世界で唯一の超大国である米国の動向、とりわけその世界戦略を知ることはいかなる国にとっても不可欠なことである。物事を考える上で最も大きな影響力を持つファクターを中心に考えるのは、ものの道理とでもいうべきだからであって、この際、親米とか反米とかいった情緒的な要素は排するべきであろう。ましてや、対米追随などという批判は的外れである。米国が、好き嫌いに関わらずその動向を知るべき対象であるというに過ぎない。米国の世界戦略のうちアジア太平洋地域に関するものは、このブログでもたびたび取り上げているが、今回は大西洋同盟すなわち欧州に関する米国の見方をご紹介したい。以下にご紹介するのはロサンゼルスタイムズ紙の2月5日付けの論説である。そのような論調は、米国の有力な外交専門誌『フォーリンアフェアーズ』などでも展開されているものであり、一つの大きな潮流であると考えて間違いではない。以下の文脈の中で「欧州」を「日本」に置き換えて読んでみることは有益な示唆を与えてくれよう。さらに言えば、我が国とそれを取り巻く環境に関しては、対テロ戦争のみならず、というかそれ以上に中国の軍事的台頭という明確な脅威が存在することに思いを致すべきである。また、露骨なまでに自国の国益を追求する姿勢は多少なりとも見習うべきである。
『対テロ戦争 欧州は自覚を』(ロサンゼルスタイムズ06年2月5日)
ブッシュ米政権は当然ながらNATOを新たな進路へ導こうとしている。欧州防衛中心の軍事組織から、欧米へのさまざまな脅威に対して攻撃ができるような組織への転換を目指している。これは明らかに米国の国益にかなう。米軍はかなり無理をしてイラクとアフガニスタンに展開しているからだ。だが、これは同様に欧州の利益でもある。マドリードとロンドンで起きた爆弾テロは、テロが米国だけの問題でないことを示した。
それだけにオランダ国会での自らの軍事的役割をめぐる内向きの議論は嘆かわしい。NATOは昨年12月、アフガニスタン駐留兵を9000人から16000人に増強し、テロに苦しむ同国南部に任務を拡大することで合意した。そうなれば米国は兵士数千人を撤退させることができ、別の兵力をアフガン東部に集中させられる。この計画は、オランダで反対意見が高まって危険にさらされた。ただ、オランダ国会は数週間の議論の末に今月2日、自国兵1400人を従来より危険の増す地域に派兵することでようやく一致した。
オランダは普通、米国の信頼に足る同盟国である。だからこそ、オランダのしり込みは格別気がかりだ。アフガン任務反対論の先頭に立った中道左派政党・民主66は最後には敗れたが、同党は国民の気分を反映していた。最近の調査では、半数がアフガン派兵に反対し、賛成は38%だけだった。
このことで誰に責任があるのか、その見きわめは難しい。テロの脅威に晒されていることを自覚できないオランダ人が悪いのか、ブッシュ政権が悪いのか。欧州の人々は、米政権の外交上の単独行動的取り組みを懸念している。
しかし、結局のところ、欧州大陸が対テロ戦争で二次的な現場でないことを、欧州の人々が認めることが重要なのだ。欧州は主戦場なのである。
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『対テロ戦争 欧州は自覚を』(ロサンゼルスタイムズ06年2月5日)
ブッシュ米政権は当然ながらNATOを新たな進路へ導こうとしている。欧州防衛中心の軍事組織から、欧米へのさまざまな脅威に対して攻撃ができるような組織への転換を目指している。これは明らかに米国の国益にかなう。米軍はかなり無理をしてイラクとアフガニスタンに展開しているからだ。だが、これは同様に欧州の利益でもある。マドリードとロンドンで起きた爆弾テロは、テロが米国だけの問題でないことを示した。
それだけにオランダ国会での自らの軍事的役割をめぐる内向きの議論は嘆かわしい。NATOは昨年12月、アフガニスタン駐留兵を9000人から16000人に増強し、テロに苦しむ同国南部に任務を拡大することで合意した。そうなれば米国は兵士数千人を撤退させることができ、別の兵力をアフガン東部に集中させられる。この計画は、オランダで反対意見が高まって危険にさらされた。ただ、オランダ国会は数週間の議論の末に今月2日、自国兵1400人を従来より危険の増す地域に派兵することでようやく一致した。
オランダは普通、米国の信頼に足る同盟国である。だからこそ、オランダのしり込みは格別気がかりだ。アフガン任務反対論の先頭に立った中道左派政党・民主66は最後には敗れたが、同党は国民の気分を反映していた。最近の調査では、半数がアフガン派兵に反対し、賛成は38%だけだった。
このことで誰に責任があるのか、その見きわめは難しい。テロの脅威に晒されていることを自覚できないオランダ人が悪いのか、ブッシュ政権が悪いのか。欧州の人々は、米政権の外交上の単独行動的取り組みを懸念している。
しかし、結局のところ、欧州大陸が対テロ戦争で二次的な現場でないことを、欧州の人々が認めることが重要なのだ。欧州は主戦場なのである。
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大雑把に<先進文明国>という括りで言えば全く仰るとおりですし、我が国としても地球の反対側で起こっている他人事みたいに傍観していてはいけないですよね。そういう側面も含めた危機管理と安全保障のあり方を真剣に考え、その都度「日本として何が出来るのか」「どうあるべきか」ということを主体的に考えつつ動いていかねばなりません。そういう姿勢を見せずに受身に動いているのを対米追従だ何だというのは全くのお門違いなのだということを肝に銘じるべきではないでしょうか。
>地球の反対側で起こっている他人事みたいに傍観していてはいけないですよね
多くの人が、国境が低くなったと散々口では言うのに、そういうグローバルな安全保障上の脅威に対応しようという意識が低いままなのは困ります。単に従来どおり国家安全保障に全体に対する意識が欠如しているということで、不思議なことではないともいえますが…。
なんだか、最近情報漏洩の多発を見せ付けられ、対テロ戦争を意識する以前の問題のような気もして脱力感を覚えます。海自の暗号が個人のパソコンからインターネットを通じて漏れるなんてことまで起こる始末で遺憾極まりないです。