中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

胡錦涛主席、カナダG20首脳会議でのスピーチ(全文)

2010年06月30日 | 中国ニュース

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  6月27日のカナダでのG20首脳会議での中国・胡錦涛主席のスピーチ全文の翻訳をお届けする。スピーチの中で使われている成語、興味深い表現は、訳の後ろに括弧をつけて表記した。

    心を一つに協力し、共に未来を創り出そう(“同心協力、共創未来”)
             G20首脳第四回サミットでのスピーチ
              (2010年6月27日 カナダ・トロント)
               中華人民共和国主席 胡錦涛
               2010年6月28日 来源:人民網


 尊敬するハーパー総理、ご出席の皆さん、
 トロントでG20(“二十国集団”)首脳第四回サミット(“峰会”)に参加し、皆さん方とともに、世界経済の全面回復を推進するというこの重大な議題を討議できることをうれしく思います。最初に、私は謹んで、ハーパー総理とカナダ政府が今回のサミットのために行った積極的な努力と周到な手配に対し、心からの感謝を申し上げます。私はまた皆さんが上海万国博覧会に対し行った貴重な支持と支援に感謝を申し上げます。

  G20のメンバーと国際社会の共同の努力の下、世界経済は次第に回復してきている。しかし、回復の基礎は安定しておらず、プロセスの不均衡があり、やや大きな不確定性が存在する。一部の国の主権債務リスクが引き続き上昇し、いくつかのシステムの重要性や金融機構の問題が集中的に明るみにされ、主要通貨の為替レートが大幅に変動し、国際金融市場の動揺が止まらず、大口商品(“大宗商品”)の価格が高位変動し、様々な形式の保護主義が明らかに増加している。このことは、国際金融危機の深層での影響はなお消失しておらず、世界経済のシステム的、構造的リスクは依然として充分に突出していることを表している。私たちは国際金融危機の深層での影響の重要性と複雑性を深刻に認識し、共に助け合い(“同舟共済”)、協力して共に勝利する(WIN-WIN。“共贏”)という精神を引き続き発揚しなければならない。

主権債務:一国が自国の主権を担保に海外(それが国際通貨基金であれ、世界銀行、或いはその他の国であれ)から借り入れた債務のこと。過去、1990年代にアルゼンチン、2009年11月にドバイで主権債務事件が発生している。

  ピッツバーグ・サミットで提出した、「力強く、持続可能で、バランスの取れた成長の枠組み」(“強勁、可持続、平衡増長框架”)は世界経済の長期的な健全な発展に対し、重要な意義を持っている。世界経済が一日も早く力強く、持続可能で、バランスの取れた成長に入るよう、私は以下の提案を行いたい。

  第一、G20を国際金融危機に有効なメカニズム(“机制”)から国際経済協力を促進する主要なプラットフォーム(“平台”)に転換するよう推進する。現在、世界経済の情勢は依然たいへん複雑であり、G20が指導的役割を発揮する必要がある。私たちは長期的視野に立ち(“着眼長遠”)、G20の互いに刺激し合う(“協同刺激”)ことから成長の歩調を合わせる(“協調増長”)ことへの転換、短期的応急措置(“短期応急”)から長期的に効果のある管理(“長効治理”)への転換、受動的対応(“被動応対”)から主体的計画(“主動謀劃”)への転換を推進しなければならない。G20メンバーのマクロ経済政策の協調を強化し、合理的な政策力を維持し、主権債務危機の発生した国家が直面している困難を克服することを支援しなければならない。慎重かつ確実に(“審慎穏妥”)経済刺激政策から撤退するタイミング(“時机”)、テンポ(“節奏”)、強度(“力度”)を把握し、世界経済復興の形勢(“勢頭”)を強固にしなければならない。過去3回のサミットで行った決定と達成した共通認識を全面的に履行(“落実”)し、G20の信用と効力を共同で維持し、順を追って一歩一歩進め(“循序漸進”)、共存共栄する(“互利共贏”)という原則に基づき、G20のメカニズム化建設を推進し、各種の矛盾と不一致を適切に処理し、G20サミットのメカニズムが健全な軌道の上を前に向け発展することを確実なものとしなければならない。G20のメカニズムと他の国際組織や多角的メカニズムとの関係をうまく処理し、G20が国際経済協力とグローバル経済管理で中心的役割を発揮する(“発揮核心作用”)ようにしなければならない。

