石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

シンガポールICT事情視察から無事、帰国しました!

2013-09-13 23:27:28 | 活動レポート

9月8日(日)から三日間、シンガポールに情報通信(ICT)事情視察に行ってきました!

今回、同行してくれたのは、同期の難波奨二参議院議員と斉藤嘉隆参議院議員の2人。現地での活動は正味2日半という強行日程ではありましたが、盛りだくさんの内容で、充実した視察となりました。以下、写真を使いながら主な視察内容を報告します。


①シンガポール建築建設局(BCA)「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」
 


まずは、エネルギー分野でのICT利活用視察ということで、シンガポール建築建設局(BCA)が実証実験を行っている「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」を訪れました。
 


このZEBは、既存の古いビルを全面改装して、エネルギーを自給自足する新しい「グリーンビル」へと転換することを実証実験しているテストベッド用ビルです。土台とか躯体はそのままに、内外装をグリーンビル仕様に転換することで、シンガポールのグリーン基準に適合させるわけです。太陽光エネルギー発電、太陽光の照明への有効活用、植物外壁や屋上菜園、各種センサーやモニター、そしてエネルギー・マネージメント・システムなどの最新技術をフルに活用して、全体として効果的・効率的な省エネ・創エネを実現しています。

シンガポールでは、2030年までに全ての建物の80%をグリーン環境基準に適合させることを国家目標に掲げているそうです。このZEMで得られた成果を、今後、シンガポール全体に普及させていく計画ですね。


このテストベッド用ビルには、最新のBEMS(ビルディング・エネルギー・マネージメント・システム)が導入されていて、あらゆる箇所に設置されたセンサーからの情報をモニターしながら、ビルのあらゆる部分のエネルギー需給状況が完全に見える化されています。また、建物内の各所で、異なる省エネ部材やモデルが実験されていて、それぞれの省エネ効果が長期的なデータ解析によって分析され、その結果が蓄積されているのです。最適なものを明らかにして、今後、導入を進めていこうということですね。

 


とりわけ、建物のあらゆる所に太陽光発電パネルやフィルムが設置されていて、その発電効果(フィルムの場合は遮光・断熱効果も)が検証されていました。私も、太陽光発電パネルはあちこちで見ていますが、窓にビッシリと発電・遮光フィルムが貼られているのを実際に見るのは初めて。大変興味深いテストベッドでした。

先ほど説明した通り、シンガポールでは2030年までに、建物全体の80%を国のグリーン環境基準に適合した建物とすることを国家目標としているわけですが、課題は、既存の建物をどう改築していくかです。新規で建設するビルは最初からこの基準に合致したものになるわけですが、古いビルの改修には多額のコストもかかるため、よりハードルが高いわけですね。そのため、より効果的・効率的なシステムを創り出していくことが必要で、この実証施設が大変重要な役割を果たすことが期待されています。

現在、さらなる最新技術をテストするための新しい実験棟も建設されていて、説明していただいた所長さんからは「ぜひまた2年後に訪問して欲しい」との自身に溢れた言葉もいただきました。確かに、今後の展開が楽しみですね。まだ、日本との連携・協力はスタートしていないようですが、ぜひ今後、検討していければと思います。

 

②日立アジア社

 

 
続いてお邪魔したのは、日立アジア社。日立グループのASEAN地区統括本部です。こちらでは、ASEAN地域における日立グループの展開、とりわけ、ICT分野での取り組みについてお伺いするとともに、現在、シンガポールで政府との協力・連携によって取り組んでいるいくつかのプロジェクトについて、その概要を説明していただきました。 

 


日立アジア社は、シンガポールで経済開発庁(EDB)をはじめとする政府諸機関との協業を推進していて、特にEDBとはMOU(覚書)を締結し、社会インフラとICTとを融合させた新しい事業の拡大を推進しているそうです。シンガポールは、国自体が小さいために、国内企業を保護・育成するよりも、世界のあらゆる企業と協業しながら最適なソリューションを自国に導入していくという戦略をとっているわけですね。

今回のヒアリングでは、特に、交通分野でのICT化の取り組みについて、大変興味深いお話しを聞くことが出来ました。これについては、今、シンガポール国内での新しいプロジェクトに応札しているところだそうなので、中身をあまり詳細に説明しませんが、コミュニティーにおいて電車やバス、そしてプライベート移動システムの運行情報をICTで結んでより効果的・効率的な運用を実現し、まちの中での人の移動(特に高齢者や障がい者など)を支援し、最適化していくというもの。う~ん、面白い。今後の日本での取り組みにも参考になると思われるので、ぜひ頑張っていただきたいですね。

この他、日立アジアさんでは規制改革の話や、ビッグデータの利活用の話など、私たちの今後の取り組みも大変参考になる意見交換をさせていただくことが出来ました。

 

③NTTシンガポール社
 

 
続いて、NTTシンガポール社にお邪魔して、風見社長からシンガポールのICT事情や、社会インフラ開発の状況、さらにはNTTグループの取り組みなどについてお話しを伺いました。
 

 
シンガポールは、電気通信市場の自由化という点では日本よりずっと遅れて、2000年にようやく自由化が始まっています。その後、政府の主導によって積極的な情報通信政策が進められて、特に電子政府やICT教育など、利活用面で大きな進展を見せています。風見社長のお話によれば、特に「国民ID制」の導入が、国内におけるICT利活用の促進に大きく貢献したとのこと。この点は、日本でもようやくマイナンバーの導入が決定して、2016年以降、電子政府をはじめとする将来的な利活用促進につながることが期待されているわけですが、そのことを実証的に裏付けるお話ですね。

