24日の産経ワシントン発は、ハノイで行われたAPEC/地域フォーラム閣僚会議で、米国クリントン国務長官が南シナ海の領有権問題に関心がある、そして他国間協議を支持することを表明した、とある。米中の新たな火種となることは間違いないが、これまで中国の横暴に怯えていた地域の小国は小躍りしただろう。東シナ海に問題を抱える日本にとっても朗報であるし、これを利用しないという方はない。もっとも、その場で岡田外務大臣から日本も米国の立場を支持するという発言はなかったようであるのが、とても残念である。
アメリカは時に日本に味方するとも取れる発言をすることが、これまでも何度かあるのだが、日本はそれを敏感に感じ取って日本の外交に生かしてきていない。ブッシュの時代ではあるが、ロシアの戦勝記念式典に行く道すがらのバルト三国訪問時に、ブッシュはバルト三国を当時のソ連に渡したヤルタ協定は間違いで有った、と発言している。小泉はその式典に参加していながら、そのあとこの発言を利用した形跡はない。なぜ、利用するべきか?北方4島をソ連が占領した経緯はヤルタ協定に有るからである。
今回の産経の記事をより細かく説明しているのが宮崎正弘氏のメルマガである。以下に掲載する。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成22年(2010)7月24日(土曜日)
通巻3029号
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米国、南シナ海の領有論争に突如、参入してきた
APEC「地域フォーラム」(ARF)でクリントン国務長官が「米国も関心」
日本のマスコミはハノイで開催された「APEC・地域フォーラム閣僚会議」(ARF)で、韓国哨戒艦撃沈事件での北朝鮮制裁をめぐり、北は「あれは創作劇」とすっとぼけ、日米韓は北朝鮮制裁を強化、中国はそらっとぼけて制裁にもっとも消極的という概括を報じた。
「北朝鮮は国際社会の懸念を受け止めるべきだ」(岡田外相)
「半島が爆発前夜の様相となった責任を負うべき」(ユ・ミョンファン韓国外相)
対して朴宣春・北朝鮮外層は「哨戒艦撃沈は(米韓の)創作劇であり、北朝鮮批判を謝罪せよ」と開き直り、国際社会を唖然とさせる。
中国はまったく態度不鮮明のまま、北朝鮮を非難もせず、むしろ米韓軍事演習を非難した。
増長した傲岸不遜な態度はさらに続く。
南シナ海には二百余の島々があるが、代表的な南沙(スプラトリー)、西砂(パラセル)諸島には原油、ガスの埋蔵が確認されて以来、海軍力を凄まじい勢いで増強してきた中国は勝手にこれらの海域を自国領に編入して軍隊を派遣し、白昼堂々と「侵略」した。
このためベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、台湾と主権をめぐる衝突を繰り返し、1988年には中越戦争の海上戦が行われた。ベトナムが敗退し、南沙諸島は強圧的に中国が軍事占領を続けたままになった。
ARF会場はハノイである。いわば侵略した相手国で、中国は「南シナ海は中国の領海だ」と長々の演説をはじめた(2010年7月23日)。
▲自由、人権、ダライラマ、グーグル問題以来、米国の中国批判は久々
無法とも言える傲慢さに堪忍袋の緒を切った米国クリントン国務長官は、「南シナ海には米国も関心がある」と爆弾発言を展開した。
「主権に関しての中核の問題」とするクリントンは「国際法の遵守」を楯に名指しこそしないまでも正面から中国を批判したのだ。
人権、ダライラマ問題、グーグル以来、米国の中国批判は久々である。
「『南シナ海の諸島の領有権をめぐる、ややこしい論争に米国は介入する用意がある』と発言したことは米中の潜在的摩擦の新しい幕開けである」とニューヨーク・タイムズ(7月24日付け)は大書した。
アジア加盟国は、この米国の介入発言に小躍りした。
ところが、日本は尖閣諸島の領有を主張する絶好の機会でもあったのに、岡田外相がどう反応したか報道がない。