*『リンゴが腐るまで』著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。48回目の紹介
『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-
著者 笹子美奈子
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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介
第3章 復興が進まないワケ
官庁不在
(前回からの続き)
実際、原発被災自治体の首長の霞が関詣で、永田町への陳情回数は半端でなく多い。霞が関から福島県内に出向している官僚も、「福島県はいったい何をやっているのか。本来、県がもっと役割をはたして、広域的な取り組みをもっと進めるべきだ。一つの町で提示された課題を、町と県が連携して対応スキームを作り、それを他町に水平的に適用すればよい。でも、それができないから、県は永遠の中間管理職と言われるのだ」と指摘する。
福島県が広域的な取り組みを積極的に進めない理由は、原発事故後、「余計な仕事を持ち込んでくるな」空気が県庁内にあることも災いしていると、複数の県職員が指摘する。一つには、原発被災自治体と同様、県庁でも県庁でも原発事故後、業務が増え、マンパワーが足りないという事情がある。
だが、それだけでなく、原発事故直後の国とのやり取りなどをめぐって、福島県は原発被災自治体やマスコミから多くの批判を受け、県幹部は及び腰になったという。職員から持ち上がった企画について、「どうしても県が幹部がやらなければならない案件なのか。県でなければできないことなのかという基準でスクリーニングされるようになり、職員のモチベーションも下がった」という。庁内全体に停滞ムードが漂っている。
※次回は「第3章 復興が進まないワケ「リンゴが腐るまで」」
2016/9/12(月)22:00に投稿予定です。