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2012 12月号 から一部紹介
ピカソから金塊、高級ワインまで・・・
超富裕層が財を隠す場所「フリーポート」ってなんだ?
スイスに投資家たちが美術品を保管するのに重宝している倉庫がある。
その所蔵数は年々増え続け、いまでは世界有数の美術館ができるほどだとか・・・。
from The New York Times ニューヨーク・タイムズ
USA Text by David Segal
それは奇妙な仕事だった。
毎日誰かが保管室を開け、彼が中に入ると鍵を閉めてしまう。
昼食の時間になると出してもらえて、
食事がすむとまた保管室の中に閉じ込められる。
帰る時間になると再び出してもらえる、といった具合だ。
シモン・スチュデールのキャリアの始まりはそんな具合だった。
場所は国際銀行と物価の高さで有名なスイスのジュネーブ中心部から
それほど遠くない倉庫の地下保管室だった。
彼の仕事は、このスペースを借りていたスイス屈指の有名ギャラリーの
オーナーのために所蔵目録を作成することだった。
「美術品の寸法や状態をチェックしたり、サインを探したり、
作品が適切に査定されるようにしました」
それが4ヶ月も続いたというから、さぞかし退屈だったと思うが、
実際はそんなことはなかった。
彼が数えたり評価したりしたのはパブロ・ピカソの作品だったのだ。
何百、いや何千のスケッチ、絵画、彫刻を収めた棚の列。
スチューデルはここで初めて、フリーポートという倉庫施設に
驚異的な財宝が詰まっていることを垣間見たのだった
(2度目にそのことに気づいたのは、隣の金庫室で男が
山のような金の延べ棒を数えていることを知ったときだ)。
「隣の倉庫になにが入っているかもわからず、
ある日たまたまドアが開いているところに行き当たって、
覗いてみてびっくりする。フリーポートとはそういう場所なんです」
こう語るスチュデールは、現在、自分のギャラリーを経営している。
さまざまな筋によれば、今日フリーポートに保管されている
財宝の数は過去最高になっているという。
この意外なほど殺風景な倉庫郡は、美術商やコレクターが
もっとも貴重な作品の保管場所として真っ先に選ぶ場所なのだ。
フリーポートの魅力は厳重なセキュリティと税の優遇措置だ。
物品がここに保管されている限り、多くの国では5-15%となっている
関税を払わなくていいのだ。
敷地内で作品が売れた場合、取引税がかかることもない。
(中略)
このようなフリーポートが現在世界中で建設中だ。
シンガポールではすでに2年前にオープンしたフリーポートに、
アジアのコレクターたちが白いリムジンで乗りつけている。
ルクセンブルクや北京でも数年以内にオープンするだろう。
(クーリエ・ジャポン記事の紹介おわり)