042:豆（村上きわみ）

うちがわはおそろしいね　浸されてどの豆もみなつよく漲る

041:こだま（村上きわみ）

あなたの　すこしくずれたところからふるいこだまを取り出している

040:道（村上きわみ）

道なりにつづくカンナにほめられて明らかになってゆく夏の空

039:乙女（村上きわみ）

ていねいに夜をほころぶ乙女座のひかる麦の穂見上げています

038:灯（村上きわみ）

絞られたひかりの先にいちまいの瀑布ひろげている幻灯会（え）

037:花びら（村上きわみ）

あれはマナ（ふるるふるると花びらは棺の上に）あれはマナです

036:組（村上きわみ）

ひよこ組の大きな襟にせがまれて夏草を漕いでゆくいっしんに

035:株（村上きわみ）

切り株の、そこだけがとてもあかるくて待ってなさいと言われて待った

034:シャンプー（村上きわみ）

かみさまのことを知らない僕たちのシャンプーハットを溶かす閃光

033:鍵（村上きわみ）

あなたまでゆくのか春の鍵盤に淡い指紋を残したままで

032:上海（村上きわみ）

十文字にいましめられて上海の蟹はどんなにかさびしかろ

031:寂（村上きわみ）

一日のおわりに凝る静寂をわかちあう鳥と樹木のように

030:政治（村上きわみ）

あからさまにあかるいあそびあの人をあくまで政治的においつめる

029:草（村上きわみ）

だれのこともにくみたくないひつじ草ねむるわたしのたてる音　ざざ

028:おたく（村上きわみ）

いざやいざや見にゆかん　なおたくらみの外にこぼれるさくらはなびら