*『東京ブラックアウト』著者:若杉冽
「第1章 避難計画の罠」(「プロローグ」含む)を複数回に分け紹介します。1回目の紹介
( Amazon カスタマーレビュー )から
恐ろしい本です。小説という体裁はとっていますが、帯に「95%ノンフィクション」とあるように、限りなく現実に近い話でしょう。これを読んでも、原発再稼働に賛成と言えるでしょうか。一人でも多くの国民に読んでほしい本です。
作中に登場する資源エネルギー庁次長の日村直史は、経産官僚の今井尚哉氏だと、国会議員の河野太郎氏がTwitterで言及しています。現在、安倍首相の政務秘書官を務めている人物です。
( 「東京ブラックアウト」)から
「バ、バカ野郎!おまえは知っているのか? かつて新潟県の泉田知事が、たった400人を対象に避難訓練をしただけでも、その地域には大渋滞が起こったんだぞ!・・・あと数時間で、東京の都市機能は失われるっ。いいか、これは命令だ・・・」
・・・玲子は絶句した。いつも冷静でクールな夫が、15年の結婚生活で初めて見せる取り乱しぶりだったからだ。
過去に紹介した記事(【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧(45) )から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」
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**『東京ブラックアウト』著書 「プロローグ」⇒「第1章 避難計画の罠」の紹介
プロローグ
毎日新聞(2011年12月24日・夕刊一面)
「東日本大震災:福島第一原発事故 最悪『170キロ圏強制移住』 原子力委員長、前首相に3月試算」
東京電力福島第一原発事故から2週間後の3月25日、菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が「最悪シナリオ」を作成し、菅氏に提出していたことが複数の関係者への取材でわかった。さらなる水素爆発や使用済み核燃料プールの燃料融解が起きた場合、原発から半径170キロ圏内が旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の強制移住地域の汚染レベルになると試算していた。
近藤氏が作成したのはA4版約20ページ。第一原発は、全電源喪失で冷却機能が失われ、1,3,4号機で相次いで水素爆発が起き、2号機も炉心融解で放射性物質が放出されていた。当時、冷却作業は外部からの注水に頼り、特に懸念されたのが1535本(原子炉2基分相当)の燃料を保管する4号機の使用済み核燃料プールだった。
最悪シナリオは、1~3号機のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇。余震も続いて冷却作業が長期間できなくなり、4号機プールの核燃料が全て溶解したと仮定した。原発から半径170キロ圏内で、土壌中の放射性セシウムが1平方メートルあたり148万ベクレル以上というチェルノブイリ事故の強制移住基準に達すると試算。東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同250キロの範囲が、避難が必要な程度に汚染されると推定した。
近藤氏は「最悪自体を想定したことで、冷却機能の多重化などの対策につながったと聞いている」と話した。菅氏は9月、毎日新聞の取材に「放射性物質が放出される事態に手をこまねいていれば、(原発から)100キロ、200キロ、300キロの範囲から全部(住民が)出なければならなくなる」と述べており、近藤氏のシナリオも根拠となったとみられる。
読売新聞(2014年9月12日・朝刊13面)
「原発事故調書の要旨」
細野豪志首相補佐官「恐れたのは公表することでこのシナリオが現実になること。自主移転容認区域が250キロまで含むと書かれ、これは東京を含む。(中略)東京からの避難が優先されれば福島の事故対応がおろそかになり、4号機のプールが露出することになると考えた。それは絶対にしてはならないので、この情報をみたときは非常に迷ったが、出すべきではないと考えた」
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年の瀬は典型的な冬型の気圧配置となった。シベリアから張り出した低気圧が日本海上空を通過する際に異常に発達し、「爆弾低気圧」となった。急激な天候の変化が、日本列島を襲った。
この低気圧は、強風とともに、日本海側の山沿いに5メートル超もの積雪をもたらした。沿海部でも積雪は50センチメートルを超えていた。
新崎原子力発電所の高台にある非常用電源車の車庫棟の入口も50センチメートルの積雪で埋まり、大晦日の夕刻からの厳しい冷え込みで表面が硬化していた。
「関東地方で大規模な停電が発生、原因は調査中」ーこのテロップがNHKの「ゆく年くる年」の放送中に流れたのは、新年を迎える数分前だった。
停電が起きたのは関東地方の50万世帯・・・しかし停電を食らった世帯ではテレビでテロップを確認することもできず、不意の停電に不吉な予感を覚えはしたが、多くの人はそのまま床についた・・・。
※続き「第1章 避難計画の罠」(「プロローグ」含む)は、2/4(水)22:00に投稿予定です。