原発問題

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『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで> ※49回目の紹介

2016-09-12 22:24:50 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。49回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第3章 復興が進まないワケ

 リンゴが腐るまで

「最後の最後まで、もうこれしか選択がないですねという段階になるまで物事が決まらない。日本の政治って、なんでもそうよね」

 福島に発つ前、会社の先輩記者がこんなことを言っていた。当時、原発事故から2年が経過していたが、東京で見聞きしている範囲では、原発事故の収束作業も復興も進んでいるようには思えなかった。

 なぜ、動きが遅いのか?原因について、先輩記者はそう指摘した。

「たぶん、あなたがこれから福島に行って東京に戻ってくるまでの間も、状況はあんまり変わらないんじゃない?」

放っておくと、こんな酷いことになる。早い段階で気づいてそう声を上げる人がいても、その声は聞こえなかったふりをされる。物事がどんどん悪化していき、声を上げる人が多くなり、最終的にもうこれ以上悪化させたらさすがにどうしようもない事態になる。そうなるまで、政治と行政の腰は上がらない。

 先輩記者は、こんな話も付け加えた。

 夫は福島県の出身で、毎年冬になると義父から福島県サンのリンゴが送られてくるという。原発事故後も変わらず送られてきて、今年も段ボールひとはこのリンゴが自宅に届いたそうだ。ダンボールには「このリンゴは放射性物質検査を受けており安全です」という福島県知事のメッセージが添えられていたが、当時子供がまだ小さく食べるのはためらわれた。だからといって、捨てるのもためらわれる。送られてきたリンゴは結局、段ボールに入れられたまま放置され、3月の終わりに近づき、ようやく1つ2つ、腐り始めたリンゴを処分した。

「結局、私も日本人だから、腐るのを待つのよね」

 ※「第3章 復興が進まないワケ「リンゴが腐るまで」」は次回に続く

2016/9/13(火)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


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