原発問題

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『除染が続く福島での悲劇』<リンゴが腐るまで ~アメ玉の限界~> ※15回目の紹介

2016-07-06 22:14:04 | 【除染が続く福島での悲劇】

*『リンゴが腐るまで著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。15回目の紹介

『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-

著者 笹子美奈子

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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介

第1章 オフサイトで起きていること

アメ玉の限界

(前回からの続き)

 富岡町議会は、こんな声明を出している。

「30年後に県外に移設される中間貯蔵施設ではない。永久的にその場に残る最終処分場なのだ。(略)計算上は100年後も安心して暮らすことができると国は言う。 ただ私たち富岡町民は、その計算された安全に一度裏切られている。起こるはずのないことが起こったときの怖さを誰よりも肌で案じている私たちが、もう一度計算された安全を信じることができるのか」

 2015年6月、国は国有化に方針を転換。富岡町と隣接する樽葉町に福島県が計100億円の交付金を拠出することで12月、町は建設を受け入れた。建設の要請から約2年が過ぎていた。

 指定廃棄物は、福島県を含め12都道府県で発生している。このうち、発生量が比較的多い宮城、茨城、栃木、群馬、千葉県に、国は処分場を建設する計画だ。2014年4月、5県に対して計50億円の交付金を拠出する方針も示した。だが、福島県以外で建設が決まったところはない。宮城県では栗原市、大和町、加美町の3か所が建設候補地とされ、環境省が地元との交渉を続けているが、地元から強い反発に遭い、計画は頓挫している。

 なぜここに造らなければならないのか。

 福島県の場合、理屈がはっきりしている。放射性廃棄物は県内の広い地域で発生しているが、福島第一原発に近い地域により多くの放射性廃棄物が山積みしている。輸送の効率を考えると、発生量の多い地域に建設せざるを得ないという理屈が存在する。建設が進まないと福島県全体の復興が進まないという危機感も、地元が苦渋の決断に至った背景にある。だが、他県の場合、建設候補地とされた自治体によって、計画は青天の霹靂だ。

 交付金という従来のアメ玉だけで計画を進めることができるのか。先は見えていない。

 ※次回は「第2章 原発と生計「汚染水タンクの森」

2016/7/7(木)22:00に投稿予定です。 

リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


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