 第二、公平で、公正で、寛容で(“包容”)、秩序ある国際金融新秩序を早急に打ち立てる。私たちは国際金融危機の深刻な教訓をしっかりと心に刻み(“牢記”)、根本から改革を行い(“正本清源”)、症状に合わせて処方し(“対症下薬”)、簡単で実行し易く、責任の追及が容易である(“簡単易行、便于問責”)という原則に基づき国際金融監督管理改革を推進し、実体経済の発展に有利な国際金融体系を建設しなければならない。厳格な資本とレバレッジ率(“杠杆率”)の要求を定め、シャドーバンク(“影子銀行”)体系を管理監督対象に組み入れ、グローバルな統一の会計基準を制定しなければならない。システムの重要性と金融機構の管理監督を着実に強化し、必要な予防的措置を採り、リスク投機が過度になるのを防止しなければならない。国際的管理監督を中心とするという原則と標準の一致性を強調し、同時に異なる国の金融市場の差異性を十分に考慮し、金融の管理監督の的確性と有効性を向上しなければならない。信用格付機構(“信用評級機構”)への管理監督を強化し、信用格付機構への依存を減少させ、信用格付機構の行動基準と問責制度を完備させ、とりわけ客観的、公正、合理的、統一的な主権信用格付方法と基準を制定し、格付結果が正しく一国の経済状況と信用格付に反映されるようにしなければならない。引続き国際金融機構改革を推進し、国際通貨基金の拠出分担金の調整を加速し、より多くの新興市場国家と発展途上国の人員の国際金融機構の幹部への就任を推進し、発展途上国の代表性と発言力を向上させなければならない。国際通貨基金の能力建設と監督改革を強化し、各方面、とりわけ主要な備蓄通貨の発行経済体のマクロ経済政策の監督を強化しなければならない。

杠杆率:レバレッジ率。レバレッジ(leverage)とは、経済活動において、他人資本を使うことで、自己資本に対する利益率を高めることで、その高まる倍率がレバレッジ率。レバレッジの原義は「てこ」。レバレッジ率は一つの企業の資産負債表上のリスクと資産の比率である。レバレッジ率は企業の負債リスクを評価する指標であり、企業の負債返済能力を側面から反映している。

影子銀行:シャドー・バンク。またはシャドー・バンクシステム(Shadow Banking system)といい、不動産貸付を有価証券に加工し、資本市場で取引し、不動産業の伝統的な銀行システムが担当する融資機能を次第に投資に切り替えたもので、銀行の証券化活動に属する。

  第三、開放的で自由なグローバル貿易体制の建設を促進する。私たちは実際の行動により様々な形式の保護主義に反対し、自由貿易の提唱と支援を堅持し、商品、投資、サービスに新たな制限措置を設けないよう、引続き承諾し、厳格に遂行する。先進国はより開放を進めるという態度で国際貿易の発展を促進させ、共存共栄、共同発展の原則に基づき、対話協調による貿易摩擦の適切な処理を堅持しなければならない。ドーハ・ラウンド(“多哈回合”)の権限授受と確定事項は既に成果が出ており、現有の交渉文書を基本とすることを原則とし、ドーハ・ラウンドの交渉が全面的に、バランスの取れた成果を上げ、できるだけ早くラウンドの目標が実現し発展するよう推進しなければならない。

