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パライソメッセージ 4

2013-04-04 18:01:16 | メッセージ

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パライソメッセージ 2013.04.05

 

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 【主張・意見・コメントのページ】

テーマ:理念、ポリシー、哲学を語ろう(4)

 リストラ企業もブラック企業も、その本質を探っていくと、同じ根源に行き着く。

 今の若者は忍耐が無いとか仕事に対する考え方が甘いから、もっと徹底的に鍛えなければならない、『社会人基礎力』が無い、ゆとり教育世代、シュガー社員等々、若者を揶揄したり、挙句は若者に対するハラスメントなど、最近の若者バッシングは際限が無い。その『突撃隊』が、若者の替わりはいくらでもいるといって、「使い捨て」「過労自殺」「精神の疾患」等若者の精神・肉体を破壊し蝕むブラック企業である。若者の精神・肉体を破壊し蝕むブラック企業が何故跋扈するのか。

 一方、家電をはじめとする製造業特に輸出を基幹とする企業は国際競争に大きく立ち遅れたと言われている。アベノミクス以前の極端な円高で輸出企業が大打撃を受け、企業存続のために大胆なリストラをせざるを得ないという表層的なロジックに依ってリストラが合理化されている。リストラ企業の多くには『追い出し部屋』などという、人間の尊厳を踏みにじるようなものまで出現している。しかし事実はリーマンショックまでは戦後最長の20年以上続いたイザナギ景気により、企業の内部留保は右肩上がりで史上最大規模に膨らんでいる。一方被雇用者の収入は1980年代以降ずっと減少し続けてきている。何故史上最大規模の内部留保を持ちながら、13万人もの何の落ち度も無い被雇用者がリストラされるのか。

 今日、アベノミクスなどで浮かれている裏では、『解雇規制の自由化』『ホワイトカラー・エグゼンプション』などが堂々と謳われている。それらへの合理的理屈付けとして、衰退産業から成長産業への雇用の流動化とか、終身雇用といった『閉鎖的雇用』から『開かれた雇用関係へ』等という屁理屈が経団連の長谷川氏や竹中平蔵氏、あるいは一部学者などが喧騒し、新聞、テレビなどは無批判に表層だけを垂れ流している。

 しかし、今ではブラック企業やリストラ企業やTPPが資本主義の未来を切り開く、夢のあるものや政策であるなどと本気で考えている人がいれば、よほど物事にポジティブで楽天的過ぎる人だろう。これらはものごとの本質を考えると、実は同根のものであることが理解できる。資本主義的生産関係の下で、高度に発達した資本主義が疲弊しその行き詰まりの打開が更なる特別剰余価値の追求を求めるという、それがこれらの諸現象の『本質』であることは、本当はかなりの人が分かっているのだろう。しかし分かっていてもどうしようもないどころか政治や選挙制度も絡んで、打開への道筋が見えず、鬱々たる閉塞感が蔓延しているのが現状ではないだろうか。

 問題は『それではどうするのか』だろう。だけど心配はいらない。世の中には、社員・従業員と夢や価値観を共有し、いい関係で仕事を続けていくことを目指している会社経営者や企業はたくさんある。働き甲斐のある、社員・従業員をひいては日本を幸せにしようと頑張っている『いい会社・優良企業』は沢山ある。いい会社を探すヒントとなる情報は順次『一押しBook』で紹介していきたい。また、本日の『一押しBook』で紹介する若き哲学者佐々木隆治氏は彼の著作『私たちはなぜ働くのか(マルクスと考える資本と労働の経済学)』の中で、労働時間の短縮や生産の私的性格を弱める等の提言をしている。今日の閉塞状況を打開していく貴重なサジェッションである。

 佐々木氏の問題提起の是非も含め、物事の本質を理解する意思を持って勉強することが、哲学を語るための勉強の方法として、2番目に重要である。

 第3の『哲学を語るための勉強の方法』は、自分の好きなあるいは興味ある得意な分野の勉強をすることである。勉強が長続きし深堀りしたくなる分野であればなんでも良い。哲学、経済、歴史、文学、科学、美術、芸術、趣味、娯楽等々どの分野でも良いと思う。どの分野であれ批判的にそして物事の本質を見抜きつつ勉強すれば、その分野で自分なりの哲学が確立する。ひいては自分の哲学が語れるようになる。何れかの分野を『権威的』『教条的』に勉強しても、興味が無く苦手であれば身に付かない。

 人と人とのコミュニケーションは、お互いが自分の理念やポリシー、哲学を語り合うことによって成り立ってゆく。日本人が外国人とコミュニケーションができない、ディペートができないのは語学力の低さとか日本人のシャイな性格が本質ではない。日本人の多くは語るべき理念、ポリシーや哲学が無いからだと先に言った。そしてその責任は個々の若者にあるのではないということも言った。今や日本の国の表面的なリーダーや文部科学省をはじめとする官僚にも哲学は無い。そして新聞・テレビなどのマスコミは為政者や権力者の意に沿った垂れ流し情報を流すのみで、物事の本質に迫ろうとしない。心あるマスコミの人材は多くいるのだろうけれど、権力者・為政者が物(文句)言わぬ『愚民化』政策を実施する、社会のシステム化に奔走しているような気がしてならないが、誤っているだろうか。

(続く)

【一押しBook】

題名:「私たちはなぜ働くのか(マルクスと考える資本と労働の経済学)」

著者:佐々木隆治(1974年生まれ。一橋大学社会学研究科特別研究員。一橋大学大学社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)

内容:

 今日の雇用は大変厳しい状況にある。2008年のリーマンショックまでは戦後最長の好景気が続き、統計に載る大企業の内部留保は250兆円を超え戦後最大になった。一方雇用状況を見ると、信じられないことだが政府統計を見ても、従業員一人当たりの給料は20年来一貫して右肩下がりで減り続けている。これの背景は、有期雇用や契約社員などの非正規社員が激増していることや、派遣社員などで企業の正社員となれない状況、女性被雇用者の過半数がパートタイマーなどの非正規雇用といった状況がある。女性とともにそういった厳しい状況に置かれているのが若者だ。4割が非正規雇用であり、そういった中で『替わりはいくらでもいる』とブラック企業が徘徊する。また、電機業界では13万人のリストラを断行するばかりでなく、一方では経団連の長谷川氏、竹中平蔵氏、三木谷氏他面々がこぞって「解雇規制の自由化」とか「ホワイトカラーエグゼンプション」の大合唱をしている。

 本書は、『資本論』の入門書だ。『資本論』は特に第1巻が難解で、私は若い時に2回読んだが、深くは理解が及んでいない。特に第1巻は哲学的な論述で、私程度では余程頭が聡明な状態のときに、論理的思考を働かして読み込まなければ、理解がおぼつかない。本書は、そういった巨大な山のような『資本論』に分かりやすくアプローチをさせてくれる。

 さらに、現代の諸相を資本主義的生産関係と、賃労働と資本の関係で実に分かりやすく解明してくれている。本書の秀逸さは単に『批判の経済学』に終わるのでなく、先にも述べたように労働時間の短縮や生産の私的性格を弱める等の今日の閉塞状況を打開していくための貴重なサジェッションを提起していることである。

 若き哲学者の良心的な意欲作であり、一読をお勧めする。出来れば『資本論』への挑戦も。


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