木のように黙す五月をともにして犬の寝言におよぶ湿りは
あかときに口をひらけばざろざろとこぼれる羽蟻 人をにくんで
出かけたい出かけましょうとひとしきり手足が騒ぐ六月の朝
獣園は門まで老いて易々とわたくしたちの体を通す
塗り重ねられたペンキのみずいろを今日の水際として見下ろせば
オルゴール仕立ての淡いおんがくに人鳥もわたしも濡れている
ゾーンから次のゾーンへ心臓をつよくはかなく弾ませながら
山脈のような背ぼねを軋ませて虎はなにかを咀嚼している
そこここに干し草の香がたつことをうたがわず嘆かず山羊たちよ
息ふとくみじかく吐いて今生の北極熊が水からあがる