北緯43度

村上きわみの短歌置き場です

「未来」08月号(2012)

2012-09-06 | 未来

揺れているみどり、くさはら、何かいるらしい、つたない、雲雀だといい

暮れてゆくにまかせて(いいえ、いっしんに背いて)ごはんが炊けましたよ

傷口を焼くまで待っていてくれる春はかしこい犬に似ている

(太らせておいたの)ひどく甘そうな球根ふたつみつくれるひと

草褒めの風なのでしょう野を乱しさんざんひらいては綴じてゆく

荒く碾けば豆の記憶が舌先に触れてくる お前、さびしかったね

土のことは土に訊きたい火のことは火に教わってきたのですから

傾きを変えて続きを読んでいる「これ、やばいよ」ときわまりながら

ぞんぶんに油断しているいきものはどれもかわいいし、かわいそう

にほんじゅうのひとが忘れたころに咲くわたしの桜を観に行こうかね