JINCHAN'S CAFE

My essay,My life
エッセイを書き続けることが、私のライフワーク

クローズド・ノート

2013年01月11日 09時33分36秒 | 家族

夜更けの家で…

NHKの『団塊スタイル』を見ていたんですよ。ったく、こんなことを言ってるから、お仲間さんに’じんちゃん、本当に40代?’なんて疑惑をもたれるんだ。MY BIRTHDAYへと日付が変わろうという頃、眺めていたのが、この番組て。サビシ~ぃ!が、興味があったんだから仕方がない。

その日のテーマはね、エンディングノート。一年に渡り放送された中から、アンコールに応えての再登場というコトで、それだけ注目度の高い内容であったと。もしもの時に備え、家族への希望や気持ちを書き留めておくエンディングノートは、いつ何が起こってもおかしくない不安定な時代を反映しているのかな… 30、40代の関心をも集めているそうで。番組は、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんをゲストに、人生の終わりを見据えつつ、現在の自分のあり方を振り返る構成となっていました。(関係ないが司会の風吹ジュンの、あの滴るような色気は何なんだ。正に団塊の世代に輝く星ネ。)

父を送り、叔父を送り、その遺品整理を手掛ける羽目になったじんちゃんとしては、いろいろ考える所がありまして。我が人生を、どんな風に締め括ろうなんて思いを馳せるには、少々時期が早いけれど、子どもたちに何かを遺せるのだろうかトカ、逆にどういったものを処分しといた方がいいのかなぁトカ。父のように、’遺品と一緒に、かつての恋の痕跡も出てきました’つー心配も、なきにしもあらず!?

リビングの戸棚の奥から、古い茶封筒に包まれたブツを発見した時、じんちゃんの胸は、きゅーんと詰まったね。そこに入っていたのは、数枚の写真と、黒革の手帳。取り出したセピア色の写真の中から、妙齢の女性が、静かな微笑みを湛え、こちらを見つめています。可愛らしい人やなぁ。。。って、感心しとる場合かい!

数十年の時を経て、娘 VS 当時の恋人が、こんな形で対面しようとは。よよ…何が哀しいてね、癌の進行によって、ある日を堺に歩行困難に陥ってしまった父が、想い出の品を始末できぬまま、最期まで気を揉んで逝ったのではないか。そんな心情を慮ると…ぷっ。また、手の届き辛い所に入れていたんですよ。人間心理としてありますねぇ。隠したいものは上の棚へあげろ。

そっと手帳をめくってみますと、数年間にわたるデートの記録が、書き込まれておりました。ダイアリーですからねぇ。何月何日、何時に待ち合わせ、どこへ行ったのか。パッと見て、サッとわかる(笑)。詳細な記載は省かれていましたが、それでも折々の心境を綴った文面から、楽しいばかりの恋でなかった様子が伺えるのでした。ささーっと見渡し’今の私には、まだ早い’、パタリと閉じて元の場所に戻し、約一年…関西での生活が何とか軌道に乗り出した頃、再びあのダイアリーを紐解く機会が巡って参りまして。父が遺したモノ、愛したモノに触れながら、整理を続けた末、やっと向かい合える準備が整ったのかな。ったく、とんだ「クローズド・ノート」だよ。

今度こそ、すべてを受け止めて処分しよう。そう心に決めていた私は、一つ一つの内容を、たどり始めました。デートの場所として、クラシックコンサートや洋画といった、父の趣味とは到底思えない記述があり、’さぞかし頑張ってたんやろなー’とクスリ。私が知っているのは、いささか調子っぱずれに、演歌を口ずさんでいる姿ですから。確かに、クラシックのレコードは家に何枚かあって、時折引っ張り出してきては、じっと聴き入っていることがあった。が、あれはストライクゾーンの趣味ではなかった気がするなぁ。過ぎし日を、振り返っていたのか。そう言えば、決まって夕暮れ時だったよ。。。と、ああ妄想は膨らむ。

遺品整理をしていたら、ジュリーの『許されない愛』なんて、シングルレコードが出てきたこともあった。流行歌には敏感な人だったので、演歌と並びザ・ピーナッツやピンキーとキラーズのレコードも所有していたものの、それらのレコードが文句ナシの代表曲なのに対して、ジュリーの場合は、’よりによって、その曲なん!?’やっぱ勘ぐるよね。意味深過ぎるゼ。タイトルも歌詞も。

別れを切り出され、でも別れられず…随分の間、父はやるせない感情を抱えていたようだった。次第に沈鬱な空気が漂い始める。「TELなし」「やはりTELなし」ダイアリーの余白に、したためられた文字が、悲しみで震えていた。日頃の丁寧な筆跡を知っているだけに、痛々しく見える。幾度目かの働きかけの後、ほんの一時、心が通じ合えた瞬間があったようだが、それも長くは続かず、最後は 「やはり、決意固し」。

おかしな話かもしれないが、私はね…何だかホッとした。父は、苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いて相手の選択を受け入れたんだと思ったから。そんな風に解釈できるのは、相手の女性も、父も、こちらの家庭をゴタつかせる空気を、放たなかったからかもしれない。密やかな関係に、私たちは守られていたのだ。

しかし父も、難儀なモン遺して逝きよったなぁ。二人の過去を物語る、色あせた写真と黒革の手帳。松本清張の小説のように、「コイツでのし上がってやるわよ!」とはいかんしね。せいぜい母にチクるくらいのもんで。ただ別の意味で、胸がきゅーんと苦しくなるお年頃。憎まれ口をきいて可愛くない時は、「いてもうたろかぃ!」 胸の奥に仕舞っていることが、喉元まで出かかるけれど、ホンマにあの世へ行ってしまいそうなので、我慢しておりまする。「ちょっとアンター!!」天国で母が騒ぎ出し、静かに眠ってる…いや、ひょっとして?その先は考えるまい。ま、お父ちゃんの邪魔をしたら、悪いからな。

「人は、誰かを愛した時、必ずその証を残したがる。だから、愛のからむ完全犯罪は成立しない。」 LOVE AFFAIR を、愛のからむ完全犯罪とするなら…『死刑台のエレベーター』(日本版ね)のセリフに、一理ありだ。みなさまも、ご用心。

ところで、じんちゃんにもクローズド・ノートがあるのですが。子どもたちに見つかる前に、はよ処分せな。だって、恥ずかしい内容なんだもーん。「母さん …こんなもん書いてたんかい!」うぷぷ。ラブはラブでも、ボーイズラブ。腐女子だったもんで♪

https://www.youtube.com/watch?v=VTL3Z4qtSps