 ご出席の皆さん、

 私たちは力強さ、持続性、バランスの取れた成長の三者の有機的統一をしっかりとつかまなければならない。力強い成長の確保は当面の世界経済発展の主要任務であり、持続可能な成長は長期目標であり、経済発展方式の転換を通じてバランスのとれた成長を実現することは客観的な要求である。私たちは積極的に力強い成長を推進し、実体経済の発展に力を入れ、民衆の就業を促進し、新興産業分野での国際協力を強化し、前進の中で困難を克服し、成長の中で問題を解決しなければならない。私たちは持続可能な成長の維持に力を入れ、環境の持続性を維持するだけでなく、財政、通貨、貿易、産業等の政策でも持続性を維持し、マクロ経済の変動やリスクを減少させなければならない。私たちは、バランスのとれた成長の実現に努め、各国の国内の異なった地域、異なった産業のバランスのとれた成長を実現するだけでなく、異なった国家と地域のバランスのとれた成長を実現しなければならない。世界経済の力強い、持続可能な、バランスのとれた成長を実現することは、長期にわたる複雑なプロセスであり、たやすく成功できる(“一蹴而就”)ものではない。根気よく続け(“持之以恒”)、あくまでもやり通すだけでなく、相手国の国情にも配慮し、各国の発展の道筋、発展モデルの多様性を尊重しなければならない。

 中国は経済発展の過程で絶えず経済の力強い成長の推進に努力し、1978年から2008年までの中国経済の年平均成長は9.8%であった。国際金融危機の発生以来、国際金融危機の衝撃に対応する一括計画(“一攬子計劃”)と政策措置を、中国は全面的に実施し、絶えず豊かで完全なものにしてきた。2009年の中国経済成長は8.7%で、地域と世界の経済復興に自ら貢献した。2010年、中国経済は引き続き安定した成長局面を維持し、第1四半期の経済成長は11.9%であった。中国は終始、成長の持続性を重視し、財政赤字をGDPの3%の範囲内にコントロールした。今年から、私たちはマクロ経済政策の連続性と安定性を維持すると同時に、新たな形勢や状況に基づき政策の的確性(“針対性”)と弾力性(“霊活性”)を高め、経済の安定した成長の維持、経済構造の調整、インフレ予測管理の関係を的確に処理し、経済成長の持続性の強化に力を入れた。中国は一貫してバランスのとれた成長を高度に重視している。国際金融危機の衝撃への対応の過程で、中国の内需拡大政策は明らかに効果をもたらし、2009年に貨物輸出総額が16%減少する情況下、社会消費小売総額は17%近く増加し、全社会固定資産投資は約30%増加、経常収支黒字(“経常項目順差”)のGDPに占める比率は6.1%にまで低下した。年初来、中国の貿易黒字(“貿易順差”)は引き続き大幅に減少し、経常収支は均衡方向に加速し、経済の調和のとれた発展の良好な形勢はより一層強まった。

 私たちは、中国は人口が多く、基盤が脆弱であり(“底子薄”)、都市と農村、地域の発展に不均衡があり、環境と資源の束縛する矛盾が突出しており、とりわけ中国は毎年、都市部で就業の手立てが必要な労働力が2400万人おり、大量の農村の余剰労働力を就業させる必要があり、同時に相当数量の貧困人口が未だ貧困から脱却できていないということを、はっきりと認識している。これらの困難や問題を解決するため、私たちは人を本にし、持続可能な発展に全面的に釣り合う科学発展観を堅持し、経済発展方式転換の加速を、科学発展観を貫徹実行する重要目標、戦略措置とし、国民収入分配構造、都市構造、地域構造、産業構造の調整を重点的に加速し、科学技術のイノベーション(“創新”)の推進を加速し、現代農業、エコロジー(“生態”)文明、文化産業、社会保障体系の建設を加速し、経済社会の協調発展の推進に努めていく。これらの調整と転換は中国経済の全面的に歩調の合った持続可能な発展に有利であるだけでなく、世界経済の発展にも積極的な影響をもたらすだろう。経済発展方式の転換は長期的で複雑なプロセスで、困難に満ちた努力が必要である。中国は各方面が互いに手本にし合い、長所を採って短所を補い、平等に協力し、共に発展し、世界経済がより合理的な産業分業構造、よりバランスのとれた金融貿易構造、より科学的な資源配置構造、より公平な利益享受構造を形成することを推進し、世界経済の持続的で調和のとれた発展を実現することを願っている。

