目に見えぬ手に揺すられて雪雲が困ったようにこぼす粉雪
ごめんね、と何度も思う 真冬日の犬はすっかりたいらになった
欠けませんようにお前のよいところよくないところ増えますように
塩の味ばかり際立つあけがたの夢でふたたび命をおとす
そのように鎮まる こころをモスクワにあそばせたまま皿を磨いて
骨格を筋肉を照らし合うようにあいしていたさ それはほんとう
隅ばかり見ておりましたどこまでも近似値でしかない一日を
祈らなくなって久しい 淹れたての妙に分厚いコーヒーを飲む
挨拶のかわりに刻む青いもの ななくさなずなとんどのとりと
火の重さたしかめながらゆく日々の篝火はひとりにひとつきり