JINCHAN'S CAFE

My essay,My life
エッセイを書き続けることが、私のライフワーク

ミューズの晩餐 My essay,My life -青春の門-

2011年12月20日 12時09分20秒 | My essay,My life
2010.12.29

43歳の誕生日。

じんちゃんは一人、大阪の某夜景スポットにおりました。


駅近のささやかな名所であるこのビルには、映画館あり高層階に広がる庭園あり、殊に夕方から絶好のロケーションとなって、ビルそのものの魅力が、燦然と輝き始めるのです。

ちょっとちょっと、じんちゃん「寂し過ぎるぞ~~~」
そんなお仲間さんの声もあったのだけどね。

夫や娘の身辺の心配ごとは、落ち着く所へ落ち着いたものの、今度はクリスマス。 心機一転、家族ができるだけ明るい心持ちで過ごせるようなんて頑張っていたら、くたびれてしもた。夫がいつ明けるともわからぬ休みへ突入する一方で、娘は可愛らしいお客様たちを連れてきてパーティーや。年の瀬の行事を片付けた後、とにかく一息つきたかった…

っと、この記述へたどり着くまでに一年がかりですよ。渦中にいた時、どうしてたんかな〜思て見返したら、案の定よどんでた。そら時間かかるはずだぁ(笑)。さて今回は、そんなあれやこれやの裏側で進行していた、思春期の娘のお話。愛知から兵庫の片田舎へやってきた、去年の春にまで遡ります。

母と子どもたちと私の暮らしが始まり、しばらく経ったある日、娘から 「お母さん、ちょっと」 声をかけられた。「何?」「2階へ来てくれる?」どうやら、人気のないところで話をしたいらしい。転校したばかりで、新しい環境へ慣れていかなくてはならない時期、初日から意気投合した女の子もいたけれど、まぁいろいろあるんやろなと。娘の心を量りつつ、小机挟んで向かい合った。

「んーっと…」娘はモジモジしていたが、やがて意を決し「今日コクられた」残りの言葉を一気に吐き出し、にっこり笑った。あらっ、結構可愛いやないの♪(ちょっちブル顔なもんで)相手はどんな子やろ。しかしチャレンジャーやな~。にしてもはやっ。んでもって小沢一郎にコクるて!頭の中で、さまざまな所感が一気に渦巻く。しかるに、その奥底に横たわっているのは、暖かく柔らかな感情。ああ、カグワシイ香りやわぁ。

兄にしろ、この妹にしろ、幼き頃から無邪気にちょ色気ネタを提供してきたものの、自身の恋バナにはまるで縁がなく…。母は、いささか味気ない思いをしていたのよ。「どうなの?」時折こちらが水を向けても、「あっしにはかかわりねぇことで」木枯し紋次郎みたく素っ気ない反応があるばかり。つられてこちらも、歌い出したくなるわぃ。どーこかでぇ だーれかが きっと待っていてくれる〜♪そーか、やはり待っていたか。だれかが風の中で。

「お兄ちゃんとお父さんには内緒だよ。」ちょっと真顔になって、娘は言った。そりゃそうだ。日頃からかっている妹に、先を越されたとあっては、兄貴も面目なかろう。しかし父さんもダメか~(笑)。こうして密やかに、女子の世界が形成されてゆくのであーる。

娘は、ぽつぽつと話し始めた。「休み時間にね、静かな所へ連れて行かれて」「うんうん」「好きですって」「ほうほう」「えーっ!?って、びっくりした。」「あはは。そりゃびっくりするわね。」突然、雷に打たれたようなものなんだから。「で、どうしたの?」

「しばらく考えて、やっぱり聞かなかったことにするねって言ったら」「何て答えた?」「うん。そうしてなって。」お互い笑顔で締め括ったらしい。「それで終わっちゃったの?」「だって…まだ早い。」「そっかー」「付き合える訳でもなし。」彼女なりに、一生懸命導きだした答えなのだろう。意外と現実的な思考回路であることに、いささか驚いた。「お母さんは、どう思う?」キターっ。

「お母さんは、そんな経験ないからなぁ。」胸より薄い過去の恋バナ帳をペラっと紐解いてみるものの、該当項目が見当たらない。大体、卒業の折に回したサイン帳で、クラスの某男子から返ってきたメッセージが 「天ザル覚悟しろ!」。兄貴どころか母も面目なーし。それでも、自分なりの考えは伝えることにした。

「まだ早いと思う気持ちは、大切にしていたらどうかな。周囲に流される必要はないよ。それから…」 私にできる、数少ないアドバイスを口にする。「クラスの子には言わない方がいい。仲の良い友だちだって、受け取り方は様々だからね。」困るのは、勝手な妄想で現実をふくらませた挙句、やっかまれる事態。面白がって囃し立てる男子も鬱陶しいが、心の中で不機嫌の種をじっとり増殖させる女子も大概で。微笑ましく眺めてくれる人ばっかじゃないからねぇ。

「にしても楽しい思い出やね。」「うふふ」「どんな子?」「勉強ができるタイプじゃないよ。」「スポーツは?」「どうかなーよくわかんない。」「ええ子やん」「そうかなぁ~」「ええ子やて!」母さんはわかる。’うちの娘を好きになる子に、悪人はいない’ (←お仲間さんの浜省ファンの法則をパクってもた)親バカやな~