 ご出席の皆さん、

 世界経済の長期的持続的成長を真に実現するためには、幅広い発展途上国が十分に発展することを支援し、南北間の発展の格差を縮小しなければならない。国際金融危機の間、発展途上国が受けた衝撃はたいへん厳しいもので、国際金融危機の影響により直面する困難を克服するのはたいへん深刻である。G20のメンバーは主に先進国、新興市場国家、工業化レベルの比較的高い発展途上国であり、メンバーの国々のGDPは世界の85%を占めるが、私たちは世界の国家総数の85%以上のその他の発展途上国の発展への訴求を無視することはできない。G20は発展の問題の解決のため、より強い政治的原動力、より多くの経済資源、より良い制度保障を提供する責任がある。国際金融危機により、国連の“1千年発展目標”の進展は新たな困難に直面し、2015年までの完成予定目標には、責任が重大で前途は遠い(“任重道遠”)。私たちは発展の問題にもっと多くの実際の行動を採り、発展の資源を保障し、発展のメカニズムを完備し、発展の協力を促進し、予定通り“国連1千年発展目標”が実現するようにしなければならない。先進国は着実に、政府の発展への援助の承諾、市場開放、財務減免の約束を果たし(“兌現”)、発展途上国が自らの発展能力を向上するようにしなければならない。世界銀行、国際通貨基金等の国際金融機構の資源は優先的に発展途上国、とりわけ最後進国の支援に用いられなければならない。

 国際金融危機の発生以来、中国は様々な方式、ルートを通じ、発展途上国に援助を提供してきた。私たちは国際通貨基金に500億米ドルの増資を行い、資金を最後進国に優先的に用いるよう明確に要求した。私たちは関係国、地域と総額6500億人民元の二国間通貨互換協議に署名し、共同で国際金融危機の衝撃に対応した。私たちは100億米ドルの中国-ASEAN投資協力基金を設立し、ASEAN諸国に150億米ドルの信用貸付支援を提供し、“チェンマイ提議”(“清邁倡議”)による多国間化とアジア債権市場発展の提唱を主要な内容とする東アジア財政金融協力の推進し、地域経済の金融情勢の安定維持に積極的に参与した。私たちは“上海協力機組織”の他の構成国に100億米ドルの信用貸付を提供し、支援した。私たちはアフリカ諸国に100億米ドルの優遇借款を提供し、アフリカの重債務困窮国と最後進国の債務を免除し、アフリカの中国と国交のある最後進国に、95%の製品の関税免除待遇を徐々に付与した。私は中国政府を代表し、中国は“南南協力”(発展途上国間の協力)の枠組みの下、引続き発展途上国に分相応の(“力所能及”)援助を提供し、発展途上国が発展を実現できるようできるだけの支援を行うことを、厳かに承諾する。
 ご出席の皆さん、

 G20と世界の未来は皆が共同で作り出さねばならない。私たちは心をひとつにし(“同心同”)、手を携え肩を並べ(“携手并肩”)、世界経済のよりすばらしい明日を企画し建設していきましょう。

 ご清聴ありがとうございました。

(本誌トロント6月27日電)

 マスコミ報道では、事前に中国政府が人民元切上げ容認に動いたということで、今回のスピーチで人民元切上げ問題が取上げられることが期待されたものの、触れられなかったことの失望感から、このスピーチの具体的内容はあまり取上げられていないようだ。しかし、国際金融危機後の世界経済が、ギリシャの信用危機で、再び暗い影がさす中、世界経済を牽引する中国のトップが、前回のピッツバーク・サミットで決議された「持続可能な成長の維持」という視点から、金融システムの枠組みの見直し、自由貿易・市場開放の堅持の主張は、説得力を持っており、もっと注目してよいのではないかと思う。



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