中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

沈宏非《食相報告》を読む: 尋羊(羊を尋ねて)(1)

2011年12月24日 | 中国グルメ(美食)

  今回は、羊を取り上げます。日本人はあまり羊を食べないので、中国に行って火鍋を食べ、街角の羊肉の串焼きを見ると、羊は中国では一般的な食べ物のように思いますが、実は中国でも、羊肉のあの独特の臭みは敬遠されるそうです。それでは、沈宏非は羊をどう考えているのでしょうか?
  前半は先ず、中国文化と羊の関わり、そして羊肉の効用について、述べています。

■[1]
 ( ↓ クリックすると、中国語原文が表示されます)


・豕 shi3 豚
・畜 chu4 禽獣。主として家畜を指す。

・饌 zhuan4 ごちそう
・鳳毛麟角 feng4mao2 lin2jiao3 [成語]鳳凰の羽毛と麒麟の角。極めて得難い人や物のたとえ。
・天壤之別 tian1rang3 zhi1 bie2 天と地の違い

・倒数 dao4shu3 後ろから数える
・早八輩子 zao3 ba1bei4zi “八輩子”は何世代にもわたる長い時間のこと。大昔。
・羊大為美 yang2 da4 wei2 mei3 《説文解字》の説明で、「羊の大なるを“美”という」とある。
・乏善可陳 fa2shan4 ke3chen2 言うべき良いこと、優れた点が何もない
・干鳥 gan1niao3 ののしりのことば。
・楷模 kai3mo2 模範
・羊毫筆 yang2hao2bi3 白ヤギの毛を使って作った筆。羊やヤギの毛は軟らかく、墨をよく吸うので、滑らかで力強く、豊かな文字を書くことができる。

  《三字経》は既に明確に私達にこう告げている:「馬牛羊、鶏犬豚、この六つの獣は、人が飼っているものである。」漢語文化の中で、“美”“鮮”“吉祥”など重要な概念が皆、羊と関係があるとしても、私はまた次の事を発見した:漢族の人間も羊を飼うが、羊を食べることはあまり好きではない、或いは、羊の肉を食べるということからは、終始、力が湧いてこない。

  各地の漢族のごちそうの中で、羊肉を中心にするのは、実際、鳳の羽や麒麟の角を得ようとするようなもので、極めて珍しい。西北、東北、華北一帯の漢族住民の羊肉料理は、中原や東南沿海地域一帯よりも豊富であるが、それは主に少数民族の飲食の影響を受けたからである。資料によれば、中国には現在、羊が約2億匹おり、世界でも羊の生産大国であるが、食用の羊の開発はたいへん遅れており、現在国内の一人当たり平均の羊肉消費は2.5キロで、これと他の肉類とは天と地の違いがある。(一人当たり平均の肉の消費量は45キロで、それには鶏、アヒル、ガチョウ、豚、牛、羊が含まれる。)

  これと同時に、中国の羊の牧畜業は世界の先進レベルとは大きな隔たりがあり、ヤギの平均体重は11キロしかなく、世界でも後ろから数えて二番目である。たとえ、私たちが地球上の全ての羊を食べる民族の中でも早く、大昔に既に「羊の大なるを“美”という」という確固とした道理を悟っていたにもかかわらず。

  これと同時に、私たちは羊の総合開発、例えば、羊毛、羊の皮、更には羊の胎盤の物質の類に到るまで、とりたてて言うべきことが何も無く、遂には心の中でいつもこう思うようになった:こうなったら、羊を飼ったところで、どうなるものでもない。歴史上あの有名な羊飼いの孤独な姿は尚、神に忠節を誓う道徳的模範の意味があるが、羊の毛の筆もあまり使う人は多くないのだから。

■[2]


・肤浅 fu1qian3 学識や理解が浅い。不十分である。皮相的である。

  羊の問題では、中国もアジアで孤立している訳ではなく、日本は更にそれを上回り、それ以上の国は無いだろう。彼の国には「羊羹」と呼ぶお菓子があるにもかかわらず、羊とは全く関係が無い。村上春樹によれば、日本は江戸幕府末期まで一匹の羊もいなかったに違いないと思われる。彼は《羊をめぐる冒険》の中でこう書いている:「今日でも、日本人は羊に対する理解が極めて浅い。要するに、歴史上から見て、羊という動物は、一度も生活面で日本人と関係を持ったことがない。羊は国によってアメリカから導入され、飼育され、そして打ち捨てられて顧みられなくなった。これが羊である。戦後、オーストラリアとニュージーランドとの間で羊毛や羊の肉が自由に輸入できるようになったので、そのため日本では羊の牧畜は利益を見込むことができなくなった。羊があまりかわいそうだと感じないのは、言ってみれば、これは日本の現代そのものであるからだ。」

