カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

児童労働の定義

2007年08月16日 04時06分32秒 | カンボジアの子ども
みなさんこんにちは、以前カンボジア事務所に勤務していました平野です。前回は児童労働の量的な意味での世界的動向とカンボジアでの状況について簡単に書かせていただきました。今回は児童労働という言葉の定義について書かせていただきます。

【児童労働の定義】

児童労働と一口に言いますが、その定義については意見の違いが非常に多く、統一的な見解はないとされています。ILO(国際労働機関)の定義によると、まず12歳未満の子どもの場合はすべての経済活動、12歳から14歳については有害な仕事についている場合、あるいは通常の仕事でも週14時間以上働いている場合、15歳から17歳については有害な仕事についている場合に、児童労働に従事していると考えられています。ここでいう経済活動は賃金労働に限りません。自給自足の農家をやっている親を手伝ってもそれは経済活動です。

【子ども時代の定義】

しかしこのILOの定義には様々な異論反論があります。これは「子ども時代」の定義にもよるかも知れません。国連子ども権利条約は国際子ども権利センターはもちろん多くの子どもに関わる援助機関、NGO、市民団体などでその理念の柱として取り入れられている大切な条約です。また、実際には各国の法執行力の問題もあってそのような力はなかなか持てていませんが、批准している193カ国においては、本来は憲法と同様に法的拘束力のあるものとされています。

一方でこの条約は「西洋的な理想の子ども時代に対する考え方」に基づいているという考え方の人たちもいます。例えばアフリカでは、労働には従事せず、勉強と余暇にだけに費やす子ども時代、というのはアフリカの実情にも文化にも即実際にはさない、として、アフリカ版の子ども憲章を作りました。そこには子どもには権利とともに義務がある、として、「家族を助けるべき」と明確に書いてあります。

結婚する年齢や子どもを持つ年齢は、その国の平均寿命、教育程度、経済的豊かさによって変わると言われています。例えば、平均寿命が50歳代で高校に行く人が珍しい国の15歳の少年は、その国の大人から見ればもう大人一歩手前、早く仕事を覚えて20歳前には結婚しなさい、という感覚かも知れません。しかし身体的な面を考えると、そのような年齢でおとなと同じようなこと(例えば仕事や出産)をすることには危険が伴いがちです。栄養不足からあまり体格の発達していない若者の多い途上国ではなおさらでしょう。


【子どもの権利】

働く子どもの権利の問題もあります。アフリカのある国では、その国から他の国に渡る船が「人身売買」として摘発された際、船の中の子どもたちが「稼ぐチャンスを潰された!」と怒ったという話があるそうです。「子どもの権利と言うならば、子どもたちの働く権利を尊重するべきだ」と主張する人もいます。働くことをまったく否定してしまうと、働く子どもの権利の実現が難しくなる、ということもあります。確かにそのように地域や国の実情に合わせて現実に対処していくことは必要でしょう。しかしだからと言って、やはり子どもたちは勉強と遊びを中心に健やかな子ども時代を過ごすべきだという理想が間違っている、ということになるわけではありません。また、必要以上に「現実を考慮すべき」と言うだけでは現状は変わりませんし、そういった文句は時には現状を肯定するためだけの言い訳として使われることもあります。


子ども時代をどうあるべきと考えるか、そして児童労働をどう定義するかは簡単ではないのかも知れません。ただし、ひとつ言えることは、人身売買や子ども買春をはじめとした「最悪の形態の児童労働」、これについては断固撲滅すべきである、という世界的合意がかなりあるということです。次回はその最悪の形態の児童労働についてです。


(写真は、プノンペンの川辺ではすの実を売る少女   撮影:甲斐田)

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