自民・ANA、蜜月健在 羽田国際線枠で日航に完勝 安倍・稲盛会談実現せず 2013年10月6日 日経
「財務体質でかなり差が出ている。今後、競争環境にひずみが出る恐れがあり、日航の新規路線開設は抑制的に見る必要がある」。国土交通省航空局の平岡成哲航空事業課長は、ANAへの傾斜配分の理由を淡々とこう語った。
日航にとって羽田から新路線となる国の路線はすべてANAが取得。しかし、国交省に葛藤がなかったわけではない。伝統的に国交省は、日航とANAを競わせ利用者にとってサービス・価格面での価値を最大化するとの考えを持つ。
「こんなことは終わりだ」。昨年11月30日、羽田国内線の発着枠配分で全日空8便に対して日航を3便の配分を決めた直後、ある国交省幹部は傾斜配分の再度実施に否定的な認識を示していた。
しかし、今年7月の参議院選挙で自民が圧勝。さらに主要官庁の幹部級人事が、民主党色を払拭するため官邸主導で一新されたのを目の当たりにした。もはや巨大与党の意向を無視できる状況ではなくなった。
自民党議員らが主張したのは、昨年、8月10日に国交省が発表した「日本航空の企業再生への対応について」に基づく発着枠の判断。求めたのは突き詰めると、ANAへの配慮だったといえる。
2日、発着枠配分を受けANAは「当社グループの経営努力について認めていただいたことに感謝申し上げたい」との伊東信一郎社長のコメントを発表。今回、ANAが手にした果実は大きい。
日航に比べ手薄だったベトナムへの就航も羽田から可能になる。成長市場の東南アジア中心に日航にはない便を合計6便得たことで、年間売上高で約600億円、営業利益で約60億円のアドバンテージを半恒久的に確保できる。
それだけに、日航も今回の枠獲得に向け精力的に動いた。
「闘わなあかんな」。稲盛和夫名誉会長は前回の国内線とは異なり、日航として主張すべきことをしなければならないと思いを定めていた。
自民党やANAが過剰支援と主張する税制面での優遇や公的資金投入と更生法適用の同時適用などは、すべて合法的に実施されたもの。しかも、1万6000人もの人員削減などのリストラで自らの「血」も流し、業績回復は意識改革やコスト削減活動で成し遂げてきた側面も大きい。
ただ、稲盛氏自身が民主党に近かっただけに自民党から標的にされやすい素地はあった。そこで、稲盛氏は動く。今年5月、安倍晋三首相との会談を申し入れ、事態打開を試みた。しかし、調整は不調に終わり、会談はいまだ実現していない。
そんな日航の事情をよそに、9月14日、安倍首相はANAのロビー活動の実行隊長を務める石坂直人調査部長と富士山麓のゴルフ場でプレー。今夏、自民有力議員の外遊は多くが全日空機を利用するなど、再生過程で日航と民主党が接近したのに対しANAは自民と親密度を増していた。日航ロビー部隊も自民議員に対して猛烈なアプローチを繰り返したが効果は限定的だった。操縦士出身の植木義晴社長もなす術もなかった。
ライバル会社との競争環境を顧みない過剰な支援による再生が行われ、「到底自力では追いつけない再生がなされた」(伊東社長)とのANAの主張は説得力を持つ。しかし、今回の配分結果はそうした「理」の力だけでなく、自社の主張を議員に理解させ、実益に結びつける「ロビー力」の差でもあった。
当面の羽田発着枠配分はこれで打ち止め。しかし、2020年の東京五輪に向け東京上空の飛行が可能になれば新たな枠が生まれることになる。
役所の裁量による枠配分は政治の影響を受けやすい。だがオークション方式なども採用が難しい。財務力のある日航が有利になりANAとの格差が広がりかねないからだ。枠配分に政治が介入する国もあるが主な自国航空会社は1社でもめ事は起こりにくい。人口が特定地域に集中する狭い国土に大手2社がある日本では妙案がない。
2日、枠配分の政治介入を嫌気して日航株は1.6%安の5880円となった。ただ、一方のANAも枠配分は好材料のはずだが1円安の216円に下落。「枠をもらったのはいいが、政治は後々高くつくぞ」。そんな警告を市場は発しているのかもしれない。
羽田枠獲得合戦について、日経でも特集記事を組んでいたので、こちらの記事も載せたいと思います。
ん…。1万6000人もの人員削減と聞くと一見厳しく聞こえますが、JALグループ全体の約48000人のうち約3分の1 しかも斬られた方の多くはグループ企業の正社員や派遣社員で、JAL本体の正社員にまで厳しいメスが入ったわけでもなければ、そもそも会社更生法を申請する時点でこの程度のリストラ規模は別に珍しくも何ともないでしょう。
しかも早期に再上場する必要性はあったとはいえ、会社更生法を申請したのが2010年1月で、翌年の2011年03月には会社更生を終了して2012年9月には早くも再上場と、わずか2年半あまりで株式市場に復帰してきた一件についても、株券と優待券が同時に紙くずになった個人株主には心情的には到底納得しがたい(個人株主の中には株上昇益狙いの方だけでなく、親の介護等の理由で自宅と故郷を往復するために、株主優待=割引券 を手に入れる目的でJAL株を保有し続けていた方もいました)でしょうし、自民党だの民主党だの親しい政党の違いとか、そういった次元を超えて、市場の公平性という観点からこの獲得枠については議論すべきではないかと個人的には思いますね。