■[3]


・維京人 wei2jing1 ren2 バイキング
・按部就班 an4bu4 jiu4ban1 [成語]物事を進めるのに、一定の順序に従う。段取りを踏んで事を進める。

・執着 zhi2zhuo2 執着する。
・建制 jian4zhi4 機関や軍隊の編成。行政区画などの制度。

  「帝国時代」というゲームをしたことがある人なら皆知っているだろうが、北欧のバイキングであれ、モンゴル人であれ、中国人であれ、日本人であれ、イギリス人であれ、最も古い暗黒時代には、必ず村落の住民を男女に関わらず動員し、真面目に羊を捕え、飼育し、それを屠らなければならなかった。こうしてはじめて、他に遅れをとることがなくなり、他の部族から殴られることがなくなり、「地球の住民」から除籍されることがなくなる。全てがこうして一定の順序に従い盛んになり、発達してきたのである。

  もちろんこれはゲームに過ぎず、あなたが歴史の原著に執着し、100%忠実な「中国」を代表するゲーマーであるなら、従順な綿羊を捕まえず放っておいて、専ら人手を組織しあの強暴なイノシシを包囲して捕えようとするだろうか。実際、漢民族は少なくとも人口の上の隆盛、発達、組織編成や制度面の進化、モデルチェンジで、豚肉の他、当然羊肉からも離れられないが、ただ私たちは羊に対する活動の重点が、千年以上にも亘って、「如何に食用の肉が不足している状況下で、羊肉を浪費することなく、しかも羊肉を食べる時に引き起こされる種々の危害を避けるか」の解決案を検討することに著しく偏ってきたのである。

■[4]


 ・致力 zhi4li4 力を注ぐ。努力する。
・温中去函 “温中祛寒”の間違いと思われる。“温暖中焦,祛其寒邪”のことで、“中焦”とは、脾臓、胃を指す。つまり、脾臓や胃を温め、悪寒や胃の病気を取り除くこと。

・立竿見影 li4gan1 jian4ying3 [成語]効果が直ちに現れる

  社会進化の一般の規律から見ると、一つの民族の特定の食物の選択、つまり何を食べ何を食べないかということは、その民族の狩猟採集時代の栄養状況と生態環境に関係する。しかし、漢民族の情況について見ると、何を食べ何を食べないかという問題は、更に余分に、哲学的な考慮が存在する。陰陽五行の原則に対応し、羊肉は五行中の火に属し、五臓中の主たる心で、五色は赤、五味は苦に属し、五嗅は焦に属す。総じて言うと、羊は容貌は従順だが、その肉は極めて気性の激しい危険な食品なのである。

  したがって、中国の歴史上、羊肉の開発に力を尽くしたのは、通常、料理人ではなく、医者であった。孫思邈は羊肉に対し最も良く研究し、羊肉はうまく使うと、大いに気や血を補い、脾臓や胃を温め、悪寒や胃病を除き、正を養い邪を取り除く。どうか孫医師の書いた「羊肉スープ」の処方を見てほしい。羊肉、茯苓(ぶくりょう)、黄耆(おうぎ)、生姜、甘草、独活、肉桂、人参、麦冬、生の地黄、棗(なつめ)。主に婦人の産後や病後の咳、腹痛、虚弱、風邪気味で、症状が回復しない情況を治癒する。

  私が敢えてこう保証する:ご婦人がこのたいへん苦い、古方に則った羊肉スープを一碗飲めば、羊肉への辛さが必ずや自分の病気の痛さを超越するだろう。もちろん、成年男子は必ずしもそうは感じないだろうが。漢方医の指摘によれば、男性のあそこの悩みは、冬に羊肉を食べれば、しばしば強い壮陽作用が得られ、たちまち効果が現れるだろうと。

■[5]


