石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

福島原発作業員の安全・健康確保について(続報)

2011-04-29 23:27:25 | 活動レポート
この間、福島原発で作業にあたっておられる作業員の皆さんの安全・健康問題についてブログ記事を書いてきました。その中で、先日の「衆議院厚生労働委員会での大変残念な政府答弁」に対して何人かの皆さんからフィードバックをいただいたのですが、西野さんから大変参考になるコメントをいただきました。

実は木曜日に、民主党政策調査会の「雇用対策ワーキングチーム」で緊急に福島原発作業員の安全・健康管理問題に関する会合を開催して、厚生労働省の労働基準局やその中の安全衛生部の幹部の皆さんとディスカッションしてきました。その中で、西野さんからいただいた質問もぶつけながら議論してきましたので、今日はその模様について報告したいと思います。

以下、西野さんのコメントを基に、私のコメントや厚生労働省からの回答なり、現状の説明なりを交えながら、対話形式で今の状況について皆さんと一緒に理解を深めていきたいと思います:

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(西野)
 250mSvに被ばく限度を上げるなら、(作業員の安全・健康確保の取り組みは)2乗3乗に引き上げるべきというのは、同意します。
 この国会での質疑を読んで、驚いています。
 原発の被ばく問題に関わった経験から思うのですが、厚生労働省等の幹部の方は、既存の法令や制度の知識がないまま答弁されているということなのでしょうか。

(石橋)
 答弁に立っている人は、残念ながら、官僚の答弁をそのまま読み上げているのだと思います。で、答弁書を書いている官僚の皆さんは、被曝線量管理の制度や、労働安全衛生法および電離則をよくご存じだと思うのですが、突き詰めて検討していくと、よく理解せずに書いているのではないか、または理解しながらもあまり注意を払わずに書いているのではないかと疑わざるを得ないような内容もありますね。

(西野)
 作業者の被ばく線量管理について、他の質疑で答弁があるのかも知れませんが、この質疑ではどのように扱われているのかさっぱりわかりません。次のようなことです。
 まず、作業者の被ばくの扱いがわかりません。
 線量計を装着せずに作業した作業者について、仮に「放射線測定器を用いてこれを測定することが著しく困難な場合」とみたとしても(そんなことないですが)、「放射線測定器によつて測定した線量当量率を用いて算出し、これが著しく困難な場合には、計算によつてその値を求める」(電離則第8条第3項)とし、それを確認し、記録し、業務従事者に遅滞なく知らせなければならない(同第9条)となっています。また、それは作業者個々の放射線管理手帳に記載されることになっています。これらのことが、法令どおりに行われているのかどうか?

(石橋)
 これも残念ながら、厚生労働省は作業者の被ばく線量管理について、現時点ではまだ把握出来ていないようです。基本的には、それは事業者(東電および協力会社)がやるべきことで、やっているはずだと、そういう立場です。
 私は、事故発生後のすぐ次の週に、医療グループの皆さんから提案いただいた造血幹細胞の事前採取について災害対策本部に提案していますし、同様の提案を党の厚生労働部門会議にも行っています。その際に、すべての作業員の事前健康診断、被曝線量管理、定期的健康診断、そして終了時の健康診断の必要性について訴えています。また、この数週間、何度となく厚生労働省の担当にこれらの問題について問い合わせし、要望を出しています。
 にもかかわらず、4月28日(木)の厚生労働省との懇談でも、厚生労働省ではまだ、ちゃんとした取り組みが出来ていないことが分かりました。非常に残念かつ申し訳ない気持ちです。
 私たちの「全員が被曝線量管理手帳を持っているのか?」「持っていないとしたら何人が持っていないのか?」「持っていない人たちの線量管理はどのようにやっているのか?」「3月11日から3月31日の間、線量計を持たずに作業に当たっていた作業員の線量管理はどうしたのか?」「線量計を持たずに作業した労働者全員について、内部被曝チェックを行ったのか?」などの質問に対して、厚生労働省は「調査中」または「調査します」としか答えてくれませんでした。
 これらの点を含めた健康・安全・衛生管理の状況について、全て持ち帰りの宿題として、早急に確認するように再度、要請をかけています。

(西野)
 構築するという「データベース」は、現在すでにある中央登録センターのデータベースとどう違うものを考えて言っているのかわかりません。
 現在、原発等の放射線管理区域で作業に従事する人の被ばく記録は(財)放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターで、従事者個々の線量データを集中管理しています。法的には原子炉等規正法、放射線障害防止法、電離放射線障害防止規則で、放射線管理記録の引渡し機関として指定され、ここにすべてのデータが渡ることになっています。
 被ばく記録が記載された放射線管理手帳は、従事者個々のものであっても在職中は会社が所持しますが、退職時には従事者に渡され、もし新たに放射線作業に従事するときには累積の線量として記録されます。もし、退職後紛失しても、個人情報開示手続さえすれば、中央登録センターの記録は開示されます。
これまで、原発作業者が退職後に白血病等を発症し、労災保険の請求をしたとき、この記録は業務上外判断の根拠とされてきました。
 これ以上のデータベースというのは、考え付きませんし、もし考えられるのなら、現行の制度を改善すべきでしょう。たとえば、このデータベースはあくまでも産業側からの要請により作られてきたもの(財政的にも)です。したがって、在職時は個人記録は会社を通じてしか請求できず、退職後も開示請求の手続によるしか知る方法はありません。

(石橋)
 厚生労働省は、中央登録センターのデータベースがどういうものか、まだ把握していないようです。中央登録センターのデータベースは、文部科学省の所管なんですね。しかも、制度自体は、事業者や関連組織の自主的な枠組みなのです。だから、厚生労働省としてはあまり細かいことが分からないのでしょう。
 「厚生労働省の計画では、新しいデータベースを作るのか?」「すでに中央登録センターのデータベースがあるのに、なぜ新しいものを作るのか?中身が違うのか?違うとすればどう違うのか?」という質問に対して、現時点では「検討します」という回答です。
 小見山・厚生労働副大臣がデータベースの構築について委員会で答弁したのは2週間前のことですが。まだ何も決まっていないのです。
 私は、二つのことをしっかり分けて考えて下さいとお願いしました。一つは、中長期的に作業員の安全・健康管理をしながら、何かあった時のためにしっかりと保障できる制度をつくること。もう一つは、今、即刻、全ての作業員のトータル被曝線量管理(外部+内部)を確実に実行すること。この二つを、全ての作業員について必ずやらなければならない、と。
 特に、労災を含め、将来何かあったときに対応できるよう、個々の労働者がきちんと自分の作業時間と被曝線量の記録を管理できるよう、全ての作業員が管理手帳を保持するか、でなければ効力のある証明書を発行するように求めておきました。
 これらの点については、今後必ず、厚生労働省が実行したか否かをフォローしていきます。

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 以上、現状についておわかりいただけたかと思います。作業員の命と健康を守るという大切なことなのに、ここでも縦割り行政の弊害と、間違った政治主導の弊害が出ているように思えてなりません。
 私たちは、福島原発作業員の安全・健康管理について、厚生労働省内に特別チームを作ってくれるように要請しました。経産省(保安院)任せ、安全委員会任せにするのではなく、労働者の命を守るのは厚生労働省で責任もってやるんだと、その気概を何としても見せて欲しいと思っていますし、我々も協力していきます。
 
 明日は、この問題について、原子力安全・保安院との会合を開く予定です。その結果は、またこのブログで報告します。