ヘヴン・川上未映子著を読了。以下、未読の人はストップです。これは大変な小説です。「いじめ」をあつかっていますが、テーマは「いじめ」そのものではない。「人間の本質」と言ってもいいと思う。いじめられているのは主人公の僕とコジマ。僕は斜視でロンパリと呼ばれている。コジマは薄汚く、女子に突き飛ばされたりしている。いじめる方は二ノ宮と百瀬。二ノ宮が首謀者でひたすら僕をいじめる。二ノ宮に関していじめる以外の描写は少ない。百瀬はいじめを傍観している。いじめのアイデアを出すこともある。小説は僕とコジマの文通から始まる。簡潔なすきのない文章でつづられていく。コジマは僕の目が好きだという。それはしるしだから。圧巻は後半の僕と百瀬の論争だ。私はドストエフスキーの作品を思い出していた。百瀬は病気を持っている。百瀬は「みんな決定的に違う世界に生きているんだよ。最初から最後まで。後はそれの組み合わせでしかない」と言う。人間関係の否定。斜視の手術をコジマに話した時から、二人の関係は壊れ始める。斜視の手術をした後、僕は美しい世界を手に入れる。『映るものはなにもかもが美しかった。 しかしそれはただの美しさだった。誰に伝えることも、誰に知ってもらうこともできない、それはただの美しさだった』で小説は終わる。