関西人の正体 (朝日文庫) | |
井上章一 | |
朝日新聞出版 |
【内容紹介】
関西弁は議論に向かない、京都を首都だと言い切る京都人、何でも値切る関西人。典型的な関西に対する偏見の数々を、ときに茶化し、ときにまじめに打ち壊す。読み終えたとき、あなたの関西を見る眼は変わっています。京都のはずれから考える、独創的で面白すぎる関西論!
○
冒頭の一行目を読んで驚きましたがな。こう記されておます。
私は、京都に生まれ、京都に育った。今も、京都に住んでいる。とうぜん、日常会話も京都弁。いわゆる関西なまりになる。
井上はん本人があとがきで、「今なら、こういう物言いを、ぜったいにさけるはずである。自分が京都人であるかのような書きっぷりには、まずおちいるまい」と書いてはります。なんせこの本の単行本は1995年に上梓されており、著者が京都との精神的決別を綴りはった『京都ぎらい』が出版される20年も前のことだす。
20年も経てば、人の気持ちも変わってしまうし、街も変わっていきましょう。
この本が書かれた当時の関西は、経済・文化が凋落の一方だしたが、今では大阪にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)があり、京都は世界遺産がタントある外人さんにも人気の観光地やし、神戸は震災から目覚ましく復興しました。奈良も地味に頑張ってるし、滋賀はどう? 和歌山は元気か?
本の内容は関西万歳的なものとはほど遠く、当時の斜陽関西気運の中で書かれた卑屈な関西人のボヤキとも取れるエッセイだした。
○
東京のマスコミが作りあげた紋切り型の関西のイメージは、今も根強く残ってるようだす。特に「大阪」。
下品、汚い、ケバい、怖い……というネガティブなイメージが浸透してまんな。兵庫人と滋賀人から、面と向かって「大阪、怖いから行くのイヤや」と言われたことがありましたがな。そやけど、「オイラさんて、ホントに大阪生まれの大阪育ち?」と訊ねられることもありまっせ。他県人から見ると、オイラは大阪イメージから真逆の人なんやそうだす(←ここ重要)。
よく東京発のテレビなんかで紹介される「大阪」に、道頓堀とか新世界の風景が映りますけど、大阪人から言わせてもらいますと、あの辺りは大阪の中でも最もコテコテでケバケバな特殊なエリアなんだすから(個人的には鶴橋もw)。
各家庭にたこ焼き器は一台あるやろうし、阪神タイガース・ファンも多いけど、ヒョウ柄服着てるおばちゃんは、なかなかいてまへんのやで。
○
アナウンサーの標準語はフツーに聞けるんだすが、かつてオイラが東京へ行った時、下校中の小学生二人組が「○○でさあ」と会話してるんを聞いてムカッとしたことがあるんだす。大人ならずも、子供までが……って感じだす。こんな気持ち、東京生まれの東京育ちの人には、わかってもらわれへんやろなあ。
当時の日本は、東京一極集中のイケイケ的な風潮が蔓延してましたが、大阪は反東京の人が多かっただす(特に阪神ファン)。
神田神保町の蕎麦屋でうどんを注文するほどに反東京的なオイラでありましたが、時は流れて今、思うに「東京」は「東京」、「大阪」は「大阪」、「京都」は「京都」でよろしいんやなかろうかと。比較して甲乙つけていく発想自体がもう「古い」んやないかと……思うんだす。
未だに経済・文化の中心地たる「花の都・東京」も、なんとのう20年前の大阪、京都同様に凋落しつつある感じがしてきてるんだすが、気のせいだっしゃろか? ようわからんけど。
○