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胃癌日記29

2012-07-06 17:59:24 | 闘病

                         胃 癌 日 記 29

 (黒部水平歩道を振返る 断崖絶壁に刻まれた道)

 12月24日(土)

 今日はクリスマスイブ。こんな気持ちと状態でクリスマスイブを迎えてしまった。「鬱なイブ」に人生の終わりに差し掛かってきたことをしみじみと実感する。

 朝6時30分、採血で看護師さんに起こされる。3日振りの採血で、カリウムの結果がどうなっているか気になる。7時30分朝食。朝食はパンと牛乳。朝食を食べながら同室のK氏と話す。K氏は退院が25日の日曜日に決まったとのこと。手術が3日私より後で、すでに退院が決まったとのこと。少し焦る思いが有る。K氏は手術後も順調に推移し、同じ進行癌といっても腸なので、食べるものも制限無しで食べている。私はカリウム値が高くなったりで、一体どうなることやらと思っている。ひょっとすると病院で越年ということになるのかなあ、とも思うときがある。K氏は退院後抗癌剤治療をするとのこと。最初の1クールはS病院の外来で来て治療し、後は癌を発見してくれたクリニックで継続するとのこと。抗癌剤治療の苦しさは私も経験者からも聞いており、K氏の今後の治療が旨くいくようにと励ますとともに、自分にも迫り来る厳しさのプレッシャーに、また少し「欝」になる。

 8時40分にT先生、Y先生の回診。本日午後4時に手術の結果説明と今後の治療・療養についてのインフォームド・コンセントがある。その確認をする。本日は連れ合いと娘たちも来ることを言う。

 9時40分1本目の20分ウォーク。午前の間食でカスタードプリン。10時30分シャワー。11時から売店に行き、続けて2本目の20分ウォーク。午後12時5分に昼食。ご飯110gに煮魚(鯛)、卵豆腐、ほうれん草お浸し、煮キャベツジャコ和えのおかず。昼食後軽く午睡する。

 13時40分3本目の20分間ウォーク。そのうち50分に次女のAがやって来て、少し待つように言うと、一緒に歩き始めた。14時連れ合い、14時15分長女Mが来る。30分S君が見舞いに来た。家族以外の見舞いはお断りしてきたが、以前大原の大尾山に一緒にハイキングに行ったりした縁もあり、『世話になったので是非見舞いに』と次女を通じて言って来て、半ば『押しかけ』を了解したようなもの。今日は伊丹でクリスマスコンサートがあり、次女と一緒に行くのでその前にお見舞いとのこと。S君には進路のことやら話し、手術跡の傷を見せた。50分にコンサートへ行くとのことで帰る。

 16時丁度にナースステーション奥でY先生から、手術の結果と今後についての説明。少し緊張する。転移がどうだったのか、抗癌剤治療についての説明はどうか、多分無いだろうけれど『余命○○年』と言われないだろうか、これからの自分の闘病生活は、仕事は、執筆は等々の懸念が気持ちに覆ってくる。

 (黒部奥鐘山の大障壁上部)

 「【いそ】さんのお腹を開いてみたら、内臓の癒着がひどく大変でした。何回も手術をしている人の内臓のようで、剥がすのに2・3時間かかり、12時ごろには手術が終わると思っていましたが、16時過ぎまでかかりました。」

 「癒着は剥がさないといけないのですか?」

 「そのままだと、胃の下部を切除しますが、残った上部と腸が繋がりません。また、通過障害や腸閉塞を誘発しやすくなります。」

 「剥がすのは、手で剥がすのですか?」

 しょうもないことを聞いてしまった。何しろ気持ちは浮ついている。

 「電気メスで剥がします。」

 Y先生はいつものように紙の上に絵を書き出して、

 「肝心の手術のほうですが、胃の下部、全体の3分の2を切りました。それと胆嚢を切除し胃の回りのリンパ節もきれいに切り取りました。結果ですが、リンパ節には転移はありませんでした。胃のほうですが、癌細胞はスキルス癌です。胃壁は5層になっているのですが、【いそ】さんの場合一番上の層だけに癌が留まっていて、中まで侵行していませんでした。ステージで言うと8段階のⅠaです。」

 その辺まで言われているとT先生がふらっとやって来て、

 「○○ちゃん、良かったね。内臓がえらい癒着していて、手術は大変やったわ。それでも早期で本当に良かった。よく見つけてくれたN先生にお礼言うときや。」

 「はい。先生も本当にありがとうございました。」

 (黒部奥鐘山の大障壁の核心部)

 少し間をおいてY先生の説明が続いた。

 「今後についてですが、ステージⅢ以上は抗癌剤治療をすることになっています。【いそ】さんの場合はⅠaですので、抗癌剤治療はしません。今後は定期的な検査をしてください。年に2回のCTと血液検査、1回の胃カメラをしてください。S病院はもう来なくて結構ですので、N先生のほうで見てもらうようにしてください。今回はタイミングが良かったし、N先生はよく早期癌を見つけてくれたと思います。来年の胃カメラまで見つかっていなかったら、状況はどうなっていたか分かりません。」

 家族もいろいろと聞いてY先生とのやり取りを聞いているうちに、だんだんと『いい結果』だったのかなあ、と言う実感が湧いてきた。何も悪いことをしていないのに胃を切られ、仕事や執筆、資格試験の欠席等沢山のストレスを抱えて、何よりも痛くて苦しい目に会い、厳しい経験の帰結が『良かった』でいいんだろうか。とにかくこの状況は受け入れざるをえない。

 「と言うことで、【いそ】さん。退院をして良いですが、いつ退院しますか。」

 「ああ、できるなら明日お願いできますか?」

 「今日言って明日はできないです。」

 「そうですか。それではあさっての26日にお願いできますか。」

 「いいでしょう。ただ、癌のほうの治療はこれで終わりですが、血液検査の結果が気になりますので、年明け1月9日の月曜日に診察に来てください。」

 「分かりました。」

 1月9日は成人の日で祝日だが、S病院は祝日でも午前中診察がある。

退院が26日に決まった。しかも癌そのものの治療は順調だ。ふと、抗癌剤治療に向かうK氏のことが頭をよぎった。

本日はクリスマスイブでホームパーティの日。4時50分に長女が帰り、5時にAは伊丹のクリスマスコンサートへと、25分には連れ合いも帰った。皆それぞれにホッとしたような感じだった。5時35分、本日4本目の20分ウォーク。6時に夕食。K氏と一緒に食べる。私のおかずは、はんぺんとキャベツを煮たもの、卵豆腐のあんかけ、デザートに寒天ゼリー。K氏は豪華で、クリスマス特別料理かタンドリーチキン照り焼き他3品、デザートはロールケーキ付き。K氏の明日の退院を祝い、私も明後日の26日に退院と言った。ただ、私は抗癌剤治療をしなくて良いということは、言えなかった。

8時5分、5本目の20分ウォーク。30分に夜食でバナナ。

本日歩き13,600歩。(16周×5回)

 (黒部奥鐘山の大障壁 下部)

(続く)

 

 

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