カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

子どもたちによる人身売買禁止ネットワーク

2007年12月18日 14時08分30秒 | 人身売買防止プロジェクト(意識啓発)


こんにちは。カンボジアの中川香須美です。今回は、スバイリエン州において国際子ども権利センターが支援している事業について紹介します。国際子ども権利センターが同州で実施している支援には、貧困家庭を対象に収入向上のために牛などを支給する支援、貧困家庭の女子に対する奨学金制度、さらに学校を拠点とした人身売買防止ネットワーク(SBPN)活動支援が中心になっています。以下は、それらの中から、学校を拠点とした人身売買防止ネットワークについて紹介します。

ベトナムと長い国境で接しているスバイリエン州は、土地がやせているだけでなく、灌漑(かんがい)制度もほとんど整っておらず、農業のみで生計をたてることが極めて困難な地域です。ところが農業以外の生活手段としては、ベトナム国境付近のカジノ、縫製工場や建設現場に出稼ぎに行くしか現金収入の方法がありません。首都プノンペンや遠いタイにまでも、多くの人が職を探して危険を犯してまで出稼ぎに行きます。

貧困に苦しむ家庭では、大人だけでなく、子どもたちも学校をやめて都市部へと出稼ぎに行きます。特に女の子は、15才程度でも縫製工場に出稼ぎに送られる場合があり、初めて都会に出た少女が人身売買の被害にあう場合も少なくありません。縫製工場は18歳以下の子どもを大人と同じ条件で雇用できませんが、実際には多くの子どもが年齢を偽って工場で働いています。現状をみると、子どもたちが出稼ぎに出ることを止めることはできないものの、せめて出稼ぎ先で人身売買にあわないように知識を持っておくことがとても重要です。そこで、国際子ども権利センターは、学校に通っている子どもたちを対象として人身売買から自分を守る方法を学ぶ活動を支援しています。もちろん、自分自身だけでなく、友だちにも自分を守る方法を伝えてもらうことも目的としています。

学校を拠点とする人身売買防止ネットワークは、カンボジアのNGO「子どものためのヘルスケアセンター(Healthcare Center for Children、略 HCC)」と国際子ども権利センターが協力しています。このネットワーク活動の目的は、学校内に子どもたちのネットワークをつくることによって、まずネットワークのメンバーの子どもたちが子どもの権利や人身売買から自分を守る方法を学び、さらには学校の友だちや地域の人たちに学んだ内容を広く伝えていく点にあります。活動に対する最初の動機づけはHCCのスタッフが子どもたちにトレーニングを実施することに始まりますが、その後は子どもたち自身が大人のアドバイスを受けながら自分たちでネットワークの活動を運営していきます。

この一連の活動は、学校ベースのネットワーク(School-Based Prevention Network, 略SBPN) と名づけられていて、従来プレイベン州で実施していましたが、昨年の2006年からスバイリエンでも始めるようになりました。

現在スバイリエンでの活動地は、チャントリア郡という貧困層が多く出稼ぎに数多くの村民が出ている地域で昨年はバティ、プラサート、バベットという3つの地区で、今年からはチュレッとプレイコキーという地区でも始まりました。農業に依存しているため、天候が悪かった一昨年はほどんど稲の収穫がなく、昨年も収穫はあまりよくありませんでした。そのため、多くの人たちが出稼ぎに行かざるをえなかった村です。ベトナムとの国境に近い地理的条件から、多くの子どもたちが5年生か6年生で学校をやめ、ベトナムへ物乞いをさせられに行っています。多くの場合、母親が子どもを連れて国境を違法で渡り、子どもだけブローカーなどに預けて物乞いや宝くじ売りをさせています。


カンボジアも経済発展がここ数年でめざましく、バベットという地区はベトナムとの国境にあるためカジノなどの建設ラッシュに伴い、農民は土地を売り、カジノや縫製工場、建設現場で働き始めています。その際に仕事を紹介する話をもちかけられ前金を払ってしまい、職の紹介はないままお金を失うという問題も発生しています。



人身売買防止ネットワークの活動を成功させるため、ぜひ国際子ども権利センターの会員になってください。

(つづく)

写真は人身売買予防ネットワークのメンバー