「財務体質でかなり差が出ている。今後、競争環境にひずみが出る恐れがあり、日航の新規路線開設は抑制的に見る必要がある」。国土交通省航空局の平岡成哲航空事業課長は、ANAへの傾斜配分の理由を淡々とこう語った。
日航にとって羽田から新路線となる国の路線はすべてANAが取得。しかし、国交省に葛藤がなかったわけではない。伝統的に国交省は、日航とANAを競わせ利用者にとってサービス・価格面での価値を最大化するとの考えを持つ。
「こんなことは終わりだ」。昨年11月30日、羽田国内線の発着枠配分で全日空8便に対して日航を3便の配分を決めた直後、ある国交省幹部は傾斜配分の再度実施に否定的な認識を示していた。
しかし、今年7月の参議院選挙で自民が圧勝。さらに主要官庁の幹部級人事が、民主党色を払拭するため官邸主導で一新されたのを目の当たりにした。もはや巨大与党の意向を無視できる状況ではなくなった。
自民党議員らが主張したのは、昨年、8月10日に国交省が発表した「日本航空の企業再生への対応について」に基づく発着枠の判断。求めたのは突き詰めると、ANAへの配慮だったといえる。
2日、発着枠配分を受けANAは「当社グループの経営努力について認めていただいたことに感謝申し上げたい」との伊東信一郎社長のコメントを発表。今回、ANAが手にした果実は大きい。
日航に比べ手薄だったベトナムへの就航も羽田から可能になる。成長市場の東南アジア中心に日航にはない便を合計6便得たことで、年間売上高で約600億円、営業利益で約60億円のアドバンテージを半恒久的に確保できる。
それだけに、日航も今回の枠獲得に向け精力的に動いた。
「闘わなあかんな」。稲盛和夫名誉会長は前回の国内線とは異なり、日航として主張すべきことをしなければならないと思いを定めていた。
自民党やANAが過剰支援と主張する税制面での優遇や公的資金投入と更生法適用の同時適用などは、すべて合法的に実施されたもの。しかも、1万6000人もの人員削減などのリストラで自らの「血」も流し、業績回復は意識改革やコスト削減活動で成し遂げてきた側面も大きい。
ただ、稲盛氏自身が民主党に近かっただけに自民党から標的にされやすい素地はあった。そこで、稲盛氏は動く。今年5月、安倍晋三首相との会談を申し入れ、事態打開を試みた。しかし、調整は不調に終わり、会談はいまだ実現していない。
そんな日航の事情をよそに、9月14日、安倍首相はANAのロビー活動の実行隊長を務める石坂直人調査部長と富士山麓のゴルフ場でプレー。今夏、自民有力議員の外遊は多くが全日空機を利用するなど、再生過程で日航と民主党が接近したのに対しANAは自民と親密度を増していた。日航ロビー部隊も自民議員に対して猛烈なアプローチを繰り返したが効果は限定的だった。操縦士出身の植木義晴社長もなす術もなかった。
ライバル会社との競争環境を顧みない過剰な支援による再生が行われ、「到底自力では追いつけない再生がなされた」(伊東社長)とのANAの主張は説得力を持つ。しかし、今回の配分結果はそうした「理」の力だけでなく、自社の主張を議員に理解させ、実益に結びつける「ロビー力」の差でもあった。
当面の羽田発着枠配分はこれで打ち止め。しかし、2020年の東京五輪に向け東京上空の飛行が可能になれば新たな枠が生まれることになる。
役所の裁量による枠配分は政治の影響を受けやすい。だがオークション方式なども採用が難しい。財務力のある日航が有利になりANAとの格差が広がりかねないからだ。枠配分に政治が介入する国もあるが主な自国航空会社は1社でもめ事は起こりにくい。人口が特定地域に集中する狭い国土に大手2社がある日本では妙案がない。
2日、枠配分の政治介入を嫌気して日航株は1.6%安の5880円となった。ただ、一方のANAも枠配分は好材料のはずだが1円安の216円に下落。「枠をもらったのはいいが、政治は後々高くつくぞ」。そんな警告を市場は発しているのかもしれない。
羽田枠獲得合戦について、日経でも特集記事を組んでいたので、こちらの記事も載せたいと思います。
ん…。1万6000人もの人員削減と聞くと一見厳しく聞こえますが、JALグループ全体の約48000人のうち約3分の1 しかも斬られた方の多くはグループ企業の正社員や派遣社員で、JAL本体の正社員にまで厳しいメスが入ったわけでもなければ、そもそも会社更生法を申請する時点でこの程度のリストラ規模は別に珍しくも何ともないでしょう。
しかも早期に再上場する必要性はあったとはいえ、会社更生法を申請したのが2010年1月で、翌年の2011年03月には会社更生を終了して2012年9月には早くも再上場と、わずか2年半あまりで株式市場に復帰してきた一件についても、株券と優待券が同時に紙くずになった個人株主には心情的には到底納得しがたい(個人株主の中には株上昇益狙いの方だけでなく、親の介護等の理由で自宅と故郷を往復するために、株主優待=割引券 を手に入れる目的でJAL株を保有し続けていた方もいました)でしょうし、自民党だの民主党だの親しい政党の違いとか、そういった次元を超えて、市場の公平性という観点からこの獲得枠については議論すべきではないかと個人的には思いますね。