また、通信事業者の競争環境や、インフラ事業の収益性の問題などについても意見交換をさせていただいたのですが、日本の状況と似通っている部分も多く、共通の課題に直面しているという印象を受けました。やはりシンガポールでも、インフラを持つ通信事業者がいかに土管化を防ぎ、OTT(上位レイヤーのサービス提供会社)と競い合いながら収益モデルを維持・確立していくかが大きな課題になっています。先頃、シンガポール政府が、今後新築する全ての住戸に1GbpsのFTTH設置を義務づける方向を打ち出したのですが、ではその上で、どのようなICTサービスを提供するのかはまだ不透明とのこと。この辺は、これからの取り組みにとっても大きな課題になるのではないでしょうか。

 

④ シンガポール国立教育研究所(NIE)

 


今回の視察の目玉は、私がこの間、政策的な取り組みを進めてきた「教育現場におけるICTの利活用」に関する視察でした。大変残念ながら、この時期、小中学校が休みに入っていたために、実際の授業風景は見ることが出来なかったのですが、訪問した国立教育研究所(NIE)と教育省からのヒアリングで、シンガポール政府の基本的な考え方や具体的施策について、大変示唆に富んだ話を聞かせていただくことが出来ました。
 

 

最初に訪問した国立教育研究所(NIE)では、ICT教育コンテンツの利用や開発のための訓練に関するプレゼンテーションを受けたのち、ICTを活用した教育政策に関するプレゼンテーションを受け、その後、「Classroom of the Future(未来の教室)」というショウルームを見学しました。

二つのプレゼンテーションの後では、質疑応答の時間があったのですが、いずれも時間をオーバーしながら活発なやり取りをさせていただきました。先方も、まさかこれだけ具体的かつ専門的な質問が飛んでくるとは予期していなかった(笑)ようで、質疑終了後には「私たちにとっても、大変、参考になる意見交換だった」と喜んでくれました。

実際、日本のアプローチとの最も大きな違いは何かというと、ソフト面が圧倒的に重視されている、ということに尽きるのではないでしょうか。ここでソフト面というのは、ICT機器などのハード面以外の部分を全て包含していると考えていただいていいのですが、とりわけ、「教授法(=ICTを利活用して何をどのように教えるのか)」と、それを基にした「教員養成・育成」に力を注いでいるということです。NIEは教員養成学校なのですが、シンガポールで教員になるほぼ全ての学生がNIEを卒業するということで、その中で必ずICT教育法についてのカリキュラムを修了しなければなりません。つまり、全ての生徒が共通のICTスキルをもって実際に教師になるわけで、全ての学校でICTを使った授業が展開できるわけです。

また、ICT教育を授業で実践する上で「学習者(学生)本位の授業」を行うことは日本でも共通なのですが、その際に使うICTツールとして、インターネット上のWeb2.0アプリケーションを最大限に活用しているという点が大変新鮮でした。つまり、プログラミングしたりパワーポイントを作ったりするのではなく、SNSなどのソーシャルメディアを使いながら工夫を凝らした授業を行うというのです。先生の作業労力を極力減らしていこう、かついつでもどこでもアクセス可能なものを教材にしてしまおうという考え方で、大変共感を持ちました。

今後の私たちの議論でも、この辺の考え方をぜひ取り入れていきたいと思います。

 

⑤ シンガポール教育省(MOE)ヘリテージ・センター

 

 

そして最後にお邪魔したのが、シンガポール教育省(MOE)のヘリテージ・センター。こちらは、シンガポール教育政策全般に関するギャラリー(展示館)で、英国統治時代から1965年の建国を経て現在に至るまでの教育の歴史を時系列を追って紹介しています。

 

 

シンガポールも日本と同じで、まだまだ貧しい国だった時期から教育に力を入れてきていたことが良く分かります。さらに、シンガポールには中華系、マレー系、インド系など、異なる人種や宗教が混在をしているわけですが、教育政策やその実践の中で、いかにその民族的・宗教的違いを克服し、統合して一つの国づくりを進めてきたのか、その中でいかにお互いの文化を尊重しあい、保存して継承すべきものは代々引き継いできたかという点も大変興味深く学ばせていただきました。

 


ちなみに、展示物の中には、30年ぐらい前のテレビやラジオ、そして学校の学習机などが展示されていました。しばし、とっても懐かしい雰囲気に浸りながら説明を聞いてました(笑) そうそう、ちゃんとICT教育の歴史を紹介した部分もありましたよ。すでに1990年代からICT教育に取り組んできたという歴史を見ると、いかに日本が遅れているかがよく分かります・・・。

 

⑥その他

実は、シンガポール滞在中、他にもいろいろとプログラムがありました。シンガポールの労働組合連合組織(日本の連合と同じ位置づけ)であるSNTUCへの訪問、SNTUC出身の国会議員との意見交換、連合が加盟する国際労働組合連合組織であるITUCのアジア太平洋組織事務所への訪問と鈴木則之書記長との懇談などなど。いずれも、今後の我々の活動に参考になる意見交換をすることが出来ました。

 

今回のシンガポールICT視察、学校の授業風景を見ることが出来なかったことなど、正直言って100%満足のいくものではありませんでした。しかしそれでも、シンガポールにおけるICT教育政策の現状や今後の取り組みなどをはじめ、私たちの今後の取り組みにとって大きな収穫を得る事ができました。今回得られた知見については、何としても、今後の活動に活かして行きます!

以上、シンガポールICT事情視察の報告でした。今回の視察を支援していただいた皆さん、ありがとうございました!