*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。34回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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<過去に紹介した記事>
【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり
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【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※34回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第17章 再稼動」 を紹介-
前回の話:【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※33回目の紹介
-特筆すべきは、公表された新しい規制基準は、すべて原発の敷地内のことに限られていたことである。
原子力規制委員会と原子力規制庁が発足した際に、原子力発電所以外の安全規制の権限、たとえば原発以外の発電所や送電施設についての安全規制の権限は、すべて経済産業省に残された。
チョンボがあったのは原発なのだから、原発以外の権限までをみすみす取り上げられる理由は経産省にはない。その結果、原子力発電所に直結する送電施設の安全性については、原子力気勢委員会が規制基準を見直すことにならなかった。
周辺住民の避難計画も再稼動審査の前提要件にはならなかった。アメリカでは、スリーマイル島原発事故のあと、住民の避難計画が具体的に確立して始めて、原発の認可・運転が認められるが、政府の姿勢には天と地ほどの差がある。
新しい規制基準の公表に合わせて、電力会社から再稼動の申請が原子力規制委員会に提出された。第一弾は、仙台1・2号機、戸鞠1・2・3号機、高花3・4号機、大井3・4号機、井形3号機であった。
再稼動に至るプロセスは、①電力会社から再稼動の申請が原子力規制委員会になされ、②原子力規制委員会が電力会社の申請内容が規制基準に適合していることを認めたうえで、③立地自治体の同意があれば最終的に国が原発の再稼動を判断することになっている。
どの知事だって、全国で先頭を切って再稼動を認めるのはいやだ。立地県の知事からそういう意向が内々に示され、資源エネルギー庁次長の日村直史が、電力会社の申請のタイミングも横並びを図るよう各電力会社と調整した結果だった。
「今のところ、うまくいってるなあ」
と、商工族のドン、赤沢浩一議員が日村に電話を入れてきた。
「伊豆田知事もうまく葬り去ってくれた。ご苦労さん」
赤沢は上機嫌だった。
「いえ、総理を引っ張り出してくださったのは、赤沢先生ですから。私はただの介添役に過ぎません」
日村は腕枕をしてやっていた瑠子の頭の下から腕を自由にして、自分の携帯に答えている。六本木のホテル、ザ・リッツ・カールトン東京の48階の部屋だ。
「・・・まぁ、伊豆田のような頭のおかしい奴は別として、立地県の知事も電力会社も、結局は、『赤信号、みんなで渡れば怖くない』ってことですから。電力会社にとっては、核のゴミや原発の後始末といったことに頬かむりさえすれば、原発はジャラジャラ金が流れてくる現金製造機みたいなもんです」
日村は窓の外に目をやった。東京タワーが、むしろ目線より下に見える。日本を牛耳っているのは俺だ・・・自分の不敵な笑いが窓に映る。
瑠子の美しくくびれたウエストをもう片方の腕で抱き寄せる。20大前半の女が甘美な声を漏らしたので、あわてて日村は携帯を手で覆う。
「・・・知事にとっても、電源立地地域対策交付金のカネを落としてほしい連中が地元にはワンサカいるんですから、原発はカネと票の製造機のようなもんです」
自分にとっても原発はカネと力を生む装置だ-。
今、自分の隣で美しい肢体を惜しみなく晒しているこの女は銀座のホステス見習いだが、日村がザ・リッツ・カールトンに誘ってみると、店がはねた後に、ためらいもなくシーリー社製の高級ベッドに転がり込むようになっていた。
このホテルはもともと小島の紹介で、日村はデイユースの扱いということで、空室さえあれば、わずか1万円で利用することができていた。霞ヶ関や永田町からは距離があるので、顔見知りと出くわす可能性は少ない。
瑠子との関係でも、ホテルとの関係でも、なんとなく裏で関東電力が補填していることは想像できなくはなかったが、そこをギリギリ詰めて清貧な生活を選ぶよりも、高級キャリア官僚という立場に見合った生活を当然のように選択した。
表向きは、瑠子との関係も自由恋愛であるし、ホテルも合法的なデイユースなのだ。ホテルだって、カネの力にあかした成金の連中が集まるよりも、品のいい自分に利用してもらったほうが客層がよくなるだろう。密室からだといって一休ドットコムで売りさばくよりも、ホテルからみて望ましい客にデイユース名目で来てもらうほうが合理的だ。
日村との関係を作ればG8サミットのような政府間の大きな国際会議を誘致できるかもしれないという打算もホテル側にはあるだろう。お互いウィン・ウィンの関係だ。
※8/18から「第17章 再稼動」の紹介中です。(毎日 21:00ぐらい)
・・・6000ページ以上もある申請書類、どうやって数週間で審査できるのか・・・日本での審査は国のお墨付きを得た、という儀式にすぎなかった・・・
<過去に紹介した記事>
【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり