、アルファリゾート・トマムスキー場はハードの面で他のスキー場と比較して魅力に乏しい。 それを付加価値のある施設、イベント、各種のサービスなどで補っている。 そのため、経営努力を他のスキーリゾート以上にしていかないと、競争優位の確立は難しく、楽観は許されないと考える (1999年3月調査)。

以上

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