*『世界が見た福島原発災害』著者:大沼安史
「第15章 校庭に原発が来た!」を複数回に分け紹介します。5回目の紹介
福島原発災害は、東電、原子力安全・保安院など政府機関、テレビ・新聞による大本営発表、御用学者の楽観論評で、真実を隠され、国民は欺かれている。事実 上の報道管制がしかれているのだ。「いま直ちに影響はない」を信じていたら、自らのいのちと子供たちのいのち、そして未来のいのちまで危険に曝されること になってしまう。
本書は、福島原発災害を伝える海外メディアを追い、政府・マスコミの情報操作を暴き、事故と被曝の全貌と真実に迫る。
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**『世界が見た福島原発災害』著書 「第15章 校庭に原発が来た!」の紹介
前回の話:『世界が見た福島原発災害』校庭に原発が来た! ※4回目の紹介
大本営発表を覆す脱原発の波
さてこの日本政府に対する徹底した「見切り」は、「フクシマ」における事態の進行とともに、国内でもかなり急速に広がったように思われる。これはもう言わずもがなのことだが、政府がマスコミを動員し事故の過小化、事態の沈静化を図る中で、御用マスコミが垂れ流す「政府公式見解」プロパガンダとはまったく違ったレベルで、情報の拡散・共有が大規模に行われた。これは日本の歴史上初の、注目すべき出来事である。
「安全です」の政府キャンペーンを跳ね返す「対抗メディア」が上意下達のピラミッドではなくネットワークとして形成され、政府の公式見解およびその大本営発表を下から突き崩して行ったことは、事実として確認しておかねばならない。
情報発信・共有の連帯が全国的かつ国際的になったのは、もちろん、原発事故のマグニチュードが途方もないものだからだ。核の惨事は、ひとつの国をかんたんに滅ぼしかねない。全人類的な脅威にもなり得る。人々はだから、広く大きく手をつなぎ、立ち上がった。個々の生活空間を超えて情報を交換し、組織に動員されるのではなく、「自分の気持ち」で立ち上がり、つながり合った。
ドイツでは「フクシマは警告する」を合言葉に、事故発生わずか3日後の3月14日に全国11万人規模のデモが行われ、同月26日には20万人規模のデモに拡大、4月24日には北ドイツで120キロ離れた2つの原発を「人間の鎖」でつなぐ12万人参加の抗議行動が行われている。
原発が電力の8割を供給する世界第2の原発大国・フランスでも、3月13日から各地では反原発デモが始まり、20日には1万人規模の集会が行われるなど、ここでも「脱原発」の動きが出ている。
米国ではニューヨークに近い「インディアン・ポイント原発」など全米各地で抗議行動が行われているが、日本の主流メディアではほとんど伝えられていないのが現状だ。
アジアでは、「フクシマ」の被災者2人も参加して1万数千人規模のデモが4月30日に台湾で行われたが、ここでは「フクシマ」に触発されて広がった抗議デモを受け、原発の運転許可が凍結されたインドの事例を見ておこう。
ウォールストリート・ジャーナルによると、インド政府の環境省は4月28日、南部タミルナド州のベンガル湾沿岸に計画中の「グダンクラム原発プロジェクト」について、「フクシマ」の惨状と反原発運動の高まりを受け、同プロジェクトで建設される原子炉4機の着工許可を見送った。
環境省に設置された検討委員会は、原発の冷却水を海に放流することについて「海洋生物への悪影響などさまざまな環境問題を引き起こす」ので容認できない、と言明した。
国語学社の故・大野普さんによれば、私達の日本語のルーツは南インドのタミル語だそうだ。もしかしたらタミルナドのタミルの人々は、「フクシマ」という音の響きに「反原発」への思いを掻き立てられたのではないか?
※続き「第15章 校庭に原発が来た!」は、6/29(月)22:00に投稿予定です。