創作日記&作品集

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❤連載小説「Q」第二部7

2020-06-05 06:22:39 | 小説
連載小説「Q」第二部7
「もう少しゆっくりしていったら。何もないけれど」
本当に何もない部屋だ。
室温が低めだ。
少し寒い。
「企画室長って名前だけなの。一人減るからね」
「AIが室長ですか。やはり室長の椅子に座るんですか」
「坐らない。前からずっとみんなの端末の中に住んでいるのよ。時々踊ったりしているの。阿波踊りなんかとても上手よ」
「見てみたいですね」
「今度見せてあげる。大谷光一君は私にとって一個のデータに過ぎないの。とても可愛いデータよ。117,000個のデータの中の一つ。もう帰ってもいいよ」
光一は一礼して、踵を返した。
「君誰かに似ていない?」
振り向くと誰もいないが、かすかな気配がした。
「知りません」
「そう、私は世間に疎いから」
「二刀流ですか」
「そう、それそれ」
「よく知りません。僕も世間に疎いから」
「それともう一つ。田代順平さんって知っているよね」
「僕が最初で最後の愛慕を売った人です」
「そうよね。昨日も行ってきた」
「えっ、何のことですか?」
 Qは、「チェ」と舌打ちをして、気配も消えた。
連載小説「Q」第一部をまとめました。


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