その夜、愛知に残って引越し作業をしている夫に、こっそりメールを打った。「コクられたらしいよー♪花ちゃん。」「本当?」「相手の子、マニアやな。そうに違いない。」「あはは。おめでとうって言っといて。」「それが、まだ早い言うてるねん。」「へぇ~そうか」「あの子の準備ができた頃に、好きです言うてくれる人おるんかしらん。」「まぁ、いろいろ相談にのってやってよ。」夫とメールでこれだけ語り合ったのは、後にも先にもこの時だけである。ぶはっ。

まもなく家族そろっての生活が始まり、それから程なく授業参観の案内が届いた。むふふと内心ほくそ笑んだのは、’風の中の君’ (ふうくんと名付けるヨ)が見られるから。ワクワクしながら当日を迎え、夫と二人学校へ。どの子やろ〜教室の後ろから、一人一人の生徒を目で追っていく。おばちゃん先生頼むで。わかるように当ててや。振り返った娘に、小さく手を振り微笑んでいると、聞き覚えのある名前が耳に入る。ふうくんだ!グルリ見回した先に、立ち上がった男の子は… 優しい目をした、丸顔の、可愛らしい少年だった。

学年も半ばにさしかかり、緊張感の薄れる頃になると、実像が見えてくるのかしらん。娘は、ちょっぴり口をとがらせながら、ふうくんの話をするようになった。「今日は腹を立てて先生に物を投げつけた。最近いけないことばっかりしてるよ。」 気の強い女の子をつついて、泣かせてしまった日もあった。それから…「ふうくん、いろんな女の子にコクって、みんなに断られてるの。」「へぇ~」「私の所へ来たのも、転校してきて何も知らないと思ったからじゃない?」

ありゃりゃ とんだ裏話が露見してしもたんやねぇ。けれども不思議と、悪い印象には傾かなかった。それでもメゲずにアタックし続ける。見上げたもんやないか。告白時の娘との遣り取りから、一種の清々しさを感じていた私は、彼をチャラ男だと決め付ける気になれなかったのだ。それに… 彼が泣かせた女の子は、たまたま娘にイジワルしていた生徒だったのよね。にひっ。

そんな時、恋なんてまだ早いと言っていた娘の心を、すこーしだけほぐしたモノがあった。私がベッドの上へ放り出していた、中谷彰宏のエッセイである。どういう訳か、ふとその本を手に取った娘は、パラリとページをめくり視線を落とすと、「この字は、何て読むの?」目についた言葉を指でなぞり始めた。

「ぐたいてき」「ぐたいてきで、ちいさい、ほんのささいなことから… あ、これはわかるよ。こいでしょう?こいがうまれる。」続く本文を読もうとして、早くも躓く。「お母さん、この字…」「れんあい」「れんあいで、いちばんハッピーなところは、ほんのささいなことにあります。れんあいを… お母さん」「きわめる」「きわめるには、ディテールをきわめることです。」「ちょっと難しいかな。」初めて開く、大人の本なのだ。『ふたりのロッテ』や 『オズの魔法使い』のようにはいかない。「まずは、目次だけ読んでみたら?」

こうして、思いも寄らぬ不思議なレッスンが始まった。新たに出会う漢字や慣れない熟語に戸惑いながらも、娘は10ページあった目次を、読みあげていった。「イケるやん。」「本当?」「大丈夫。どんどん読みなさい。」各タイトルを追っていくだけでも結構なボリュームなのだが、ひと通り目を通すと、内容がほぼ分かる仕組み。恋にまつわる中谷語録を、娘は面白いと言った。

「お母さんも大好き。書いてあることは、至ってシンプル。ああ、その通りやなって、ストンと納得する。で、前向きな気持ちになる。」元来そういった傾向じゃないからこそ、手にしているのだ。どうせ後ろ向きよ。サクサク進めないわよ。ぐちゅぐちゅした感情を持て余してるわよ。

季節が変り、冬になった。クリスマスの足音が近づいてきたある日。所用で外出していた私が帰宅すると、いつになく弾んだ母の声が、耳に飛び込んできた。「今日は珍しいお客様がきたわ。」「誰よ」「男の子」「ふぅん」「明るい声でねぇ、こんにちはぁ!言うて、メグちゃんと一緒にな。」

メグちゃんは、娘がこの地へやって来て、一番に仲良くなった友だちだ。クラシックバレエをたしなむ彼女は、存在しているだけでキラキラとオーラを放つ。大人びた派手な造りの顔に、クルクルとカールした髪、背が高く、スタイルもよく、田舎の小学校では、バリバリ目立つタイプなのだ。当然、そうした個性は収まり切らずにいる。女子の中にちんまりと存在してるガラじゃないからなー。そうか。男子を連れてきたか。

「男の子が来るなんて初めてね。同じクラスなの?」ひょっとして、ふうくんかしら…。娘は、こちらの心を知ってか知らずか、にっと笑い「コウちゃん」。「あら、新しい名前ね。」「楽しい子やで~。ホンマ屈託のない。うわ~ここの家、床暖房入ってるー。 あったかいわぁ言うてな。」 気合を入れたリフォーム結果に賞賛の言葉をもらい、母はご満悦であった。

こうして、木枯し巻いかけていた娘の心は、周囲の環境と共に、少しずつ回復していった。転機となったのは、「一人でメソメソしてないで、先生とこ行こ!」ふうくんの言葉だったそうである。戸惑う娘を引っ張っていって、事情を話す場にも立ち合ってくれたというから、やっぱええヤツやん。

いろいろ振り返ると、大変だったと感じるあの頃の中にも、不思議な明るさがあったのだなぁと。きっとこういうことなのだろうと思います。’ほんのささいなことに、人生の幸せがある’ ですよね? 中谷さん。😉


http://www.youtube.com/watch?v=dhkU2-I-EPs


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