雨の日のバスにこもったにんげんの息のとろみに体を入れる
文字もたぬことの清しさ思いつつ車中にひらくアイヌ語辞典
朝な夕な駅にこごっているひとの灰色の荷を鷗がつつく
ある朝はちぎれるように立ち上がり誰の名前を呼んでいるのか
紙パック入りの緑茶をすすっては道ゆくひとに何かつぶやく
最下部のレイヤーに朱を塗りこめておりてゆくとき匂う指先
返却用ポストの口にさしこめばDrrと落ちてゆく資料たち
繰り返すアンドゥ 雨はやまなくてどうしているかわたしの犬は
肩書きで呼ぶそのひとのワイシャツの水際のような飾りステッチ
労働というには少しにぎやかな日々に付箋を増やしつづけて