 ・満目 man3mu4 目に見える限り。
・瘡痍 chuang1yi2 瘡蓋のまだできていない、口のあいた傷。創痍。

・燥熱 zao4re4 本来の意味は、乾燥した熱さ。漢方では、“燥火”ともいう。症状は、目の充血、歯の腫れ、喉の痛み、耳鳴り、鼻血、空咳、かっ血。
・暴躁 bao4zao4 怒りっぽい。苛立つ。
・挨 ai2 我慢する

・另当別論 lingdang1 bie2lun4 以前の見方や結論は正しいかどうか分からないので、もう一度別に議論しなければならない。
・血性 xue4xing4 不屈な気性。気概。
・剽悍 piao1han4 剽悍(ひょうかん)である。勇ましい。

・陡然 dou3ran2 突然に

  漢民族の飲食文化は羊肉に対して慎重な態度を取ってきた。それは主に羊肉の「性甘にして、大いに熱す」(《本草綱目》)による。特に嶺南地区(つまり、広東、広西地方)の広大な肉食者について言えば、羊肉というものは、ひと口食べれば容易に「のぼせ」を生じ(漢方で言う“上火”)、人は一度のぼせると、口臭が止まらず、満身創痍となり、悪くすると、万病を引き起こすことになる。

  中国人だけでなく、羊肉の大好きなイギリス人は遅くともヴィクトリア時代には羊肉の「乾いた熱さ」(“燥熱”)の道理を理解していた。《じゃじゃ馬馴らし》の中で、ペトルーキオは妻に言った:おまえに言っているんだよ、ケイト、そいつはもう焦げてしまっている。それに、医者も以前、羊肉は食べるな、と言っていた。というのも、羊肉は食べると脾臓や胃を傷つけ、気持をいらいらさせるからだ。私たち二人の気性は元々怒りっぽいのだから、やはり少々空腹を我慢して、こんな焦げた肉は食べないでいよう。」

  知るは一時のことだが、食べるかどうかは別の問題だ。まだ科学的に証明されていないが、私は、羊肉は人に“燥熱”を起こさせると同時に、食べる者に荒々しい気性をもたらす。中国の西北、東北一帯の食羊民族は、体格や体力が穀物を主食とする中原や東南沿海地域の人々よりはるかに勝っているだけでなく、性格もずっと勇ましい。

  日本では、「肉食禁止令」が1200年の間続けられ、明治5年以前は、日本人は羊肉も食べなかった。しかし日本は明治維新後、突然凶暴になり、真珠湾でも「トラ、トラ、トラ」と叫びはしたが、それは決して「羊、羊、羊!」を食べたからではなく、集団で羊肉同様「荒々しい」性格を持つ牛肉を食べるようになったからである。

■[6]


・酒保 jiu3bao3 酒屋の店員
・叵耐 po3nai4 我慢ならない。許せない。
・価 jie(軽声)数詞の後につき、語調を整える

・明摆着 ming2bai3zhe 目の前に並べてあるかのように、明らかである。

  荒くれ者、例えば黒旋風の李逵は、羊肉を食べ出すと尚更命知らずとなった。《水滸伝》第三十七回「及時雨は神行太保に会い、黒旋風は浪里白条と闘う」で、宋江は李逵、戴宗の二人に会うと、心から喜び、共に潯陽江の畔の「琵琶亭酒館」に行くと、飯を食った。何杯か酒を飲むと、宋江はこの時、「辣魚湯は酒の酔いを醒ますのに最も良い」と思った。魚湯(魚のスープ)が来ると、李逵は先ず宋江が「本当に美味しくない」と思っていた魚湯とスープの中の塩漬けの魚を手で直接すくい上げ、「骨もろともいっしょに噛み砕いて食べてしまった。」その後、「ちゃんと羊肉だけ売るよ、牛肉は売らないよ」と呼ばわっていたその店の店員に怒って言った:「こんな無礼は許せない。騙して私に牛肉ばかり食べさせ、羊肉は売らずに私に食べさせないなんて!」羊肉がテーブルに持って来られると、「李逵はそれを見ると、何も聞かずに、大きな塊を掴んで、夢中で食べ出し、あっという間に、この三斤の羊肉は無くなってしまった。」

  李逵は荒くれ者だが、このことは彼が美食家になることを妨げはしないようだ。彼は漢字の偏や旁を分解する方法を多少は知っていたようで、明らかに、“魚”に“羊”を加えると、“鮮”の字になる。

(この項続く)


【原文】沈宏非《食相報告》四川人民出版社2003年4月より翻訳

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