猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

「一国二制度」はトロイの木馬になるか?―香港で民主化要求デモ

2005-12-05 23:48:15 | 台湾・中国
 台湾の統一地方選挙に関するエントリーの中で、最高に楽観的なシナリオとして、「もし台湾が一国二制度のもとで中国に併合されても、民主化の拠点となり中国にとって必ずしも安泰な話ではない」というような趣旨のことを指摘した。それを示唆するかのように、香港で25万人もの人々を動員する完全普通選挙の早期導入を求める大規模デモが起こった。ましてや、台湾となれば2000万の住民が住んでいる。一層大規模な民主化運動が起こり得ると考えるのもあながち理にかなわないことでもあるまい。そうなれば民主化の「トロイの木馬」である。もちろん、だからといって台湾が一国二制度のもとで中国に統合されるのがよいなどという気は毛頭ない。そうなってしまったら、軍事的には琉球列島が最前線になり、自由対独裁の思想戦の主戦場は台湾ということになる。というか、そうなることを待たずとも、大陸の民主化勢力を陰に陽に支援するべきである。
 なお、統一地方選挙の結果については、台湾の人に聞いてみたところ、得票率が42%対52%なので、大騒ぎするような大敗でもないという分析であった。国政選挙ではなく、ましてや総統選挙でもないのだから、今回の結果だけで一喜一憂すべきではあるまい。ただし、遠い将来を見通した場合には、自由と民主主義の価値の重要性を台湾人が忘れてしまう危惧は完全には捨てきれないのは事実であろう。といって、その確率は今のところは、今回の香港での民主主義へのこだわりを見れば、それほど高くないと認識するのが妥当な線なのだろう。
 ところで、中国が台湾問題をめぐって、こちらとして、とってもらっては一番困る対応は、台湾をいきなり独立国として認め、経済関係に加えて同盟関係まで結ぶことを提案したり、ごく緩やかな連邦を目指したりすることである。ただし、これをやると軍が黙っていないだろうから、そんなことに踏み込める政権はそう簡単には現れない。それで、「利敵行為にもなるまい」と安心してこんなことを書けるのである。万が一実現してしまったとして、日米同盟の強化以外に方策はない。台湾問題の帰趨の如何に関わらず、日米vs中国の影響力争いは不可避である。


(参考記事)
[完全普通選挙の早期導入求め25万人がデモ…香港]
 【香港=吉田健一】香港で4日午後、行政長官選挙や立法議員選挙への完全普通選挙の早期導入を求める大規模デモがあり、主催者側の発表によると、約25万人が市街地をデモ行進した。
 参加者は当初予想の5万人を大きく上回り、香港市民の民主化を望む声の大きさが改めて示された。
 政府が10月に示した選挙制度改革案は<1>2007年の行政長官選では長官を選ぶ選挙委員を現行の2倍にする<2>08年立法議会選は直接選挙枠と職能代表枠を各5議席増やすという内容。
 民主派は改革案で完全普通選挙導入への道筋が示されなかったことに反発。具体的なロードマップを示すよう政府に求めており、同案が21日に立法議会(定数60)で採決されるのを前に、大規模デモで修正圧力を強めるのが狙い。この日の大規模デモを受け、中国・香港両政府が譲歩するかどうか注目される。
(読売新聞) - 12月5日0時13分更新


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