量的緩和政策の解除に積極的な日銀と、デフレ脱却重視に加えて増税を見据えて慎重論を唱える政府・与党の間で対立があるのではないかと指摘されている。どちらの言い分にも聞くべき点はある。私は、日銀の独立性を重視する立場から、政府が裁量的に金融政策に介入すべきではないと考えており、日銀法を改正して日銀の独立性を奪ってまで政府が介入するとの政府与党側の示唆は、あまり納得できるものではない。しかし、逆に日銀の独立性にこだわるあまり逆に景気自体を悪化させるという事態を招くようなことがあれば、それは本末転倒に過ぎる。
中央銀行の金融政策には、両極端のあり方として、全くその裁量に任せるというのと、あらかじめルールを決めておいてそれに従って遂行していくという方法がある。インフレターゲットは後者の一種に分類できるだろう。インフレターゲットという言葉からインフレを起こすという誤解を与えがちであるが、それは全然違って物価上昇率を一定の緩やかな値に固定するよう金融政策をとるというものである。例えば「物価上昇率をプラス2%に維持するようコミットする」といった具合である。逆に、それ以上の物価上昇も許さないということである。私はこのインフレターゲットを導入すべきだと考えている。ルールに基く金融政策の遂行は経済についての予測可能性を高め安定化する方向に作用すると考えられ、日銀と政府の無用な対立も回避できるからである。
(参照記事)
<日銀総裁>量的緩和政策解除、政府・与党との対立を否定
日銀の福井俊彦総裁は18日の会見で、量的緩和政策の解除に対する政府・与党からのけん制発言について「政府・与党と認識に相違はない」と述べ、政府・日銀の間に政策面での対立関係はないと強調した。「量的緩和解除の可能性が06年度にかけて高まる」とする日銀の見通しについても「変更はない」と表明。消費者物価指数(CPI)がプラス基調に転じるなどの条件が満たされれば、量的緩和解除に踏み切る意向を改めて示した。
量的緩和政策を来春にも解除するという日銀の見通しに対しては今週、政府・与党幹部から「時期尚早」との発言が相次いだ。国債30兆円枠を復活させ、財政再建を最優先課題に位置づける小泉内閣の方針に「日銀も協力すべきだ」との政治的圧力が高まっていることをうかがわせた。
福井総裁は同日の会見で「物価安定の下で持続的な成長を目指すという一番大事な点で、政府・与党との認識の相違はない」と説明した上で「CPIがマイナスで推移している状況下、引き続き量的緩和策を堅持する」と語った。現時点では量的緩和政策を解除する考えがまったくないことを示すことで、政府・日銀間の対立を否定した。
ただ、政府幹部から「デフレ脱却まで量的緩和継続」との声が出ていることには「異例の量的緩和を長く続け、インフレ目前まで引っ張ると(長期金利急上昇などの)反動が大きい」と反論。「デフレの定義は(物価や資産、経済活動全般など)見ている側面で違う。デフレ脱却宣言は政府もできないのでは」と語った。年末以降のCPIプラス転換が予想される中、量的緩和解除の条件を巡る政府・日銀の攻防が本格化しそうだ。
(毎日新聞) - 11月18日20時49分更新
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中央銀行の金融政策には、両極端のあり方として、全くその裁量に任せるというのと、あらかじめルールを決めておいてそれに従って遂行していくという方法がある。インフレターゲットは後者の一種に分類できるだろう。インフレターゲットという言葉からインフレを起こすという誤解を与えがちであるが、それは全然違って物価上昇率を一定の緩やかな値に固定するよう金融政策をとるというものである。例えば「物価上昇率をプラス2%に維持するようコミットする」といった具合である。逆に、それ以上の物価上昇も許さないということである。私はこのインフレターゲットを導入すべきだと考えている。ルールに基く金融政策の遂行は経済についての予測可能性を高め安定化する方向に作用すると考えられ、日銀と政府の無用な対立も回避できるからである。
(参照記事)
<日銀総裁>量的緩和政策解除、政府・与党との対立を否定
日銀の福井俊彦総裁は18日の会見で、量的緩和政策の解除に対する政府・与党からのけん制発言について「政府・与党と認識に相違はない」と述べ、政府・日銀の間に政策面での対立関係はないと強調した。「量的緩和解除の可能性が06年度にかけて高まる」とする日銀の見通しについても「変更はない」と表明。消費者物価指数(CPI)がプラス基調に転じるなどの条件が満たされれば、量的緩和解除に踏み切る意向を改めて示した。
量的緩和政策を来春にも解除するという日銀の見通しに対しては今週、政府・与党幹部から「時期尚早」との発言が相次いだ。国債30兆円枠を復活させ、財政再建を最優先課題に位置づける小泉内閣の方針に「日銀も協力すべきだ」との政治的圧力が高まっていることをうかがわせた。
福井総裁は同日の会見で「物価安定の下で持続的な成長を目指すという一番大事な点で、政府・与党との認識の相違はない」と説明した上で「CPIがマイナスで推移している状況下、引き続き量的緩和策を堅持する」と語った。現時点では量的緩和政策を解除する考えがまったくないことを示すことで、政府・日銀間の対立を否定した。
ただ、政府幹部から「デフレ脱却まで量的緩和継続」との声が出ていることには「異例の量的緩和を長く続け、インフレ目前まで引っ張ると(長期金利急上昇などの)反動が大きい」と反論。「デフレの定義は(物価や資産、経済活動全般など)見ている側面で違う。デフレ脱却宣言は政府もできないのでは」と語った。年末以降のCPIプラス転換が予想される中、量的緩和解除の条件を巡る政府・日銀の攻防が本格化しそうだ。
(毎日新聞) - 11月18日20時49分更新
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