星を焚く真冬(どなたのお名前もうっかり口にしませんように)
降りながらすこしくるってゆくでしょう雪の甘さの、埒があかない
あめゆきに舌をさらして記憶からいちばん遠いふゆを歩いた
ただならぬことの次第を告げにゆく痩せた冬田に鳥を招いて
泣き本のような台詞を口にして来世は閂になるつもり
んくんくと水飲むひとの、さかさまの、夢の名残に塩ふりこぼす
泣いていいと言えば泣きだす(それでいい)飛ぶもののおなかはやわらかい
冬の舌が地面を舐めるまひるまにあなたはささやかな火を嘔吐す ※ルビ「嘔吐」もど
とりの付箋、さかなの付箋、じゅんぐりに剥がして夏の書物を閉じる
いくばくか滴るものを掌にうけて冬ざれの野に淡く礼なす ※ルビ「礼」いや