北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」01月号(2013)

2013-02-02 | 未来

息をのむように鎮まりそののちをせいせいと散る花のすずしさ

金文字の浅いくぼみにひかり射し真昼の書架をわずか蔑する

旧聞のような暮らしをたのしんで破れ紙にくるむ螺子のいくつか

裂けながら進むあなたを川として尊ぶ 仕草のうつくしい川

兆しつつ揺れやまぬ日は金輪の際におおきく息ふきかけて

わたくしを使い果たして冬になる(毛布のようにふるまうな、ゆめ)

隅々を濁らせたままゆうぐれの羊羹めいた列に加わる

蕩尽をゆるしあうときにんげんの皮膚の甘さはとめどもなくて

生き死にを口にしながら盤上に星をいくつも置いてゆくひと

刻々と老いる体であそびたい(まだあそびたい)カステラを焼く