カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

就任のご挨拶

2009年06月12日 09時00分58秒 | Weblog
 こんにちは!カンボジア事務所の筒井博司(つつい・ひろし)です。早いもので、私がカンボジアに赴任してから3ヶ月が経ちました。これからは、私が「カンボジアだより」を担当することになりました。今回は、初めての投稿ということで、同じく最近赴任したインターンのチュープとあわせて、私の自己紹介から始めたいと思います。

 私は、五島列島の北部に位置する小さな島で生まれ育ちました。島中の誰もが顔見知りのようなところであり、海に密着した生活を送っていました。高校を卒業してからは、当時の私には想像もできなかったくらい移動の連続です。カンボジアに来るまでは、愛知、米国、メキシコ、東京、ボリビアなどに住んだことがあります。

 大学2年生の終わりに、バックパッカーとして、ロサンゼルスを出発点とし、パナマ運河を目指して旅行したことがあります。私にとって、初めてのバックパック旅行でした。旅の途中で寄ったメキシコ・シティでのことです。ある日、私は次の旅路を計画しながら、喫茶店で読書に耽っていました。ふと、まわりに目を向けると、店の中には私のような外国人旅行者や裕福そうなメキシコ人がいる一方、窓の外には物乞いをする先住民の母子の姿がありました。「何かがおかしい。」私がマイノリティ問題に本格的に取り組むようになったのは、今になって振り返れば、この経験が大きかったと思います。

 大学卒業後、移民研究を志し米国に渡り、特にメキシコ・シティの先住民移民コミュニティに焦点を絞り、メキシコの国内移民について修士論文をまとめました。日本に帰ってからは、あるNGOの東京事務所にて、人身売買・性的搾取の被害者を保護するためのアドボカシー活動に取り組みました。ボリビアでは、協力隊員としてアンデスの渓谷地帯の先住民集落で農村開発に携わり、そこでは経済ブームを迎えた東部に出稼ぎに行く人々を目の当たりにしました。このように、私が関わってきたこれらの人々には、移動しているマイノリティであるという共通点が見出せます。

 私は、マイノリティの声に常に敏感でありたいと思っています。マイノリティとはその社会の権力関係において少数派に属している人たちのことであり、彼らが発する声とはその社会から排除された声です。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、私がこのような意識を強く抱くようになったのは、私が離島出身であることがかなり影響したのではないかと、自分では思っています。

 今でこそ、私は自分の故郷に心から誇りを持っていますが、高校を卒業してしばらくは離島出身であることに対する劣等感を克服できずにいました。島に住んでいたころ、テレビや雑誌を通じてもたらされる情報に憧れを抱く一方で、親近感を覚えることはできず、それなのに追従しなければならないような違和感に苛まれていました。私たちが受け取る情報は、ある一定の人たちの意見が特別に強く反映されていて、その結果排除されている人たちもいるのではないか。私は、いつしかこのように考え始めるようになりました。視点をどこに置くかによって、世界は変わって見えてきます。

 ラテンアメリカからカンボジアに移ったことは、地理的には大きな変化だったかもしれません。しかし、カンボジアにおける子どもの人身売買、買春、危険な労働などをマイノリティ問題だととらえると、私の問題意識は一貫していたともいえます。また、日本、米国、メキシコ、ボリビアとカンボジアを比較することによって、カンボジアが抱える諸問題を相対的に理解することもできるでしょう。何より、新しい土地に飛び込むことは、不安がいつもつきまとうとはいえ、何事にも代えがたいわくわくする経験です。

 数ヶ月前までは、カンボジアで働くことは想像すらできませんでしたが、実は、留学中の大親友がカンボジア人であり、深い縁も感じているところです。「カンボジアだより」では、現地の息遣いが聞こえてくるような記事を意識し、みなさまにお届けしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続いて、4月からカンボジア事務所にインターンとして赴任いたしました、在日カンボジア人のチュープ・サラーンの自己紹介です。5歳の時、インドシナ難民として日本に渡り、日本の暮らしがかれこれ19年になります。現在、大学院博士前期課程の2年生で、カンボジア家族の子育てについて研究しております。また、日本では外国人青年による運営組織「すたんどばいみー」という団体で活動をしています。外国籍の子どもたちを対象に、学習補充を行っています。

 実は、私は2005年に10ヶ月間ほどカンボジア事務所で通訳や翻訳のお仕事をさせていただいた経験があります。当時、私がカンボジアで経験した多くのことが貴重であったと、今になって改めて感じています。今回、またシーライツと一緒にお仕事ができて大変嬉しく思っております。よろしくお願いいたします。